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「マイクロRNA」の解析で、13種類のがんを99%の精度で選別
血液1滴からがんの早期発見を期待。
「マイクロRNA」の解析で、13種類のがんを99%の精度で選別

1滴の血液から、乳がんやすい臓がんなど13種類のがんを高精度で検出する――そんな画期的な技術を東芝が開発しました。がん細胞の有無を生存率の高いステージ0から識別できるようになる可能性があるといいます。
ここでは、東芝の発表内容をもとに、「マイクロRNA」を用いたがん検診についてご紹介します。
目次
検診によるがんの早期発見がますます重要に

厚生労働省の『人口動態統計※1』によれば、がんは1981年以降、日本人の死亡原因の1位となっています。2018年のがんによる死亡者数は約37万人にのぼり、全死因の3割を占めており、およそ3.6人に1人が、がんにより亡くなっている計算になります。
近年、がんの治療法は目覚ましい進歩を遂げており、いまやがんは治る病気などとも呼ばれていますが、進行度により生存率は大きく異なります。
たとえば、がんの中で最も罹患数が多い大腸がんでは、早期(Ⅰ期)の5年生存率(相対生存率※2)は95.1%ですが、他の部位に転移した進行期(Ⅳ期)では18.5%と、生存率が大きく下がります。
その他のがん種で見ても同様で、胃がんではⅠ期(94.7%)Ⅳ期(8.9%)、肺がんではⅠ期(81.6%)Ⅳ期(5.2%)、全がん種中最も生存率の低いすい臓がんでは、Ⅰ期(45.5%)Ⅳ期(1.4%)となっています。※3
そのため、がんの早期発見が重要視されており、できるだけ早い段階でがんを検出する新しい技術の研究・開発が各大学や研究機関で行われています。
※1 厚生労働省「平成 30 年(2018)人口動態統計月報年計(概数)の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai18/dl/gaikyou30.pdf
※2 相対生存率とは?
特定の疾患(胃がんや肺がんなど)の生存率を計算する際に、他の死因による死亡を補正し相対的に算出した生存率。(すべての死因を含めた生存率は「実測生存率」)
※3 国立がん研究センター「がん診療連携拠点病院等院内がん登録生存率集計」
(https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/brochure/hosp_c_reg_surv.html)
「マイクロRNA」を用いたがん検出技術とは

そのような背景の中、がんの早期発見を目指し、新たながん検出技術の開発に取り組んできた東芝は、2019年11月、「マイクロRNA」と呼ばれる物質を使って、1滴の血液から乳がん、すい臓がん、卵巣がんなど13種類のがんを99%の精度で検出する技術を開発したと発表しました。
マイクロRNAとは、体内で遺伝子やタンパク質を調節している物質のことで、血液中に約2,500種類ほど存在しています。近年、血液中に含まれるマイクロRNAの種類や量が、がんの発症によって変動することがわかってきました。その性質に着目し、血液中のマイクロRNAを調べることによって、がんなどの早期発見に役立つ可能性があることが確認されています。
【マイクロRNA検出技術により選別できるがん種】
乳がん | すい臓がん | 卵巣がん |
前立腺がん | 食道がん | 胃がん |
大腸がん | 肝臓がん | 胆道がん |
膀胱がん | 肺がん | 脳腫瘍 |
肉腫 |
今回の開発は、東京医科大学および国立がん研究センターから提供されたマイクロRNAに関する医学的知見と、マイクロRNAを電気化学的に検出する東芝の独自技術を融合して行われました。この技術により、13種類のいずれかのがんに罹患しているかどうかを網羅的に、かつ高精度に検出するスクリーニング検査に適応できるとされています。
また、独自のマイクロRNAチップと専用の小型検査装置を使用することで、検査にかかる時間が2時間以内に収まり、即日検査も可能になるといいます。東芝は、技術の実用化を目指し、2020年から実証試験を開始するとしています。
ステージ0のがんを発見できる可能性も

今回、検出できたがんの中には、初期段階であるステージ0の検体も含まれていました。東芝は、マイクロRNA検出技術を用いることによって、高精度でがんを早期発見することが可能と期待しています。将来、血液検査によって生存率の高いステージ0の段階から、がん細胞の有無を識別できるようになる可能性があります。そうなれば、より早期に治療を開始することが可能となり、患者さんの生存率延伸だけでなく、QOLの向上も期待できます。
ポイントまとめ
- がんは、早期発見できれば生存率が向上する
- 「マイクロRNA」を使い血液1滴から13種類のがんを検出
- ステージ0のがんの発見も期待される
- 【当記事の参考】
- 株式会社東芝「プレスリリース」より
https://www.toshiba.co.jp/rdc/detail/1911_06.htm
コラム:開発進む、新しいがん検査
「リキッドバイオプシー」「線虫」

二つ目は、優れた嗅覚を持つ「線虫」と呼ばれる生物を使って、がんの早期発見を目指す検査も、注目を集めています。この検査で用いられるのは、主に土の中に生息し、生物学の研究でも広く使われている「シー・エレガンス」という線虫です。「シー・エレガンス」が持つ、がん患者さん特有の尿のにおいに集まるという特質を利用して行われます。現在、大腸がんや胃がん、肺がんなど15種類のがんが、検査の対象となっています。
それぞれの検査について、下記記事でより詳しくご紹介しています。
がん研究会が進めるプレシジョン・メディスン
がん検査の最新動向
「尿一滴からがんを見つける。線虫を使ったがん検査が2020年1月から実用化へ」
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