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女性がん患者さんが抱えるお悩み・問題をトータルにサポート。 国内初となる「レディースセンター」開設
女性が生涯でがんに罹患する確率は47%で、特に乳がんや子宮がんなど女性特有のがんは年々罹患率が上昇傾向にあります。あらゆる年代の女性がん患者様とそのご家族・ご友人の方の“生活”をサポートする「レディースセンター」と、その窓口となる「女性看護外来」が2018年秋、国立がん研究センター東病院に開設されました。
具体的なサポート内容や特徴等について、国立がん研究センター東病院レディースセンター長、秋元哲夫先生にお話を伺いました。
目次
年々増加する女性のがん罹患率。
女性特有の悩みや不安を抱えるケースも
日本人の2人に1人ががんになるといわれる時代、女性ががんに罹患する比率も年々増加傾向にあります。女性では3人に人が生涯でがんになるともいわれ、乳がんや子宮頸がんなどの婦人科系がんも増えてきています。女性のがん罹患率は、30歳代後半から40歳では男性を上回り、子育てや仕事を中心的に行っている時期に高いという特徴があります。
そのため、女性がん患者さんの場合、治療による妊娠・出産への影響や、副作用による見た目の変化(脱毛など)といった女性特有の悩みを抱えられているケースも少なくありません。 日常生活や社会生活を続けながら安心して治療を受けるためには、治療だけではなく治療前後の不安や悩みなど、身体面・精神面からよりきめ細かいサポートを行える環境が望まれます。
これを実現するためには、カウンセリングやアピアランスケア※など、がん治療医だけではなく、幅広い専門家が連携し、総合的にサポートできる体制を整える必要がありますが、これまで一貫したサポートを受けられる場所はありませんでした。
※アピアランス(外見)ケア
外見の変化を補完し、外見の変化によるがん患者さんの苦痛を軽減するためのケア
国立がん研究センター東病院で
国内初となる「レディースセンター」が開設
※女性看護外来 室内の様子
2018年9月、国立がん研究センター東病院に「女性がん患者と寄り添うすべての人々の“ライフ”をサポートする」、「女性がん患者の“その人らしさを支える”最適な医療とサポートを提供する卓越したレディースセンターになる」という二つの目標の下、レディースセンターを設立し、合わせて相談の総合窓口として同院内に「女性看護外来」も開設しました。
レディースセンターでは、幅広い年代・症状の女性がん患者さんに対応するために、関連する診療科等と連携し、お1人おひとりのお悩みに合わせて、相談や支援を行える体制を整えています。
レディースセンターでは、主に下記の支援を行っています。
①妊孕性(にんようせい)相談・対応
妊孕性(妊娠するための機能)温存を希望する女性がん患者さんに対し、がん生殖医療に関する情報提供や、近隣の専門施設と連携してスムーズに専門家に相談できる体制を整えています。
②小児、AYA世代を含む若年女性がん患者さんのサポート
AYA世代※を代表する30代では、婦人科系がんの乳がんと子宮がんが最も多く、小児期と成人期の間で学業、就職、恋愛、結婚、出産など、様々なライフイベントが集中するAYA世代の女性がん患者さんでは、多くの問題や不安を抱えているケースもあります。 さまざまな不安を抱えがちなAYA世代の女性がん患者さんに対し、小児科医や看護師、ソーシャルワーカーなど多職種で連携してサポートしています。
※AYA世代
Adolescent&Young Adult(思春期・若年成人)の略で、15歳から40歳未満の人を指す。
③遺伝カウンセリング
がんの遺伝に関する疑問・不安や、治療法選択のための遺伝子検査について情報を提供するなど、お1人おひとりが最適な選択をするためのサポートをしています。また、遺伝を専門とする医師および遺伝カウンセラーによる遺伝カウンセリングが受けられる「家族性腫瘍外来」も設置し、より専門的なご相談へも対応しています。
④社会的支援ならびにアピアランス相談・支援
薬の副作用による脱毛、肌や爪の変色などのお悩みについて、お1人おひとりの状況に合わせた対処法を紹介するサポートを行っています。例えば、ウィッグの選び方や顔色がよく見えるメイク、周囲とのコミュニケーション方法のポイントなど、状況に合わせたご相談が可能です。
また、仕事や家族、金銭面など、日常生活・社会生活を送る上で悩みがちな問題についても、がん専門相談員や社会保険労務士等がサポートしています。
⑤リンパ浮腫※を含むリハビリテーションの必要性の相談・評価と対応
がん治療による機能障害によって日常生活に影響が出た場合に、リハビリテーションやリンパ浮腫対策などのサポートを受けることが可能です。例えば、乳がん手術後の、運動やリンパ浮腫予防のための指導や、子宮がん手術後のリンパ浮腫予防のための指導、各種治療に伴う体力低下予防や改善のためのリハビリテーションなどのサポートを受けることができます。
※リンパ浮腫
手術によるリンパ節切除や、放射線治療によってリンパの流れが停滞するなどし、生涯にわたり腕や脚がむくむ後遺症
⑥薬物療法などの副作用に関する相談
がんの薬物治療(抗がん剤など)による副作用に関して、症状や程度に合わせて対処法などを薬剤師へ個別に相談できます。
開設から9カ月で数多くの患者さんの心に寄り添いサポート
レディースセンター(女性看護外来)への相談件数は、2018年8月から2019年3月末までで延べ2,623件に上っています。
内訳を見てみると、化学療法(抗がん剤)や手術、放射線治療といった治療内容に関する相談が802件(約31%)、家族への負担や仕事、治療費といった生活面の相談が436件(約17%)、見た目の変化や女性ホルモン、妊娠といった女性特有の相談が422件(約16%)となっています。
その他、子どもにどのように病気を伝えたらよいのか分からない、がん家系なので遺伝子検査をしたいという相談などもありました。
国立がん研究センター東病院では、全診療科の外来看護師が女性がん患者さんに対し、希望や必要に応じて女性看護外来を紹介する体制も取っています。
日本の高齢化、少子化社会を考えると、女性が病気になっても家庭や社会でいきいきと生活し活動することが何より重要と考えています。レディースセンターがその一助となり、また、モデルケースとなって全国に普及していくことを願いながら活動していきたいと考えています。
ポイントまとめ
- 国立がん研究センター東病院の「女性看護外来」「レディースセンター」では、女性がん患者さんのあらゆる悩みに対し、治療前後で一貫してサポートを行っている。
- 対応内容は、妊孕性、若年性がん患者さんのサポート、遺伝カウンセリング、社会的支援・アピアランスケア、リハビリ、薬物療法の副作用と多岐に渡る。
取材にご協力いただいたドクター
秋元 哲夫 (あきもと てつお) 先生
国立がん研究センター東病院 レディースセンター長
コラム:リンパ浮腫予防のため日常生活で気を付けること
リンパ浮腫は、乳がん、子宮がん、卵巣がんなどの治療による後遺症の一つです。一度発症すると治りにくいという特徴があるので、早期発見や予防のために、セルフチェックや自己管理方法をご紹介します。
① むくみの早期発見のためのセルフチェック
一般的にがん治療後の初期段階でむくみが生じやすい場所は、乳がんの治療後では肘の上下、婦人科系がんでは下腹部、陰部、脚の付け根(内もも)の辺りです。腕全体、脚全体を目で見たり手で触ったりして、むくみがないか左右を見比べ、異常があれば専門の医師にすぐに相談しましょう。
② スキンケアを行う
皮膚に炎症が起こると、リンパ浮腫の発症や悪化の原因になることもあるため、スキンケアを行いながら皮膚を守ることが大切です。
- 皮膚を清潔に保つため、肌に合うせっけんやボディソープをよく泡立てて優しく洗う
- 手荒れや肌荒れに注意し、こまめに保湿する
- すり傷や切り傷、家事中の火傷などのケガに注意する
③ 食生活やケガなど、日常生活上の注意点を守る
- バランスのよい食事を心掛け標準体重を維持する
- 長時間の入浴やホットカーペットといった過度な温度の刺激に注意する
- 体に負担をかけすぎないように、なるべく重い荷物などを持たないようにする
- 締め付けがきつい指輪や腕時計などの装飾品、衣類、下着などは避ける
カテゴリーQOLを維持するために, 心のケア
タグ2019年6月
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