【QOL(生活の質)】がん治療による外見変化の悩みは化粧でカバー!(前編)

公開日:2016年03月31日

目次

 がん治療に伴って現れやすいのが、肌のくすみや眉やまつ毛の脱毛などの悩み。そんな悩みを軽減する方法の一つが化粧です。女性だけではなく、男性にも役立つ「がん患者のための化粧」を取材しました。前・後篇に分けて報告します。

がん患者さんのための化粧を体験してみた

 取材の目的地は、東京・銀座にある「資生堂ライフクオリティービューティーセンター」。同センターを開設したのはその名の通り資生堂で、CSR(企業の社会的責任)活動の一環として、肌に深い悩みを抱える人々のために「化粧」を通じたアドバイス活動を2006年から無料で行っています。

2013年から、その支援対象にがん患者さんが加わりました。女性だけではなく、男性にも門戸が開かれています。サービス内容は、がん患者さん一人ひとりの肌の状態や悩みに応じて、適切な化粧方法を探し出し、患者さん一人でも実践できるようにアドバイスするというもの。そこで、いったいどんなアドバイスが受けられるのか、実際に訪ねてみました。

このサービスは完全予約制で、所要時間は1回あたり最大90分程度。プライバシーが保たれた個室になっています。また、実際に化粧を行うメイクルームは明るく広く、車椅子のままでも利用できるようになっています。

さらに、闘病中の患者さんには家族の付き添いも多いことから、ゆったり座れるソファや荷物を収納できるクローゼットまで完備されていました。肌の悩みやどのようにカバーをしたいかを、Makeup Carist(メーキャップケアリスト)が丁寧に聞き取ることからアドバイスが始まります。多くのがん患者さんは「闘病前の元気な自分」を取り戻したいと希望するそうです。

取材記者はがん患者ではありません。しかし、顔には肌のくすみやシミ、傷跡などがあるため、今回はがん患者さんに代わり、これらをカバーする化粧を実際に施してもらいました。また、男性もご利用されることを想定し、なるべく自然に見える「ナチュラルメイク」を希望しました。

「スキンケア(お肌のお手入れ)」からスタート

 鏡の前に座って、スキンケアからスタート。顔にひんやりとした、でもしっとりした感触が広がります。「化粧水と乳液で、保湿を行っています」と説明してくれたのは、今回の担当である同センターのMakeup Carist、澤田保子さん。「これまでに接したがん患者さんの多くが、お肌が乾燥するという悩みを抱えていました。特に放射線治療を受けた方に多いようです」と澤田さんは言います。

がん治療が肌に及ぼす影響のひとつが肌の乾燥です。治療の影響で皮脂腺や汗腺の働きが抑えられるため、肌が乾燥しがちになるのです。そのため「女性も男性も、お肌にうるおいを補給する保湿が、スキンケアの基本です」と澤田さんはアドバイスしてくれました。

実は、お肌のお手入れ(保湿)は、肌の乾燥を軽減するだけではなく、肌の生まれ変わりを促すことにもつながっています。私たちの肌は新陳代謝によって生まれ変わっているのですが、がん患者さんは治療の影響でそれがうまくいきません。

そのため、肌の乾燥だけではなく、色素の沈着による、「くすみ」や「シミ」という悩みも生じます。スキンケアは、こうした基本的な肌の悩みを軽減するための基本ケアでもあるのです。

治療中は肌が敏感な状態なので、刺激の少ない敏感肌向けのスキンケア化粧品の使用が推奨されます。スキンケアに無縁だった男性が新たにケア製品を購入する場合には参考にしてください。女性の場合は「刺激のないものであれば、お手持ちの化粧水や乳液をお使いください。スキンケアをするだけでも、リラックスし、癒しにつながります」と澤田さんは優しくアドバイスしてくれました。

肌のくすみとシミをカバーする化粧のコツ

 スキンケアの次は化粧下地クリームが塗られました。これには、肌を守ると同時にファンデーションののりを良くし、化粧もちを良くする効果があります。

気になる肌のくすみとシミをカバーするためには、ファンデーションの前に、肌色を補正しておくのがポイントです。通常コンシーラーなど部分用ファンデーションを用いますが、グレーっぽくなり、かえって顔色が沈んで見えがちに。

そこで、明度と彩度をコントロールする部分用カバーファンデーション(コントロールカラー)を用いることにしました。イエロー、オレンジ、ナチュラル、ブラウンの4色があり、「くすみが強く肌の色がダークな場合はオレンジ系、軽いくすみや色白の人にはイエロー系が効果的です」というのが澤田さんの説明です。

まず、オレンジをコンシーラーブラシに取り、気になるシミの上に軽くのせるようにしてカバーしてみました。それがこの写真です。

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写真1:メイク前

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写真2:メイク後

 シミが目立たなくなりました。フルメイクをしなくても、こうした気になる部分のカバーだけでも、表情が一変します。普段は特に肌のシミなど気にしていないはずなのに、それでもさっとブラシを走らせただけでシミが消えると気持ちまで明るくなるのが不思議でした。

治療に伴う外見の変化は、心に暗い影を落としがち。化粧をすることで、外見をカバーするだけでなく、気持ちまで上向きにしてくれるのを実感します。外見の悩みを抱えているのであれば、化粧に無縁の男性にもお勧めしたいと思いました。ちなみに澤田さんによると「お化粧に慣れていない男性やお子さまの方が、アドバイス通りに実践するので上達も早い」そうです。

シミのカバー後には、ファンデーションで顔の肌全体を明るく元気に整えました。次回は、男性にも役立つ「眉やまつ毛の脱毛」をカバーする化粧についてご紹介します。

[取材協力]
資生堂 ライフクオリティー ビューティーセンター
http://www.shiseidogroup.jp/slqc/

  • ●予約・問い合わせ03-3289-2262
  • ●予約受付時間 11:00〜18:00(祝祭日を除く火曜から金曜)
  • ●営業時間 11:00〜19:00 [最終予約時間](祝祭日を除く火曜から土曜)

がん患者さんのための外見ケアBOOK http://www.shiseidogroup.jp/slqc/information/information_151215.html

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