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【医療情勢 】緩和ケア
目次
治療の初期から始める緩和ケア
「緩和ケア」を標準的な治療が終わった終末期だけの治療と思っている方はいませんか。再発・転移がん治療情報編集部では、4月号のドクターインタビューにて川崎市立井田病院かわさき総合ケアセンター 副医長 西智 弘先生を取材して、その緩和ケアに関する考え方を伺いました。
(西智 弘先生の記事はコチラ)
緩和ケアは治療の初期から導入することができ、身体の痛みだけでなく、心の痛みもケアすることを目的とした治療です。世界保健機関(WHO)は緩和ケアのことを具体的に次のように記述しています。
「病気の早い段階にも適用する」、「痛みやその他の苦痛を伴う症状から解放する」、「生命を尊重し、死ぬことを自然な過程であると認める」、「死を迎えるまで患者さんが人生をできる限り積極的に生きてゆけるように支える」。
このような緩和ケアの考え方は、がん治療の現場でも実践されています。疼痛に関するマネジメントや、腹水などのコントロール、栄養管理などの身体に関することはもちろんのこと、治療初期からの患者さんの納得のいく治療方法を決めるための支援(医療者側からの情報提供)や、緩和ケア専門医や主治医によるある程度の時間を持ったミーティングなど、精神的なケアにまで広がりを見せています。
WHOの定義(※)
(参考) 緩和ケアとは、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、 疾患の早期より痛み、身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題に関して、 きちんとした評価を行ない、それが障害とならないように予防したり、対処することで、クオリティ・オブ・ライフを改善するためのアプローチである (WHO 2002)WHOの原文(※)
・provides relief from pain and other distressing symptoms;
・affirms life and regards dying as a normal process;
・intends neither to hasten or postpone death;
・integrates the psychological and spiritual aspects of patient care;
・offers a support system to help patients live as actively as possible until death;
・offers a support system to help the family cope during the patients illness and in their own bereavement;
・uses a team approach to address the needs of patients and their families, including bereavement counselling, if indicated;
・will enhance quality of life, and may also positively influence the course of illness;
・is applicable early in the course of illness, in conjunction with other therapies that are intended to prolong life, such as chemotherapy or radiation therapy, and includes those investigations needed to better understand and manage distressing clinical complications.
※厚生労働省 緩和ケアのページを参照
(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/gan_kanwa.html)
※WHOの原文
(http://www.who.int/cancer/palliative/definition/en/)
病院は緩和ケアを行うと点数がつく
日本では厚生労働省が「がん対策推進基本計画」において、緩和ケアの治療初期への導入を推進しています。「がん対策推進基本計画」は平成24年度から平成28年度までの5年間を対象として、がん対策の総合的かつ計画的な推進を図るために定められたもので、都道府県がん対策推進計画の基本となっているものです。
下記の図表にもありますように、緩和ケアの現状のイメージを払しょくして、治療初期から導入していくことを進めようとしています。具体的には、病院の中に、身体症状の緩和を担当する常勤医師、精神症状の緩和を担当する常勤医師、緩和ケアの経験を有する常勤看護師、緩和ケアの経験を有する薬剤師などから構成される「緩和ケアチーム」が設置されていると、病院は点数(医療保険から病院に金額が支払われる)が付くことになっています。
また、がん治療の拠点となっている「がん診療連携拠点病院」では、緩和ケアチームを設置することが指定要件となっています。こういった制度改正の流れもあり、緩和ケアの普及が進んでいます。
※厚生労働省 緩和ケアのページを参照
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/gan_kanwa.html
どのように緩和ケアを受けたらよいのか
いま治療を受けている病院やクリニックの主治医と緩和ケアに関する話をしたことはありますか。緩和ケアに対する理解があり、情報を持っている医師であれば、適切な医療機関に紹介してもらえると思います。また、国立がんセンターが運営するホームページや、日本緩和医療学会のホームページなどでも緩和ケアを受けることのできる病院を調べることができます。
国立がん研究センターがん対策情報センターのホームページ
緩和ケア病棟のある病院を探す
http://hospdb.ganjoho.jp/kyotendb.nsf/fTopKanwa?OpenForm
日本緩和医療学会のホームページ
http://www.hpcj.org/uses/pcumap.html
http://www.jspm.ne.jp/pub_link/index.html#01
病院に緩和ケアを受けることのできる設備がある場合でも、緩和ケアを受けるために入院するベッド数が不足している場合は、待ち時間が発生する場合もあります。しかし、入院までの間は在宅ケアを受けることができたり、外来で痛みに関する治療を行うことができる病院もあります。まずは主治医に相談してみましょう。
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