【QOL(生活の質)】がん患者さんが抱える睡眠の問題

公開日:2014年07月31日

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がん患者さんが抱える睡眠の問題

 がん治療を継続していると、精神的な不安や、薬の副作用による痛みなど、ストレスを感じることがあるかと思います。そのようなストレスから寝つきが悪くなったり、眠りが浅く、夜中に目覚めてしまったりするなど、不眠の症状に悩まされることがあります。不眠の症状が続くと身体が十分に休まらず、体力が低下して、日常生活や治療に影響がでてきます。不眠の状態が続く場合には、重度な不眠症になる前に、対策方法を知り、少しでも良い眠りを得るために改善していきましょう。

■ 不眠(睡眠障害)のタイプ

不眠(睡眠障害)にはいくつかのタイプがあります。入眠障害 (にゅうみんしょうがい)とは、寝つきが悪く、布団の中にいても寝ることができない症状です。不眠の中では一番多い症状です。中途覚醒(ちゅうとかくせい)とは、睡眠に入った後に何度も目が覚めてしまう症状です。熟眠障害(じゅくみんしょうがい)とは、物理的な睡眠時間を十分にとっているはずなのに、十分に眠った感覚が得られない症状のことです。また、早朝覚醒(そうちょうかくせい)といって、予定している起床時間よりも前に目が覚めてしまう症状もあります。

今日からできる安眠獲得方法

 眠れない症状が出ている場合には、自分ですぐに始められる安眠法を実践してみましょう。自分に合ったリラックス方法をみつけて、日頃から実践することで、寝つきの悪さを改善することができます。

<入浴時間を十分にとる>
 入眠のためには、身体を温めることが大切です。お風呂は日常生活においてリラックスできる、とても良い時間です。夏場でも案外身体は冷えています。シャワーで済ませずに、十分な入浴時間を取ることで身体を温めると良いと思います。お風呂の温度は38~40℃と少しぬるめに設定すると身体への負担も少なくて済みます。

<飲食物に注意を払う>
 寝る直前に食事をすると血流が活性化して入眠しづらくなると言われています。就寝前の数時間は食事を控えた方が良いと思います。食事内容はあくまで主治医と相談した上で検討する必要がありますが、肉類などの消化に時間がかかるものは、いつもより食事時間を早めると良さそうです。また、アルコールやカフェインなどを就寝前に飲むことは控えましょう。

<パソコン・スマートフォンなどの使用を避ける>
 人間は暗くなると自然に眠くなる体内リズムがあります。夜に明るい光を浴びたり、TVやパソコン、スマートフォンなどの画面を見たりすることで、身体が覚醒してしまうことがあります。睡眠前の数時間はこれらの使用を避けて、リラックスできる音楽を聴いたり、好きな香りを楽しんだりしてはいかがでしょうか。

<適度な運動をする>
 日中に適度に身体を動かすことで、ほどよい疲れを感じることも大切です。あまり激しい運動ではなく、ウォーキングやプールで軽く泳いだり歩いたりすることも効果的です。また、就寝前にストレッチを行うことで、身体をほぐし、リラックス効果が期待できます。

ストレスや心配事をひとりで抱え込まないことが大切

 自己努力だけで改善しない場合は、医師に相談することも一つの手です。主治医に相談することで、連携している精神科や最近増加している睡眠外来などを紹介してくれるケースもあります。睡眠導入剤などが処方されることもありますが、医師の用法容量を守ることで依存の心配はしなくて済むでしょう。

 また、最近では緩和ケアの考え方が医療施設でも浸透してきました。病院に緩和ケア医がいる場合には、不安な気持ちを聞いてもらったり、身体の症状緩和に対する適切な治療がないか、相談したりしてみると良いと思います。 質の高い睡眠を手に入れることで、治療を続けるための体力も確保することができます。自分だけの悩みだとひとりで抱え込まず、周囲への相談や、対策法を実践することで、睡眠についての悩みを早めに改善していきましょう。

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