【QOL(生活の質)】加齢に伴う身体の変化と食事のバランスII

公開日:2013年12月02日

目次

加齢に伴う身体機能の変化(臓器・器官)

 前回は、私たちの生活において大いに身近な『食事』をテーマに、【QOL(生活の質)】加齢に伴う身体の変化と食事のバランスⅠをお届けいたしました。今回もメインテーマは『食事』ですが、食物自体ではなく、それを受け容れる側、つまり「私たちの身体の栄養摂取機能は、加齢によってどのような影響を受けるのか?」についてご説明したいと思います。

 また、がんの治療に取り組みながらQOL(生活の質)の向上を目指す方にとっては、がんと戦っていく土台となる心身の不安要素を解消する知識を身に付けることも重要です。

 私たちの身体にある臓器や器官は、いわば機械のパーツのようなものといえます。当然、長年使い続けていればガタも出てきます。そこで自動車の部品であれば新品に交換すれば済む話ですが、人間の場合、そうはいきません。では、飲食物の消化吸収に関わる臓器・器官の加齢による変化と影響についてご紹介していきましょう。

咀嚼と嚥下の重要性

 口から入った食物は『咀嚼』することで細かく砕かれ、さらに唾液と混ぜ合わさって呑み込みやすく消化されややすい塊になります。この咀嚼の能力は、高齢になるとともに低下していきます。

 咀嚼筋や舌の筋肉の衰えなど理由はさまざまありますが、特に大きく関係してくるのが『歯の本数』です。虫歯や歯周病などで歯が抜けてしまうことで咀嚼能力は著しく低下します。平成23年度の厚生労働省歯科疾患実態調査 によれば、80歳以上の残歯の平均本数は調査結果の概算から約14本と、日常的な食事内容をほぼ自由に咀嚼するのに必要とされる20本以上に6本ほど足りない状況となっています。

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 こうなった場合、固い食べ物や、食物繊維を含む肉類や野菜類などが食べづらいため、柔らかい食事をとる機会が増えることで、便秘や肥満などになりやすくなります。抜けた歯の代わりに入れ歯を用いれば、咀嚼機能は補われるものの、食物の微妙な味わいや食感などが失われてしまいます。

 こうなると、食自体への楽しみや興味が大いに減少し、食欲不振、少食傾向が進むなどの問題が生じることも多くなります。加齢とともに唾液腺が萎縮し、唾液の分泌量も減少していくのに加え、食道付近の筋肉の機能低下などもあって、食べたものを胃に送る『嚥下(えんげ)機能』も低下します。

 これに伴って起こりやすくなるのが、食物が気道に流入してしまう、『誤嚥(ごえん)』です。誤嚥から起こる『誤嚥性肺炎』は、特に高齢者で多く見られ、死に至るケースも少なくありません。

 また、脳梗塞、脳出血などの脳血管障害やパーキンソン病などの疾患から、あるいは、抗精神病薬や精神安定剤、抗痙攣剤、抗パーキンソン薬ほか服用中の薬剤が嚥下機能を低下させることによる誤嚥も、高齢者にはよく見られます。こうした状況も食欲不振や少食、さらには味覚障害や口臭などの要因にもなります。

胃腸、腎臓の機能低下によるリスク

 続いては胃腸についてです。胃に関しては、ピロリ菌に長期感染している人の場合、加齢とともに胃粘膜の炎症や、胃腺の萎縮による胃酸の分泌減少が見られやすくなります。これに伴いビタミンやミネラルほか栄養素の消化機能の低下や、消化性潰瘍になるリスクの増大、病原体に対する抵抗力の低下なども起こりやすくなります。

 胃で消化された栄養素が吸収される小腸では、乳糖分解酵素の濃度が低下することから、乳製品を摂ることで腹痛や下痢を起こす人が増えます。ある種の細菌が加齢とともに増えることで、葉酸、鉄、カルシウムなどのミネラルの吸収率が低下する人も見られます。大腸、直腸に関する部分では、内容物の通過遅延や筋肉収縮力の低下などから便秘が起こりやすくなります。

有訴者率(人口千対),年齢(10歳階級)・性・症状(複数回答)別   平成22年
症 状 総 数 9歳
以下
10

19
20

29
30

39
40

49
50

59
60

69
70

79
80歳
以上
65歳
以上
(再掲)
75歳
以上
(再掲)
便 秘 24.7 5.6 4.4 6.5 9.1 10.3 14.0 30.4 81.1 124.8 76.5 111.3
食 欲
不 振
7.7 3.9 3.2 4.7 4.8 5.5 5.2 9.3 16.6 29.2 17.3 24.1
歯ぐき
のはれ
・出血
18.1 1.8 4.8 7.5 11.4 17.1 26.8 30.8 33.7 22.9 31.0 28.2
かみ
にくい
18.2 0.9 1.4 2.9 2.7 7.3 16.3 32.9 57.1 73.3 54.4 70.7

いずれの状態も加齢とともにほぼ増加傾向にあります。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa10/toukei.html

食への興味喪失は命の赤信号

 加齢に伴い、身体機能にはさまざまな変化(低下)が起こりますが、多くに共通しているのが消化吸収機能の低下ならびに食欲不振および食への興味減退です。命をつなぎ、育む大切な営みである『食』。それに対して興味が薄くなってしまうということは、要するに生への興味も薄らいでいるといっても過言ではありません。そんな状態では勝てる病気にも勝てっこありません。

 とはいえ、食欲がない状態で無理に食事をするのは生理機能的にも、また気分的にも逆効果ともいえるでしょう。上手においしく食べる工夫として、五感に刺激を与えるものを選ぶことを意識してはいかがでしょうか。彩のよい食事、豊かな香り、歯触りなどの食感、五感を同時に使えるのは食事のときだけといわれています。食を楽しむと免疫力UPにもつながり、よく噛むことで胃腸の働きも活発になます。

 また上手に活用すると効果的なのが、栄養を補うための食品、いわゆるサプリメントです。最近では加齢と上手に付き合っていくために、シニア世代向けの栄養補助を目的に医師が監修したサプリメントも作られています。ただ、ひとくちにサプリメントといっても、身体の状態や持病、体質が異なるわけですから、必要となるものも当然異なってきます。

 例えば、咀嚼の問題で肉類が食べられない方であれば、たんぱく質を摂るよりも吸収のいいアミノ酸のサプリメント、唾液分泌が低下して味覚障害気味の方であれば亜鉛のサプリメントなど、ニーズに合わせて使用することが大変重要といえます。

食生活や生活全般について、管理栄養士によるカウンセリングが受けられるヘルスケアショップは こちら。

※下線部はリンクになります。
■【QOL(生活の質)】加齢に伴う身体の変化と食事のバランスⅠ

■ 平成23年度の厚生労働省歯科疾患実態調査

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