放射線療法(IMRT)/強度変調放射線治療

公開日:2011年02月25日

目次

放射線療法とは

X線やγ(ガンマ)線といった放射線をがん細胞に照射し、がん細胞の増殖を抑制する治療法です。放射線の照射により、正常な細胞も損傷を受けるため、がん細胞に集中して正確に照射し、正常な細胞の損傷を最小限に抑える IMRT(強度変調放射線治療)や定位放射線治療(ピンポイント照射)なども普及しています。

『放射線療法』はからだを傷つけず、また治療の際の痛みもありません。『手術療法』や『化学(抗がん剤)療法』を組み合わせることにより、効果を上げることもできます。

『放射線療法』はすべてのがんに有効というわけではありません。悪性リンパ腫、頭頚部腫瘍、肺がん、乳がん、前立腺がんなどで効果が高いといわれています。また、脳腫瘍のように『手術療法』が困難なケースにも用いられています。

一方で大腸がんや胃がんなどでは放射線単独での効果は低く、『放射線療法』は不向きといわれています。

放射線治療を受ける前に

十分に主治医または専門医と相談してから、治療を受けることをお勧めします。
主治医または専門医は患者さまを診察し、これまでの検査内容などをよく検討したうえで、放射線治療を施行する意義について、患者様及びご家族に説明します。これから治療を受ける方は、放射線治療を行う場合の目的、副作用、治療スケジュール、放射線以外の治療法や、放射線治療のメリットとデメリットを十分理解したうえで、治療を開始した方がいいでしょう。

放射線療法における医学の進歩

従来のX線治療では、「対向二門照射」というからだの前と後ろから放射線を挟み打ちする方法などが一般的でした。病巣に照射するには確実ですが同時に正常組織にも多く照射され、放射線の総量を上げることができませんでした。

近年技術が進歩し、病巣を確実に狙って照射し、周りの正常な細胞の損傷を最小限に抑えることができる新しい治療法が登場しています。定位放射線治療(SRT:Stereotactic RadioTherapyの略)と強度変調放射線治療(IMRT:Intensity Modulated Radiation Therapyの略)です。

SRTは小さな病巣を確実に照射するピンポイント照射で、この専用機がガンマナイフやサイバーナイフです。今は広く普及している放射線治療機リニアックの中にもこの治療が可能なものが多くあり、小さな肺がんや肝がんなどに広く用いられています。小さな病巣が対象のため多方向からの放射線を用いることで周りの正常な細胞の損傷を最小限に抑え、病巣により多くの放射線を集中することが可能です。小さな病変では手術と同等の治療効果を得ることができます。

IMRTはSRTが小さな病巣を得意としているのに対し、複雑な形をした病巣を得意としています。コンピュータにより、シミュレーションされ、多方向から照射される放射線の量を出口ごとに調整することができます。多く放射線を当てたい部分、少量でよい部分、照射を避けたい部分を詳細に設定できるようになっています。これにより、変形した病巣に対しても正確に、かつ周りの正常な細胞の損傷を最低限に抑えた治療が可能になりました。2010年4月から固形がんすべてに保険適応となりましたがよく利用されるのは頭頚部がん、前立腺がん、膵がんなどです。

IMRT(強度変調放射線治療)

従来の放射線療法では、病巣へ広く浅く照射していたため、満足な効果が得にくいケースがあり、また正常な細胞を傷つけてしまうことによる副作用の問題もありました。けれども近年の急速な技術の進歩により、照射装置も大きく進歩してきました。

放射線をどのように照射するのがよいか、コンピュータによるシミュレーションで決定されるようになり、病巣に集中して放射線を照射し、正常な細胞の損傷を最小限に抑える「高精度放射線治療」が普及してきています。その1つが強度変調放射線治療(IMRT)です。

IMRT(Intensity Modulated Radiation Therapyの略)は、多方向から強弱をつけた放射線をがん腫瘍部分に集中して照射することにより、理想的な放射線量を得ることができる治療法です。従来の放射線治療と比較して、がん腫瘍部分に多くの放射線を照射することができるようになったため、がんの治癒率が向上し、副作用は軽減されています。

がん腫瘍部分に多くの放射線を照射することが困難であった、前立腺がん、頭頚部がん、脳腫瘍の領域はIMRTの臨床使用が進んでいます。

従来の3D-CATとIMRTによる放射線照射量の比較

3D-CATによる前立腺がんへの放射線照射IMRTによる前立腺がんへの放射線照射

 

従来法(左図:3D-CAT)では直腸の前半分に多くの放射線が照射され、障害の危険性が高く、前立腺内の放射線の量も不均一に見える。IMRT(右図)による計画では直腸を避け、前立腺に照射される放射線の量も均一に見える。

IMRTによるがん治療例

IMRTによるがん治療例

膵体部がんのIMRTによる治療例・・・膵体部がんに対し、IMRTにより通常よりも高線量の照射を行い、腫瘍の消失を認めた。

ケース1.前立腺がん

前立腺がんでは、放射線量を上げれば治癒率が向上することがわかっています。従来の放射線治療では、前立腺周辺の直腸や膀胱といった臓器に放射線が当たってしまい、前立腺に多くの放射線を照射することができませんでした。 IMRTでは前立腺に集中して適切な放射線を照射することができるため、がんの治癒率の向上と直腸障害などの副作用の軽減が見込めます。

ケース2.頭頸部がん

のどや口の形態や機能をそこなわないために、頭頸部がんにおける放射線治療の果たす役割は大きいものがあります。しかしながら、従来の治療法では視力障害、脳神経障害、開口障害、摂食時の鼻逆流、甲状腺機能低下などが生じることがありました。IMRTではこれらの副作用を大幅に軽減することができるため、治療中、治療後の生活の質の向上が見込めます。

ケース3.脳腫瘍

従来の放射線療法では、正常細胞への照射による視覚などの神経障害をおこさないようにするため、腫瘍部分に適切な放射線を照射できないケースがみられました。IMRTでは腫瘍に集中して適切な放射線を照射することができるため、治癒率の向上と神経障害などの副作用の軽減が見込めます。

IMRT装置について

放射線治療装置:Trilogy
放射線治療装置 Trilogy(Varian社製)
定位照射やIMRT、IGRTに対応した最新機種。
精度は同一社製の中で最高。
IGRTのためにOBIを装備し、コンビームCTも撮影可能。

放射線治療計画装置:Eclipse
放射線治療計画装置Eclipse(Varian社製)
MD-CTにて獲得した病巣のデータを基に、効率的に正確
な治療を作成するコンピュータです。

治療の流れ

  1. No.1 固定具の作成
    病巣に正確に放射線を照射するため、患者さん毎に適切な固定具を作成します。固定具とからだの位置関係の再現性を確保するために、からだの表面に特殊なインクでマーキングを行います。
  2. No.2 CT撮影 治療
    計画のためのCTを撮影します。
  3. No.3 治療計画
    「2」で撮影したCT画像を用いて治療計画を作成します。専門医が病巣、臓器などの輪郭をコンピュータ上に書き込んでいきます。 病巣に放射線を集中して照射させるため、適切な変調ビームの組み合わせをコンピュータを使い、繰り返しシミュレーションします。
  4. No.4 治療計画の検証
    測定器を用いて放射線の線量を測定し、計画通りに病巣に集中して放射線が照射できているか検証します。一般的に検証までに 数週間の時間を必要とします。
  5. No.5 治療の開始
    毎回治療を開始する前に、計画通り照射されるか再現性の確認をおこないます。位置がずれている場合は寝台を動かして修正を おこないます。

※治療のながれは医療施設により異なる場合があります。詳細はかかりつけの放射線専門医におたずねください。

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