- 再発転移がん治療情報
- QOLを維持するために
- 心のケア
- 【医療情勢】がん患者さんらが結集し、声なき声を届けるシンポジウム開催
【医療情勢】がん患者さんらが結集し、声なき声を届けるシンポジウム開催
目次
2015年10月11日(日)に国立がん研究センターにて「第1回わたしのがんnetシンポジウム『声なき声を届ける』」(NPO法人わたしのがんnet主催)が開催されました。このシンポジウムは二部構成になっており、コーディネーターを務める福祉ジャーナリストの町永俊雄氏の司会のもと、第1部では実際にがんに苦しむ、あるいは苦しんだ経験をもつ患者さんが講演しました。
第2部では、「わたしらしく生き抜ける社会の実現に向けて」をテーマに、第1部の患者さんの声を受けて、自分らしく生きるためには社会はどうあるべきかについて活発な討論が行われました。
第1部「がん当事者の思い」
「今どんな思いで壇上にたっていますか」――町永氏のこんな質問を皮切りに、登壇者がそれぞれ思いを語りました。まず、一般社団法人全国がん患者団体連合会理事長の天野慎介氏が「患者さんにしてみれば命を何とか救ってほしいという思いとともに、体・心・社会的な痛みを取り除いてほしいという思いがある。この点においての均てん化はまだまだ不十分」と指摘しました。
続いて、スキルス胃がん患者会NPO法人希望の会理事長の轟哲也氏は自身の経験を振り返り、「がんの告知を受けた時はだれでも素人です。患者さん同士がつながることで情報の蓄積ができるという点は患者会の重要な部分。私と同じように誰もがつながりを求めています。情報がほしいのです。つながることで精神的な安定が得られることも患者会の大切なところです」と発言しました。
また、「がんサロンは受け皿がとても大きく、敷居は低い。同じがん患者というだけで、今まで話せなかったことが話せるようになり、元気になれます」とがんサロンの代表世話人を務める立場から、がんサロンネットワーク熊本副代表の蔵座幸光氏は現場の声を届けました。
町永氏は「なぜ自分の病気に苦しみ、再発や転移の不安を抱えながら、当事者がさまざまな働きかけをしていかなければならないのか。患者がよりよい療養生活を送るためのしくみや情報は本来医療者の側から提供されるべきではないか」と訴えました。
第2部「わたしらしく生き抜ける社会の実現に向けて」
「がん医療が進歩していく中でがん患者さんの生存期間が長くなっており、本来ならばがんとともに自分らしく生きる人生があってもいいはず。しかし現実には、再発の不安や抗がん剤治療のつらさなどによって、なかなか自分らしく生きていくことができない。暮らしを支える形で医療があるのではなく、医療の中に暮らしが閉じ込められてしまっているのではないか」と、町永氏は患者さんが置かれている状況を説明し、第2部ではその打開策を探りました。
さわやか福祉財団会長の堀田力氏は「高齢者の方ががんにかかるのはある意味普通のこと。つらそうな様子を見ると休んでもらうことばかり考えてしまうが、本人のやりがいや生きがいを考えなければいけない」と発展的な視点から発言しました。国立がん研究センターの若尾文彦氏は「本来、医療者から患者のために情報が提供されるべきとはいっても、医療者は日々診療に追われており、なかなか難しい。拠点病院にあるがん相談支援センターの利用などについても検討してほしい」と医療側の立場から提案しました。
町永氏はイギリスのMacmillan Cancer Supportが提唱している、がん治療の9つのアウトカムを紹介しました。これは「私」が主語(主体)となり、自分自身でがんの取り組みを評価するというものです。堀田氏は「『私』を日本で言い換えると『尊厳』です。医療法でも介護保険法でも医療を必要とする人に対して尊厳という言葉が使われています。本人が尊厳をもって、その人らしく生きることが大切です」と言及しました。
NPO法人わたしのがんnet代表の山本氏は「がん対策基本法は制定されてから10年たち、来年6月に改定が予定されています。私はがん対策基本法の基本理念の冒頭にがん患者さんの尊厳についての文言を加えてほしいと思っています。これからもがん患者さんの声を集め、一緒になって社会に発信していきたいと考えています」と締めくくりました。
↓クリックで拡大してご覧いただけます(PDF:852KB)
カテゴリーQOLを維持するために, 心のケア
タグ2015年12月
※掲載している情報は、記事公開時点のものです。