【QOL(生活の質)】がん治療中のインフルエンザ予防と肺炎予防

公開日:2016年12月30日

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 冬になると猛威を振るうインフルエンザ。また、風邪だと思い込んでいたら実は肺炎だったということもあります。治療によって免疫力が低下しているがん患者さんは感染予防が必須です。インフルエンザと肺炎の予防についての情報を紹介します。

気をつけよう! 風邪とインフルエンザと肺炎

 がんの治療中はその副作用として免疫機能が低下する傾向があり、そうした状態で感染症にかかると、通常より重症化する危険性があります。 さまざまな感染症がありますが、寒い冬に特に注意しなければならないのが、インフルエンザです。

インフルエンザは、インフルエンザウイルスに感染して起こる病気です。普通の風邪との違いは、のどの痛み、鼻汁、咳などの症状だけでなく、38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、全身倦怠感等の症状が比較的急速に現れることです。このように風邪よりも重い症状となりやすいので、感染しないように注意しなければなりません。

肺炎とは、細菌やウイルスなど、病原微生物によって起こる肺の炎症です。肺炎は季節に関係なく起こる病気で、原因として多いのは肺炎球菌です。しかし、なぜ特に冬に注意が必要かというと、インフルエンザの後に肺炎になる可能性があるからです。

なぜ、インフルエンザの後に肺炎になりやすいのでしょうか。気道の上皮細胞には異物を排除する働きがあります。しかし、インフルエンザに感染すると気道の上皮細胞が剥離してしまい、異物を排除できなくなるため、肺胞内で肺炎を起こす菌が増殖しやすくなるのです。

感染症予防でうつさない! うつらない!

 インフルエンザの感染経路は、飛沫感染と接触感染です。飛沫感染は、感染している人が咳やくしゃみをしてウイルスが飛び散ると、それを別の人が鼻や口から吸い込んで感染します。接触感染は、例えば感染している人が咳やくしゃみをするとき、口元を手で押さえる際にウイルスが手につきます。

その手でドアノブやつり革などを触ると、それらにウイルスが付着。それを別の人が触って、ウイルスが手に付着して、その手で口や鼻を触ると感染するという具合です。

インフルエンザの予防には、いずれの場合も感染経路を絶つことが重要です。家族がインフルエンザにかかったら、がん患者さんにうつさないように、マスクで飛沫感染を防ぎましょう。咳やくしゃみの飛沫は1〜2メートルも飛ぶと言われています。せっかくマスクを着用しても、隙間があると予防効果がありません。鼻と口をしっかり覆い、隙間が生じないように鼻から顎までカバーするようにしましょう。

うつさない、そしてうつらないためには、手洗いの徹底が基本です。患者さん本人はもちろん、家族も帰宅時には必ず手を洗いましょう。入院中の場合には見舞い客も、必ず手を洗うようにしてください。

手を洗うときは、石けんをつけて手首までしっかり洗います。両手で泡だて、手の平、手の甲、指、指の間、手首までこするように洗い、流水で綺麗に洗い流します。そして清潔なタオルまたはペーパータオルで拭きましょう。

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■厚生労働省「正しい手の洗い方」より(PDF:360KB)

ちなみに冬は意外に食中毒も多く発生しますが、ノロウイルス感染予防にも、この手洗いが役に立ちます。帰宅時はもちろんのこと、調理前や食事前、トレイの後にも必ず手を洗いましょう。  なお、肺炎はうつるタイプとうつりにくいタイプがあります。

うつるタイプの肺炎は、インフルエンザと同じく飛沫感染で、SARS(重症急性呼吸器症候群)や肺炎球菌による肺炎もこれに含まれます。肺炎予防のためには、手洗いを徹底するほかに、人混みや繁華街への外出を控えましょう。

ワクチン接種で感染予防

 感染予防で忘れてはいけないのがワクチン接種です。インフルエンザのワクチンは、免疫機能が低下する治療を行う場合は、治療開始2週間前までに接種しましょう。すでに治療中あるいは治療後の場合は、患者さん一人ひとりの免疫機能の状態に応じて接種のタイミングが異なるので、がん治療の担当医とよく相談してください。

肺炎の場合、肺炎球菌のワクチン接種があります。インフルエンザ予防接種と併用することで、より高い肺炎予防効果が期待できます。ただし、免疫機能が低下している状態では、ワクチンを接種しても効果が出ない場合もあります。がんの症状や全身状態によってワクチン接種の時期などを検討する必要があるので、まずはがん治療の担当医に相談してください。

感染してしまったら

 インフルエンザや肺炎にかかってしまったら、かかりつけの内科など最寄りの医療機関を受診してください。その際にはがん治療中であることも伝えましょう。また、がんの治療を中断したり、薬を変えたりすることもあるので、がん治療の担当医にも連絡しましょう。

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