【セミナーレポート】「画像診断の進歩と生活習慣病」(グランドハイメディック倶楽部)

公開日:2019年11月29日
グランドハイメディック倶楽部 理事長
医療法人社団 山中湖クリニック 理事長・放射線診断センター長
慶應義塾大学名誉教授
栗林 幸夫(くりばやし さちお)先生

10月4日(金)から10月6日(日)の3日間にわたり、リゾートトラストグループ会員制総合メディカル倶楽部「グランドハイメディック倶楽部」の医師による健康セミナーがジェイアール名古屋タカシマヤ外商サロンにて開催されました。グランドハイメディック倶楽部 理事長の栗林幸夫医師、理事の森山紀之医師、石口恒男医師が登壇し、がんをはじめ脳や心臓の疾患に対して、その予防方法や画像診断による早期発見の重要性などについてお話しされました。

当ページでは、栗林幸夫医師の講演内容についてご紹介します。

>>森山紀之医師「がん検診・がん予防について」を見る
>>石口恒男医師「突然死を避けるには― 画像診断の役割」を見る

目次

がん早期発見・早期治療には「画像診断」が不可欠

高血圧や脂質異常症、糖尿病、肥満などは、食生活や運動習慣に起因する生活習慣病に含まれますが、がんも喫煙をはじめ様々な生活習慣が影響するので生活習慣病のひとつと考えています。

男女ともに40代を越えるとがんの発生率が上がり、加齢とともに上昇する傾向があるため※1早期の段階で見つけてがんが小さいうちに適切な治療をすることが重要になります。

その基礎となるのが精緻な画像診断であり、実際のがん検診では部位や状況に合わせてCTやMRI、超音波、PETといった検査機器を使い分けたり組み合わせたりして、画像診断を行います。

※1 参考:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」より
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html

さまざまな画像診断を組み合わせ、最適な検査を行う

CT(コンピュータ断層撮影)は、体の周りにぐるりとX線を放出し、体を通って減衰する情報を360度方向から検出して画像にする装置です。ここ10〜15年のCT開発の進歩は目覚ましく、当初は1枚の画像撮影に数分、画像の再構成に一晩を要していましたが、最新式の機器では0.35秒の間に320枚もの画像の撮影ができるものもあります。

CTは全身の細かい部分までみることができる、形態診断に優れた機器です。例えば、肺のCT画像を撮ると、「すりガラス結節」と呼ばれる淡い小さな影が写ります。

これは胸部X線写真では写らず、CTでしか診断することができません。この結節が急に大きくなったり、内部に濃く白い影が出てきたりすると、肺腺がんの疑いが出てくるので、同じ撮り方の画像で経年的に検査して確認していくことが重要になります。

MRI(磁気共鳴画像診断)は、強力な磁場を使って、体内の「プロトン」と呼ばれる水の分子が発する波や信号を検知して画像化する機器です。磁場強度が高いほど細かなところまで見える性質があり、人の診断用に認められているMRIの中では、3.0テスラ※2のものが最も高磁場の機器になります。

※2 テスラ…磁場の強さを表す単位の一つ

MRIは、縦・横・斜め方向など、自由に断層画像を作りだすことで、多くの情報を収集でき、腹部や骨盤内の様々な臓器のがんの早期発見につながります。

例えば、男性の前立腺がんでは主にこのMRIを使って検査を行います。MRIの画像では、前立腺がんの7割ほどが発生する外側の辺縁域は高信号を呈して白く写りますが、がんが生じた場合はその中の低信号域として認識できます。前立腺がんの場合にはPSAという信頼できる血液のバイオマーカーがあるため、PSA検査の数値とMRI検査を組み合わせて診断します。

超音波(エコー)検査は、甲状腺や乳房に加えて肝臓、腎臓、胆のうやすい臓などの臓器を診断する際に用います。また、体の表面に近い臓器で特に威力を発揮するので、例えば甲状腺がんや乳がんの場合では、超音波検査が基本的な検査法になります。

乳がんを調べる際の乳腺組織の検査は、超音波検査とX線で乳房を撮影するマンモグラフィを組み合わせて行います。マンモグラフィは乳腺を圧迫して撮影を行うため、痛みを感じる方もいます。

通常は上下方向と左右方向の画像を撮りますが、最近では3Dマンモグラフィという断層画像による3次元的な情報が撮れるような機器も登場しています。

PET(ポジトロン断層撮影)検査は、FDGというブドウ糖に似た薬を体に投与してがん細胞に取り込ませ、放出される陽電子を検知して画像化する検査方法です。

細胞分裂を盛んに行うがんは、必要なエネルギーをブドウ糖から得ています。がんがあるとブドウ糖の代謝が通常の2倍から8倍に増えるので、その集積具合を判定してがんの存在を調べます。

体への負担が少なく、全身を一気に調べることができ、がんの存在診断と同時に進行度の診断もできるのがPET検査の特徴で、検査時間も短いですが、万能というわけではありません。

ある程度腫瘍が大きくならないと発見が難しく、悪性度の低いがんや胃や食道などの粘膜にできた小さながんは見つけにくいです。また、肝臓や腎臓のがんは、ブドウ糖代謝に関連する酵素活性の問題で発見するのは苦手です。

血管の詰まりや動脈にできる瘤(こぶ)を見つけ、心筋梗塞や脳梗塞、動脈瘤の破裂を予防

続いて、食生活などが影響する血管の疾患についてお話しします。
男性は40歳以上、女性は50歳以上になると高脂血症や糖尿病の方が増える傾向が強く、血管の動脈硬化の大きな原因になります。

動脈硬化が起こると、血管の中にプラークという脂肪の塊が形成されて血液の通る道が狭くなり、狭心症や一過性の脳虚血(のうきょけつ)の原因になります。また、血管が狭くなる狭窄(きょうさく)がひどくなったり、プラークが破裂して血栓を形成したりすると、急性の心筋梗塞や脳梗塞などが起こります。

血管が狭くなって詰まる疾患に対し、血管が拡張する代表的な疾患が動脈瘤(どうみゃくりゅう)です。

脳の動脈に瘤(こぶ)ができる脳動脈瘤は、発生するまでは具体的な症状がなく、破裂すると、くも膜下出血となって命に関わります。大きさが5〜7㎜を超えると破裂の危険性が急激に上がるので、MRIで経年的に大きさを測って破裂する前に適切な治療をしなければいけません。

心臓から全身に血液を送る大動脈に瘤ができる大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)もほとんどは無症状です。胸部や胸腹部、腹部などに分けた大動脈の部位によって治療の考え方や手術方法も変わりますが、胸部は6㎝以上、腹部は5㎝以上になると破裂する確率が高まり、放置しているといつかは破裂してしまいます。

そうすると手術をしても救命率が半分ほどに下がってしまうので、その前にCT検査で瘤の大きさや形、場所に関して的確な診断をすることが重要です。

こうした血管疾患の原因となる動脈硬化の予防にあたっては、いったん血管の中に溜まってしまったプラークを減らすことはできないため、原因となる基礎疾患を検診によって早い段階で見つけ、生活習慣の改善などでコントロールして悪化させないことが肝要になります。

ポイントまとめ

  • 生活習慣病ともいえるがんを早期で発見するために、CT、MRI、超音波(エコー)、PETなどの検査機器を使った「画像診断」が重要な役割を担っている
  • CT検査、MRI検査、超音波検査、PET検査は、それぞれ異なる仕組みで画像を撮影する画像診断法で、部位や状況に合わせて組み合わせながら、最適な検査を行っている
  • 血管が狭くなって詰まる心筋梗塞や脳梗塞、血管に瘤ができて破裂する動脈瘤は命に関わるため、検査で経年的に大きさや形を確認し、適切な時期に治療することが大切

取材にご協力いただいたドクター

栗林 幸夫 (くりばやし さちお) 先生

医療法人社団 山中湖クリニック理事長・放射線診断センター長
グランドハイメディック倶楽部 理事長
慶應義塾大学名誉教授

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