【最新医療】進化した放射線治療

公開日:2012年10月01日

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放射線治療専門医の不足が喫緊の課題

 なお、こうした放射線治療の進化を支えているのが、さまざまな画像診断技術の向上です。高精度放射線治療を受けるには、あらかじめエックス線シミュレーターやCTシミュレーターで病巣と正常組織の位置関係を3次元的に把握し、放射線治療計画装置で体内の線量分布を計算したうえ綿密な治療計画を立てます。放射線の照射位置や照射量の決定は非常に専門的な知識が必要なため、専門医のいる医療機関で治療を受けることが大切です。

 ただ、現状では放射線腫瘍医が不足している問題があります。日本放射線腫瘍学会認定の放射線治療専門医は約920人(放射線治療専門医名簿)ですが、アメリカでは約4000人の放射線腫瘍医がいるといわれています。アメリカの人口が日本の約2.4倍であることを差し引いても、専門医数の差は歴然としています。また、放射線治療の専門家として装置の管理や治療計画の評価を行う「医学物理士」の不足も問題になっています。日本では約640人(医学物理士認定機構名簿)ですが、5000人規模を有すると言われるアメリカと比較すると、やはり大きな差が開いています。

 日本放射線腫瘍学会によると、2005年以降、放射線治療を受けるがん患者は毎年1万~1万2000人ずつ増加し、2015年には36万人(新規がん患者の40%)に達すると推定されています。日本国内でリニアックやIMRTなどの装置を持つ医療機関もどんどん増えていますが、専門医の育成が追いついていない問題は喫緊の課題と言えるでしょう。

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