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【QOL(生活の質)】がんになっても食事を楽しみたい~乳がん編~
シリーズでお伝えしている、がんと食事。今回のテーマは乳がんです。がんの治療中は、身体の状態や、その時々で行なっている治療などに合わせて、上手に食事を選ぶ必要があります。その時の注意点は、がん種別や治療の種類によって少しずつ異なります。
本コーナーでは、乳がんの患者さんに適した食べ物の選び方や、 副作用で食欲がないときなど、乳がん治療中の食事について紹介いたします。
目次
「食」とQOLは密接につながっている
大切な家族と一緒にとる毎日の食事。あるいは、仲の良い仲間と語らいながらおいしいものを食べるひと時。どちらも、人間が生きる上で大きな喜びの1つです。「食べる」という行為は、栄養を補給するだけでなく、コミュニケーションであり、生きていくことを実感させてくれる大切な営みでもあります。私たちのQOLと密接につながっている時間といっていいでしょう。
しかし、がんを患うと、この「食」の楽しみが遠ざかってしまう場合も少なくありません。症状や副作用、後遺症などによって、食べたくても食べられない。これまで通りに食べてもおいしく感じないということがあるのです。あるいは、食べやすいように調理しようにも、どうしたらよいかわからないという方もいらっしゃることでしょう。
がんの治療中は、身体の状態や、その時々で行なっている治療などに合わせて、上手に食事を選ぶ必要があります。その時の注意点は、がん種別によって少しずつ異なります。本コーナーでは、乳がんの患者さんに適した食べ物の選び方や、食べるときの一工夫について紹介していきます。
ホルモン療法中は「イソフラボン」に注意
乳がんの方の食事でまず意識したいのは、豆腐や豆乳など大豆製品の食べ方です。大豆製品に含まれる「イソフラボン」は、エストロゲン(卵胞ホルモン)という女性ホルモンと似た分子構造のため、乳がんの予防に効果的だと言われています。乳がんは、もともと体内にあるエストロゲンに影響されて発症しますが、健康な人がイソフラボンを摂るとエストロゲンとイソフラボンが拮抗して双方の働きが弱まるためです。
しかし、実際に乳がんになってからは、注意が必要です。イソフラボンには、全く相反する作用を併せ持つ二面性があるからです。
前述の通りイソフラボンはエストロゲンの働きを弱める作用(抗エストロゲン作用)がありますが、逆に、体内のエストロゲンと同じ働き(エストロゲン作用)もします。これが、乳がんの治療を阻害してしまう場合があるのです。
乳がんの治療には、薬剤を使ってエストロゲンや、「プロゲステロン」といった女性ホルモンを抑えるホルモン療法があります。ホルモン療法の実施期間中にイソフラボンを多く摂取すると、せっかく減らしたエストロゲンと同じ作用が働く可能性あります。医師によっては意見が異なることがありますが、少なくもホルモン療法期間中や、終わってからすぐは、大豆製品の食べ過ぎとイソフラボンを含むサプリメントの摂取には注意が必要だと言えます。主治医によく相談してみましょう。
抗がん剤や放射線治療はビタミンの過剰摂取を避ける
一方、抗がん剤治療をしている場合は、ビタミンを豊富に含む食べ物に気をつける必要があります。抗がん剤のなかには、がん細胞を酸化障害の状態にすることによって増殖を防ごうとするものがあります。そうした薬剤を投与している間に抗酸化作用のあるビタミンC、ビタミンEなどを大量に摂取すると、治療効果が弱まるとされています。
また、放射線治療についても、基本的には抗がん剤と同様です。がん細胞を酸化障害にして増殖を抑えますから、抗酸化作用のある食品には注意しましょう。
ただ、ビタミンCやEを多く含むのは野菜や果物といった食品です。これらは、がんの発生を予防する働きがありますから、まったく絶った方がいいものではありません。再発防止のために、抗がん剤の投与や放射線治療を行なって1週間ほど時間をおいてからは、通常通りに食べてもよいと考えられています。目安としては、1日350グラム。栄養価の高い緑黄色野菜を積極的に食べるとよいとされています。
また、再発予防のためには魚の食べ方も覚えておきたいところです。なかでもサバやイワシなどの青魚は注目すべき食品です。ある調査報告によると、青魚をたくさん食べる人は、食べない人よりも乳がんのリスクが低いとされており、意識的に食べたい食品と言えるでしょう。
副作用で食欲がないときの食べ方
抗がん剤などの副作用で食欲がないときは、無理をせず、食べやすいものを食べるようにしましょう。魚などのタンパク質を食べたくない時は、もちやおはぎなど、エネルギーになりやすく、比較的消化の良い物を選んでもよいとされています。スープや味噌汁で複数の食材を一度に摂取できるようにするのも一法です。
吐き気がある場合は、食べ方に一工夫することでラクになる場合があります。食事の前にレモン水でうがいをしたり、料理を少し冷ましてから食べることでにおいを感じにくくなり、嘔吐の防止につながります。食物繊維の多いものやにおいの強いもの、消化のよくないものは無理に食べないようにしましょう。
このように、乳がんの患者さんの食事には、いくつかの注意点があります。しかし、食品選びや食べ方に気をつけることで、家族や仲間と一緒に安心して楽しむことができます。食べることをあきらめずに済むのです。
なお、ここで紹介した食事方法は、すべての方にあてはまるわけではありません。食生活を大きく変える場合や、食実について疑問がある場合は、必ず主治医とよく相談して決めるようにしましょう。
ポイントまとめ
- 大豆製品に含まれる「イソフラボン」は、乳がんの予防に効果的だと言われているが、乳がんを発症してからは、乳がんのホルモン治療の作用を阻害してしまう場合があるため、注意が必要。
- がん細胞の増殖を防ごうとする抗がん剤を投与している場合、抗酸化作用のあるビタミンC、ビタミンEなどを大量に摂取すると、治療効果が弱まると言われている。ただ、再発防止のために、治療から1週間ほどたった後は、目安として緑黄色野菜を1日350グラム摂取するとよいとされている。
- 副作用で食欲がないときは、食べやすいものを選ぶと良い。エネルギー源になり、比較的消化の良い物としてスープや味噌汁で複数の食材を一度に摂取するのもおすすめ。食事について疑問がある場合は、必ず主治医とよく相談して決めるのが大切。
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