【QOL(生活の質)】がん患者さんに便秘が多い理由とその対策

公開日:2015年05月29日

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akiramenai_gk20150529_qol_img_02多くのがん患者さんが便秘の症状に悩まされています。食事の内容や食べ方、生活のリズムや運動不足など生活習慣や薬の副作用が原因です。便秘の原因を理解し、適切な対策をとりましょう。

便秘の症状

 排便が順調に行われない状態が便秘です。こんな症状に思い当たりませんか?
・ 数日にわたって排便がない
・ 排便の間隔が不規則
・ 便が硬くて、なかなか排泄できない
・ 便の量が少ない
・ 便がすっきり出た感じがない
・ 便が残っている感じがする
・ お腹が張っていると感じる

排便のしくみと便秘の原因

 食べ物は胃と十二指腸で消化しやすい状態にされると、小腸で栄養分などが消化・吸収され、かゆ状の「便の元」になります。続いて大腸を通過する間に体に必要な水分が吸収され、最終的に不要なものが便となります。ちなみに、大腸で水分吸収がうまく行われないと、水分の多い便、つまり下痢になります。

大腸から送られた便が直腸にたまると直腸壁を刺激し、それが大脳に伝わり、便意となります。便意をもよおした時がいちばん排泄しやすいタイミングです。便意を我慢するということは、このグッドタイミングを逃すということです。

理想的な排便は、1日1回、バナナ2本分くらいの排便がある状態です。しかし、食事の量が少なければ便も少なくなりますし、しっかり食べているつもりでも便の成分になる食物繊維が少ない偏った食事をしている場合や、汗をかいたりしても十分な補給をしないと体内の水分量が不足して、便が硬くなってしまうのです。また、排便のグッドタイミングを逃すことも便秘の引き金になります。

薬の副作用としての便秘

 便秘の原因は排便のプロセスのどこかに潜んでいます。しかし、がん治療中の患者さんの場合、鎮痛薬や抗がん剤などの薬の副作用が原因で便秘が起こることがあります。モルヒネなどオピオイド鎮痛薬には、痛みを抑える作用だけではなく、下痢止めの作用もあるからです。そのため服用する量が多くなると、水分含有量の少ない硬い便になり、排便が困難となって便秘になります。

胃や腸の運動は自律神経やホルモンによって調節されています。抗がん剤は自律神経やホルモンに影響を与えるため、排便を促す腸の蠕動運動のが低下を招き、便秘になることがあります。このほかに、制吐剤によっても便秘が引き起こされます。制吐剤は腸の動きを抑制する作用があるため便秘につながるのです。

医師への相談と医療的な対策

 薬の使用に伴う便秘の場合、緩下剤の種類や量を調節しながら排便のコントロ−ルをしていくことが必要になってきます。便が出なかったり、出にくい、おなかが張った感じや腹痛、強い吐き気がある場合には、必ず医師に相談し、便秘解消の対策をとりましょう。便を軟らかくする薬や腸を動かす薬などを上手に使えば、排便コントロールができます。

また、すでに緩下剤を処方されている場合でも、排便のコントロールがうまくいかない場合には、医師に相談し、下剤の量を調節するなどの適切な対応をとる必要があります。とくに人工肛門の患者さんで、便秘が続くなど、気になる症状が現れたら必ず担当医に相談しましょう。

なお、医師に相談する際には、患者さん自身が便の硬さ、色、形状など、便の状態や症状をできるだけ正確に伝えるようにしてください。

日常生活のなかでのセルフケア

 服用している薬剤、便の回数や色、硬さ、においなどの変化を記録するようにしましょう。薬や食べ物に応じてどんな便が出るのか、ある程度わかるようになるので、対策に役立ちます。また、食事や生活習慣を改善することも、便秘の予防や解消に役立ちます。一覧表を参考にしてください。

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