大腸がんの肝転移「予防を目的とした抗癌剤と肝炎治療について」

公開日:2011年10月24日
プロフィール
日本人男性71歳 大腸がん(直腸がん、結腸がん含む) 肝臓への転移
相談内容
主治医から予防治療を目的とした抗癌剤と肝炎治療を提案されているが、予防的治療で肝機能が低下し、次回再発した際の治療に耐え得ることができないのではないか

医師からの回答

放射線治療医
放射線腫瘍医の意見を述べさせていただきます。まずは患者さんの希望が第一ですので医師に遠慮することなく体力に自信が無いからこのまま抗がん剤治療をせずに経過を見させてほしいということはおっしゃられてもよいと思います。ただ病状として、肝転移が手術で摘出した以外にラジオ波で焼灼したということは3個以上存在したということではないでしょうか。その場合やはり肝内再発の可能性は高いと思われます。そのためにあなたの全身状態を考えて主治医は抗がん剤治療を勧めたものと考えます。不安を抱えて治療を受けることは決して良くありませんので主治医とよく話し合ってください。(柏原先生)
外科医
関先生のご意見の通りで、特に外科医として付け加える点はありません。
通常であれば化学療法の適応と考えますが、B型肝炎の方の場合、化学療法中(特にステロイド剤を使用した場合)にウイルス再活性化による重症化のリスクがあり得るため、厚生労働省からガイドラインが示されています。
主治医もご承知のことと思いますので、よくご相談いただくようお勧めします。(山本先生)
腫瘍内科医
腫瘍内科医として意見をのべさせていただきます。
今回の手術やラジオ波で真に腫瘍が取りきれていれば術後の化学療法は不要と考えられます。しかし、実際はそのような方でさえ目に見えずに転移していた部位からの再発がありうるので、現時点での標準治療は完全切除後の補助的化学療法が必要と位置付けられています。私も柏原先生のおっしゃるように肝臓には目に見えない癌細胞が残存している可能性が極めて高いのではないかと危惧いたします。一方、B型肝炎ウイルス陽性の方の抗がん剤治療には慎重性が要求されるのも事実です。毎月ウイルス量を測定し、増加が確認されれば抗がん剤を休止し、ウイルス治療を開始することもよくされています。したがって肝炎や肝障害のリスクを負いながら抗がん剤を受けなければならないのも事実です。従いまして、結局は抗がん剤をしない経過観察のリスクと抗がん剤による肝障害のリスクを天秤にかけて選択をすることになります。そのためには、より詳細な情報が必要で、1、主治医が残存腫瘍細胞がいると考えているかどうか、2、もともとの肝機能や肝予備能はどうか、3、B型肝炎の活動性やウイルス量はどうか、4、抗がん剤をするならばどの程度の強い副作用が予想される薬剤を使用するのか、などから総合的にリスクを判断することになります。主治医の先生はそこまで考えて現在の治療を提案されていると思いますので、やはり具体的に、そしてより詳細にリスクについて話し合いをもつようになさってください。絶対的な正解がないからこそ、どちらを選択しても後悔しないと思えるまで相談が必要です。(関先生)
代表理事(総合内科専門医)
総合内科専門医としてご返事をまとめさせていただきます。まず、ご本人様およびご家族様の御懸念はもっともと思います。しかしながら先生方のご意見のように、主治医の先生もその点を十分に考慮に入れて、対策も考えて方針を提示されていると思います。
やはりご疑問の点を具体的に伺ってみるのが良いと思います。時間をかけてご相談なさって良い状況であると思います。(田口先生)