【QOL(生活の質)】がん治療中の皮膚トラブルとスキンケア

公開日:2015年11月30日

目次

 放射線や薬物などがん治療に伴う副作用の1つが皮膚トラブル。治療を継続するためにもスキンケアが必要となります。皮膚トラブル対策として、日常生活における注意やスキンケアの実践方法をご紹介します。

がん治療中に現れやすい皮膚トラブルとその理由

 皮膚の乾燥、ニキビのような湿疹、爪の周囲の炎症など、治療中に起こる皮膚トラブルの症状はさまざまです。どうしてこういう皮膚トラブルが起こるのかというと、放射線や抗がん剤により、皮膚や爪の新陳代謝を行う細胞がダメージを受けるからです。症状を完全に防ぐことは難しいですが、スキンケアを行えば症状を軽くすることができます。

また、皮膚トラブルは、ゆっくりと症状がでてくるために対処が遅れがちです。知らないうちに目に見えない部分で症状が悪化していることもあります。入浴時や着替えのときなど、皮膚トラブルが生じていないか、注意深く全身を観察するようにしましょう。

スキンケアの基本は清潔と保湿、そして刺激の除去

 どのような症状でも、スキンケアの基本は、清潔を保つこととしっかり保湿すること。なぜなら、汚れの蓄積や乾燥は皮膚トラブルを悪化させるからです。そして皮膚への不要な刺激を避けることも基本です。衣類による摩擦や紫外線などの刺激は、皮膚を傷つけてしまいます。

男性の場合、ヒゲソリにも注意が必要です。清潔保持と身だしなみとしてヒゲソリは欠かせませんが、炎症が生じている時は、無理にしないほうがいいでしょう。また、ヒゲソリ後は保湿能力のあるクリームを塗布することをお勧めします。女性の場合、無香料やアルコール成分が入っていない低刺激の化粧品を使用するように努めましょう。クレンジングのあとも清潔さと保湿を十分に保つことを忘れずに。また、顔に皮膚トラブルが生じている時は化粧を控えましょう。

皮膚が乾燥し、柔らかさや滑らかさが失われると、より傷つきやすくなります。入浴後は、保湿能力のあるクリームを塗布することをお勧めします。

清潔ケア――洗浄剤の選び方とその使い方

 清潔さを保つためのセルフケアは、入浴やシャワー浴。その際に使用する石けんなどの洗浄剤は弱酸性の洗浄剤がお勧めです。アルカリ性の洗浄剤は、肌の脂分を少なくして皮膚を弱くするからです。洗浄剤を購入する際には、「弱酸性」「低刺激」「アルコールフリー」「無香料」「無着色」などのキーワードを目安に選ぶといいでしょう。

体を洗うときのコツは、皮膚の汚れを温水で流してから、タオル、スポンジに洗浄剤をつけてよく泡立て「泡で優しく洗う」ようにしましょう。洗い過ぎは禁物です。肌が本来持っている保湿成分まで落としてしまうからです。また、ゴシゴシ強くこすると、肌を傷つけてしまうので、皮膚に余分な摩擦を与えないように気をつけましょう。特にナイロンタオルは刺激が強いので使わないでください。

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洗った後は、洗浄剤の成分が残らないようにしっかり洗い流しましょう。低刺激性であっても、皮膚に洗浄剤の成分が残っていると、それが肌への刺激となります。そして、入浴後に水気を拭き取る際は、タオルで体をこすらないで優しく拭き取るようにしましょう。

保湿ケア――保湿剤の選び方と使い方

 保湿剤はシャワーやお風呂のあと、水分を拭き取ってからすぐに塗ります。時間が経ってしまうと、皮膚が乾燥して保湿剤の浸透が悪くなるからです。洗顔後も、肌から水分や油分が奪われがちになるので、保湿剤で潤いを補充しましょう。特に男性はヒゲソリ後の保湿を忘れずに。

また、意外と忘れがちなのが、手足のケア。足は朝・夕・入浴後または就寝前などに、 手は朝・夕・手洗いや水仕事・入浴後または就寝前などに、保湿剤を塗るようにしましょう。保湿剤を塗る時は、肌に叩き込んだりするのではなく、手のひらで包むようになじませます。広い範囲を保湿したい場合は乳液を、特に気になるポイントを保湿したい場合は クリームを用いるといいでしょう。

主治医が保湿剤を処方している場合は、処方された保湿剤を使用しましょう。 保湿剤の選び方ですが、これも「弱酸性」「低刺激」「アルコールフリー」「無香料」「無着色」などのキーワードを目安に、水と油をバランスよく含む乳液タイプの製品を選ぶといいでしょう。

肌の中で水を蓄える成分(グリセリン・ヒアルロン酸・アミノ酸・ セラミド・レシチンなど)や、水分が肌から蒸発するのを防ぐ成分(ワセリン・スクワラン・ オリーブ油・ホホバ油など)が配合されている製品がお勧めです。なお、保湿力が高い尿素入りの保湿剤は、肌荒れしている時はしみてしまうので使用を避けましょう。

日常生活における外的刺激からの保護

 清潔ケアや保湿ケアに加えて、衣類や靴など、身に付けるものにも留意しましょう。きつい靴下や締め付ける衣類は着用しないほうがいいでしょう。また、足に負担がかからないように、革靴やきつい靴は避け、足に合ったものを選んで履くようにしてください。厚めの靴下や柔らかい靴の中敷を使用すると、足の保護に役立ちます。

また、紫外線にもご注意を。夏場の外出や、冬でも海や山など戸外で長時間過ごす際には、直射日光に当たらないように長袖の衣服や帽子を着用しましょう。紫外線吸収剤不使用・低刺激の日焼け止めクリーム使用も役立ちます。

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