【QOL(生活の質)】副作用・後遺症対策~リンパ浮腫編~

公開日:2013年06月28日

目次

再発・転移によって発症することもある

リンパ浮腫とは、がんの手術でリンパ節を取り除いたり、放射線を照射したりなどによって生じる副作用です。体の中でリンパ液の流れが滞り、体の一部がむくむ状態を指します。通常のむくみであれば、一晩休むだけで症状が引いていきます。しかし、副作用としてのリンパ浮腫は一過性ではなく、長期もしくは生涯にわたり完治が見込めないと言われています。

乳がんであれば肘の上下、婦人科がんや泌尿器科がんでは下腹部や脚の付け根、陰部の周辺に生じやすい傾向があります。症状が出る時期は個人差があり、治療後すぐに発症する人もいれば、10年以上たってから発症する人もいます。また、再発や転移といった症状の進行にともなうリンパ浮腫もあります。がんがリンパ管を圧迫し、リンパ液の流れをさえぎるためです。

国際リンパ学会(isl)では、リンパ浮腫の病期分類を下記5段階に定めています。
0期……リンパ液の流れに障害があるが、明らかなむくみはなく、無症状の状態。
1期……発症初期の状態。むくんでいる場所(腕や脚)を高く持ち上げると症状が軽減する。患部を圧迫するとあとが残る。
2期……むくんでいる場所(腕や脚)を高く持ち上げても、ほとんど症状は軽減しない。圧迫すると、よりハッキリとあとが残る。
2後期…体内の組織が硬くなってきて、圧迫してもあとが残らないこともある。
3期……体内の組織が硬くなり、圧迫したあとは残らない。患部が厚くなったり、肌の色が濃くなったり、シワ、脂肪沈着、イボの発生などの皮膚変化を生じることがある。
※islガイドラインを元に作成

201307_03

静脈が透けて見えなくなると要注意

リンパ浮腫は、症状が進むにつれて、本来の腕や脚の太さを大幅に上回るむくみとなっていきます。元の状態の2倍ほどの太さになることもあり、なおかつ外から見えやすい部位に生じる症状だけに、患者さんの中には大きな精神的ストレスを感じる人もいます。症状が軽いうちであれば、自己管理をしながら通常の生活を続けることができるため、むくみに気づいたら早い段階で主治医に相談し、治療を始めることが大切です。

初期のうちは、あまり自覚症状がないことも多いとされます。早期発見のためには、まず「静脈」に注目しましょう。むくみが生じていると肌の厚みが増すため、いつもは透けて見えていた静脈も見えにくくなります。リンパ浮腫は、脇の下や脚の付け根などから徐々に広がりやすいため、その近辺の静脈が見えにくくなっていないか、日ごろからチェックしたいものです。

皮膚の厚みに関しては少しつまんでみるとわかります。リンパ液の流れが停滞すると、皮膚が張ってつまみにくくなります。
また、むくみが生じてくると、下着や靴下などのゴムのあとが長時間たっても残ったままになります。こちらも1つの目安として、日ごろから注視したい点です。

マッサージや圧迫療法などの基本4治療

治療法は、(1)スキンケア、(2)用手的リンパドレナージ、(3)圧迫療法、(4)圧迫下での運動を基本とし、症状に合わせて組み合わせる「複合的治療」が行われます。
リンパ浮腫は、肌の炎症をきっかけに発症することがあります。そのため、日ごろからスキンケアを意識し、常に皮膚の清潔を保って乾燥を防ぐことが大切です。入浴時には、石けんやボディーソープをきちんと泡立てて体を洗うようにしましょう。また、肌に合ったクリームやローションなどを使い、全身が十分に保湿されるようにも心掛けたいところです。手指やかかとなど、荒れたり乾燥したりしやすい部分は特に念入りに保湿しましょう。
(2)用手的リンパドレナージは、医療用の特殊なマッサージです。エステなどのメニューにある「リンパドレナージュ」とは別のものです。筋肉をほぐすような一般的なマッサージとも異なり、体内のリンパ液を流すように、ゆっくりと刺激を与えるマッサージです。間違った方法で刺激を与えると症状が悪化しかねないため、必ず医師や専門知識を持ったセラピストの指導のもとで行います。

(3)圧迫療法は、患部を圧迫することでリンパ液の流れを促進する方法です。「弾性着衣」というサポーターを身に着けて患部に圧力をかけます。弾性着衣には、スリーブ(腕用)、ストッキング(脚用)、グローブ(手指用)があります。軽度~中程度のリンパ浮腫であれば、弾性着衣を用いた圧迫で症状が軽減されることがあります。重度になると、弾性包帯を用いた圧迫を行うなど、患者さんの症状に合わせた方法が選択されます。いずれにしても、適切な圧力をかけることが重要なため、医師やセラピストの指示のもとで着用することになります。

(4)圧迫下での運動は、弾性着衣や弾性包帯などで適切に圧迫した状態で、軽く体を動かす方法です。圧力に加え、筋肉を収縮させることでリンパ液の流れを促します。大きくゆっくりとした動作で腕や脚を動かします。ただし、激しい運動は逆効果となるので注意しましょう。
なお、ここで紹介した4つの基本治療法の他にも、薬物療法や手術によるリンパ浮腫の治療を行う場合があります。詳しくは医師にご相談ください。

関連記事

※掲載している情報は、記事公開時点のものです。