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【特集記事】乳がん治療の研究によって、がん治療が進む
がんを病気ではなく、その患者さんの一部と考える
がんの本質というのは患者さんの身体の細胞の変化で、体内のがんの細胞に対して、大変長い時間の対応が必要です。長い時間をいかに諦めないでがんに対応するかということが、治療の本質になります。この「諦めない」ということはがんの治療にとっても最大のテーマと言えます。人間には寿命がありますから、がんをその寿命を決定する要因にしないということががんの治療の目標になると考えられます。したがって、患者さんの生涯に亘って、がんにいかに丁寧に対応していくのかということ、がんを病気と捉えずにその患者さんの人生の一部と考えることが、この病気にとって必要なことだと思います。これが体の外から入ってきた細菌やウイルスなどによる感染症とは決定的に異なるところなのです。
がん治療の最近の新しい考え方は、がんは細胞の遺伝子の変化(遺伝子変異)による悪性化なので、がん化を起こす遺伝子をターゲットにすることです。そのような働きのお薬を分子標的治療薬といいます。これは、ある特定の遺伝子変異をもっているがんには大変有効です。ただし、がんを起こしている遺伝子変異はさまざまなタイプがあって、すべての遺伝子変異を網羅できていないこと、もう一つは、それぞれのお薬が相当高価という欠点もあります。がん治療の方向性は、がん細胞の量を減らして、患者さん自身ががんを治しやすくすることにあります。そのためには、患者さん自身が、傷を治す、化学療法の毒性から回復する、あるいは残ったがん細胞を押さえ込む、といった身体の回復力・免疫力というものを前提にしています。つまり現在の治療は、治療を手伝っているだけで、決して病気そのものをすべて治しているわけではないのです。ですから治療にあたっては常に、その患者さん自身の抵抗力・体力を維持し、増やしていくことを、同時に考えていく必要があります。
取材にご協力いただいたドクター

東京慈恵会医科大学外科学講座教授(呼吸器,乳腺・内分泌外科学担当), 同附属病院呼吸器外科診療部長 森川 利昭 教授
1977年3月 長崎大学医学部卒業
1977年6月 国立長崎中央病院(現国立病院機構長崎医療センター)研修医
1979年6月 国立がんセンター病院(現国立がんセンター中央病院)外科レジデント
1982年6月 榊原記念病院心臓外科
1983年4月 国立療養所松戸病院外科(現国立がんセンター東病院)医員
1985年2月 北里研究所病院外科医長
1989年7月 北海道恵愛会南一条病院呼吸器外科主任医長
1997年4月 北海道大学医学部第二外科講師
2004年5月 北海道大学大学院腫瘍外科助教授
2005年7月 東京慈恵会医科大学教授
学位 :医学博士(北海道大学)
日本外科学会 評議員
日本呼吸器外科学会 評議員
日本胸部外科学会 評議員
日本内視鏡外科学会 評議員
日本内視鏡外科学会 理事
日本肺癌学会 評議員
日本気胸嚢胞性肺疾患学会 評議員
呼吸器胸腔鏡手術研究会 会長
日本肺癌学会関東部会 世話人
肺外科研究会 世話人
慈大呼吸器疾患研究会 世話人