進行・転移がんによる緩和照射でQOL(生活の質)の向上を

公開日:2011年02月26日

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根治照射と緩和照射

放射線治療はほとんど全てのがんに使用されますが、放射線治療をその目的で分類すると、根治的照射、緩和的照射に分類できます。根治的照射とは根治(完全な治癒)を目的 とした放射線治療です。主に遠隔転移のないがんが対象となります。前立腺がん、頭頸部がん、肺がん、子宮がん、食道がんなど数多くの領域で根治的照射が行なわれます。最近では抗がん剤を併用する根治的照射も増えています。 緩和的照射とは進行したがんや転移がんが対象となります。がんのコントロールが難しいと判断された場合に、がんによって起こる症状を緩和する目的で行われます。骨転移による疼痛を解除させたり、肺がんなどの呼吸困難を改善させたり、脳転移による頭痛・吐き気・麻痺などの症状を緩和するような場合に照射を行います。また、原発巣が正常組織の圧迫などを起こす場合もありますので、その際にも疼痛、血流障害、神経障害などを緩和させる目的で照射を行います。

骨だけの痛みであれば、8割以上の効果が。

骨へ転移したがん細胞は痛み、骨折、脊髄圧迫などの様々な症状を引き起こします。なかでも骨痛の頻度は高く、再発進行期の患者さんの7~8割が強い痛みを経験するといわれています。放射線治療は、骨転移による痛みを効率よく消失させることができます。副作用も少なく、通院による照射も可能なので、その治療はQOL(生活の質)の維持にとても重要です。 日本は諸外国と比較すると、痛みに対するコントロールがあまりされていません。骨転移による痛みを軽減する薬剤はモルヒネなど色々とありますが、放射線治療には薬物療法にはないメリットがあります。痛みの緩和にモルヒネだけを使用している場合は、がんの進行に伴いモルヒネの使用量も増加していきますが、放射線治療を用いれば、モルヒネを減らす、あるいは止めることが可能になります。 8割以上の患者さんに効果があり、痛みが減少したり、あるいは感じなくなります。この治療がききづらい患者さんは神経にがん細胞が浸潤していることが考えられます。

緩和照射は、止血や狭窄の解除に効果があります。

緩和照射の目的の一つに止血があります。がん細胞が壊死し崩壊していて、そこから出血している場合があります。肺がんの場合は血痰が出てきますし、胃大腸がんの場合は下血があったります。そういった症状を止める場合に緩和照射が用いられることもあります。出血が止まるだけでも安心する方は多いです。 狭窄解除としての緩和照射も行います。例えば、食道がんが進行して食道そのものを狭窄する場合があります。がんが食道を狭くしてしまって食事をすることが難しくなります。肺がんなどでは、気道を圧迫して息苦しくなってくる場合もあります。こういった場合にがんそのものを根治するわけではないですが、食事を今まで通りにできるようにしたり、呼吸を楽にできるようにしたりするわけです。

強度変調放射線治療は、昨年から保険対象へ

高精度放射線治療として体幹部定位放射線治療が行われていますが、保険診療が認められているのは、肺、肝臓の病変の一定の条件を満たすものに限られます。強度変調放射線治療は、2010年4月より全固形がんが保険対象となりましたね。これから対応する施設も増えていくと思います。保険外診療にはなってしまいますが、こことここを治療してほしいとQOLを保つために必要な治療であれば、照射は可能です。自由診療というとあまり良いイメージがありませんが、世界的に見るとごく一般的な考え方です。

放射線治療を知り、医師に気軽に相談しましょう。

がん治療では、がんの進行状況に合わせて色々な問題がでてきますが、どういう状態の時でも放射線治療が役に立つ可能性はあります。現状では、本当に放射線治療の内容が知られていないと思います。病気とうまく付き合っていくためにも、緩和照射を含めた放射線治療のことを知ってほしいと思います。気軽に医師に相談をして下さい。お手伝いできることは多いと思います。

取材にご協力いただいたドクター

医療法人社団 勁草会 東京放射線クリニック 院長 柏原 賢一先生

京都府立医科大学卒業 医学博士
徳島大学医学部放射線医学教室講師 Hahnemann大学(Visiting rofessor)、MGH/Washington大学にて研修 愛媛県立中央病院放射線科部長
日本医学放射線学会放射線科専門医 日本放射線腫瘍学会認定医
日本核医学会認定医、PET認定医 日本がん治療認定医機構暫定教育医・認定医

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