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再発・転移における痛みと副作用-痛みのコントロール考えていますか-
目次
早期から始める疼痛コントロール
がんの再発による痛みの感じ方は、病巣の部位によって異なります。たとえば乳がんは、がん細胞が神経に浸潤するため、とりわけ強い痛みが生じます。膵臓がんや肝臓がんは、痛みというより重苦しいと感じる方が多いでしょう。神経に触れるような鋭い痛みではなく、腹水が貯まったりして、だるさや意識障害を感じるのです。
そうした痛みや苦しみを取り除く治療としては、これまで神経ブロック注射等が一般的でした。しかし最近では、再発の痛みが出た段階からモルヒネを使うケースも増えています。「オキシコンチン」や「オプソ」など、経口モルヒネ薬が発達してきたからです。
モルヒネというと、「がんの末期に使うもの」「中毒になる怖い薬」というイメージがあるかもしれませんが、新しいモルヒネはそうしたネガティブなものではありません。最少の使用量で、再発による痛みを上手くコントロールできます。
イメージが変わりつつある経口モルヒネ薬
実際、どのようにして使用するかというと、「オキシコンチン」で再発による痛みを恒常的に鎮めます。痛くなってから使用するのではなく、最初から痛みを止めてしまうために服薬するのです。
それでも、突発的な痛みが生じたときは、「オプソ」を服薬します。「オプソ」はシュガースティックのような形態で、服薬してすぐに痛みが消えるのが特徴です。乳がんなどの強い痛みだけでなく、膵臓がんや肝がんの重苦しさにも効果があります。
このようにモルヒネを使用している患者さんは、一様に「最初は怖かったけれど、使ってよかった」とおっしゃいます。
日本は、モルヒネの使用量が先進国中でもっとも少ない国です。逆にもっともモルヒネを使用しているのがオーストラリアやカナダ。次いでイギリス、アメリカなどと続きますが、そうした国々では非常に痛みを恐れる“文化”があります。
日本では、昔から「我慢が足りないのは(痛がるのは)武士の恥」のような“文化”がありましたが、何も我慢することはありません。無理に痛みをこらえることは、患者さんのQOLを著しく低下させます。最近になって、経口モルヒネ薬が普及してきたことは、日本にも痛みを取り除く文化が根付いてきたのかもしれません。
目には見えない副作用を知っておこう
がんが再発・転移した時、痛みと並んで心配なのが治療による副作用です。
副作用は、病巣の部位や治療法によってさまざまですが、たとえば膵臓がんの化学療法で「ジェムザール」や「シスプラチン」を用いた場合、吐き気や腎機能の低下が見られます。肝がんや乳がんで使用する「アドリアマイシン」では脱毛などが代表的な副作用です。
また、症状としては表れなくても、体内の状態を表す検査数値に変化が出る副作用もあります。その一つが造血に関するもので、白血球や血小板の数が少なくなってしまいます。
それらの血液成分が少なくなると感染症のリスクが高まりますから、抗がん剤の量を変えるか、休薬することになります。目には見えなくても、治療に影響する副作用があるのです。
「副作用の仕組み」を理解して、治療と向き合う
副作用への対策としては、副作用を抑える薬を使用して症状を抑えることになりますが、「なぜ、こうした症状が表れるか」を理解しておくとよいでしょう。
そもそも、がん細胞は通常の細胞に比べて増殖するスピードが早い特性があります。抗がん剤は、増殖の早い細胞に働きかけますが、がん細胞のほかにも、早いスピードで増殖する細胞は存在します。血液を作る骨髄の造血細胞や毛髪、精子、腸粘膜などです。
これらは毎日、産生を繰り返す細胞で、抗がん剤によるダメージをもろに受けてしまいます。その結果、前述のような副作用が表れるというわけです。
また、モルヒネ薬の主な副作用として便秘がありますが、これは服薬により腸の動きが止められたためです。副作用には必ず理由があり、それに則った対処をすることになります。
同様に、手術による後遺症も、仕組みを理解して正しく対応しましょう。
例えば消化器系の開腹手術をしたあとは、一度に少しずつしか食べられないようになります。これは、臓器が癒着してイレウス(腸閉塞)の状態になったためで、通常の量の食事を取ると消化管が詰まり、腹痛が起きてしまいます。だから、4〜5回に食事を分ける必要があるのです。薬の使い方も日頃の対応も、正しい情報を身に付けて望むことが大切です。
我慢しないで、医師と相談してみましょう
副作用がつらい場合には薬剤を換えたり、投与量を減らしたりすることも考えられます。いつも通りの生活を続けることが人生にとって大切な場合もあるでしょう。副作用は仕方がないと思い、がまんを続けていると、身体だけでなく精神的にもダメージが蓄積してしまいます。抗がん剤治療を一定期間休むことも、治療も長続きさせる方法の一つかもしれません。医師とよく相談しましょう。
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