【QOL(生活の質)】増える在宅医療ニーズと訪問看護サービス

公開日:2013年08月30日

入院日数の短縮化が進み、在宅での療養生活者が増える

数年前までは、手術をして抗がん剤の治療をするとなると1ヶ月以上入院をすることもありました。住み慣れた自宅で治療をしたいと願う多くの方にとっては非常にストレスだったと思います。こういった患者さんのニーズはここ数年で満たされる傾向にあります。手術の分野では内視鏡手術が進歩して、がん治療にも多く利用されるようになりました。放射線治療はがん細胞にピンポイントで照射をするように精度が向上され、がん細胞周辺の正常細胞に与えるダメージが少なくなりました。日帰りの放射線治療なども行われています。

抗がん剤は点滴のものもありますが、錠剤で服用できるものが増えています。非常に投与が楽になったといえるでしょう。がん治療に長期の入院は必要なくなってきました。また、医療経済の観点からも入院日数が多いと保険費を圧迫していきますので、短縮化の方向が検討されていて、地域が一体となって包括的に患者さんを見守る体制へと変化が起きています。このような医療環境の変化から、今後も在宅での治療を行う患者さんが増えるでしょう。

訪問看護サービスでは自宅で看護師さんのケアを受けることができる。

訪問看護利用のイメージ02訪問看護(ほうもんかんご)サービスという言葉をお聞きになったことはありますでしょうか。訪問看護サービスとはがん治療などを行いながら自宅療養をしている患者さんに対して、訪問看護師(ほうもんかんごし)と呼ばれる自宅ケア専門の看護師さんが訪問して様々なケアを行います。

▽がん治療終末期のケア(緩和ケア)
▽病状の観察(血圧・体温・脈拍など)
▽療養上のお世話(身体を拭く・入浴介助・食事指導)
▽床ずれ(褥瘡)の予防や処置
▽医師の指示に基づく医療行為の補助

また、家族の方への支援も行い看護方法のアドバイスなども行っています。 訪問看護ステーションは医療法人、地方公共団体、社会福祉法人、株式会社などの設置・運営をしています。一般社団法人全国訪問看護事業協議会の調査によると平成23年の訪問看護ステーションの数は全国で5962件と報告されています。お近くの駅周辺や街角などにも訪問看護ステーションの看板をみることもあると思います。

訪問看護サービスを利用する場合はかかりつけの病院の主治医に相談してみましょう。かかりつけの病院で訪問看護サービスを行っている場合もありますし、主治医がサービス事業者を紹介してくれる場合もあるでしょう。民間企業などが行う訪問看護サービスでは、料金は特別になりますが公的機関が運営する訪問看護サービスとは異なり利用者との独自契約で行われるために、特殊なケアやオリジナルなサービスを盛り込むことが可能となっています。

訪問看護サービスを利用する時のポイント

・自宅から距離が近いこと
ご自宅でケアとなると、まず考えられるのが自宅と訪問看護ステーションの距離です。家族の方だけでは、患者さんのおもいがけない病状の変化に対応できない場合がありますので、距離はできるだけ近い方がよいでしょう。

・曜日や時間帯に柔軟性があること
訪問看護ステーションの空き状況の確認も大切です。患者さんの状況をよく相談して訪問する曜日や時間帯をきめましょう。24時間の連絡体制が取れる事業所もあるので、このようなサービスを利用することは患者さんの病状の変化による急な対応に迫られたときに安心です。

・意思疎通の取りやすい担当者がいること
患者さんとご家族の状況をよく理解する気持ちがあって、意思疎通がとりやすい方に担当してもらえると状況はずっと楽になるでしょう。家族の方は看護・介護などを長くしていると疲れがたまっている場合が多く、家族の身体的な負担の軽減もそうですが、心の支えになってもらえたら助かるものです。親身になってくれる担当者であれば、いままでの看護経験から患者さんに起こりそうな身体の変化を予測して、事前に対処方法などを家族に伝えてもらえたり、訪問日でない日のことも気にして、計画性をもって接してくれるはずです。

・実際に訪れてみて、雰囲気を確認する。
お近くの訪問看護ステーションが複数ある場合などは、相談に訪れてみて、雰囲気を確認することも大事です。

訪問看護を利用する際には、医師やケアマネージャーなどに相談が必要なため、少し敷居が高いと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、利用を開始してみると、思ったよりも精神的・肉体的負担が軽減される場合がありますので、積極的に利用を考えてみることも検討してみましょう。

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