【セミナーレポート】「がん検診・がん予防について」(グランドハイメディック倶楽部)

公開日:2019年11月29日
グランドハイメディック倶楽部 理事
一般社団法人あきらめないがん治療ネットワーク 理事
医療法人社団ミッドタウンクリニック 理事
医療法人社団進興会 理事長
元国立がん研究センター がん予防・検診研究センター センター長
森山 紀之(もりやま のりゆき)先生

10月4日(金)から10月6日(日)の3日間にわたり、リゾートトラストグループ会員制総合メディカル倶楽部「グランドハイメディック倶楽部」の医師による健康セミナーがジェイアール名古屋タカシマヤ外商サロンにて開催されました。グランドハイメディック倶楽部 理事長の栗林幸夫医師、理事の森山紀之医師、石口恒男医師が登壇し、がんをはじめ脳や心臓の疾患に対して、その予防方法や画像診断による早期発見の重要性などについてお話しされました。

当ページでは、森山紀之医師の講演内容についてご紹介します。

>>栗林幸夫医師「画像診断の進歩と生活習慣病」を見る
>>石口恒男医師「突然死を避けるには― 画像診断の役割」を見る

目次

たばこ、食生活、ウイルス感染が日本人のがん発症の3大要因

高齢化と禁煙対策が遅れている影響に加えて、がん以外の死因で亡くなる方が減ってきたこともあり、先進国の中でも日本は特にがんで亡くなる方が増えてきています。年間では約37万人の方が、がんで亡くなっており、男性は肺がん、女性は大腸がん、男女合計では肺がんによる死亡者数がもっとも多くなっています※1

生涯で、男性は2人に1人、女性はおよそ3人に1人ががんになりますが、50歳くらいまでは男性より女性のほうが、がんになる割合は高くなっています※2。女性は40歳くらいから乳がんや子宮頸がんが増えますが、最近目立って増えているのが大腸がんです。大腸がんの原因としては、特に食生活の欧米化が影響していると言われています。

※1,2 国立がん研究センターがん情報サービス「最新のがん統計」参照
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html

がん全体の原因と考えられているのは、食べ物とたばこ、ウイルス感染などが挙げられます※3。その中でもたばこは最も健康に悪く、60種類もの発がん物質を持っています。

肺がんの7割は喫煙が原因で、間接喫煙の副流煙(ふくりゅうえん)でもがんの要因となります。食べ物では、ナッツ類のカビに強烈な発がん性があります。ソーセージやサラミの類も、毎日食べているとがんになりやすいようです。

発がん物質が入っている食材がまだ十分わかっていないこともあり、同じ物ばかり食べるのはよくありません。塩分の過剰摂取も胃がんの発症に影響がありますし、体重の極端な増減もがん発症に影響します。

お酒は代謝を亢進する効果があり、飲みすぎなければよいのですが、1日に2合以上だと肝臓にダメージを与えます。

※3 国立がん研究センターがん情報サービス「がんの発生要因」参照
https://ganjoho.jp/public/pre_scr/cause_prevention/factor.html

たばこ、食べ物以外の原因には、肝炎ウイルスやヒトパピローマウイルス(HPV)といったウイルス感染があります。HPVは性交渉によって感染し、子宮頸がんの主な原因となりますが、昨今は10代や20代の女性がいろいろなパートナーと関係を持つようになり、若い女性の子宮頸がんが増えていることが問題になっています。

また、遺伝もがんの原因のひとつです。私の家族の中にも食道がんに舌がん、咽頭がんや肺がんを患っている人がいますし、私自身もがんになりました。しかし、検診を受けて早期に見つけたことが幸いし、皆元気にしています。

人間は体内の細胞が壊れるたびに作り直しているのですが、その過程で細胞のコピーミスで生じたものががん細胞です。正常な細胞は途中で増殖をやめるのですが、がんはそのまま果てしなく大きくなっていき、途中から進行が急に早くなる性質があります。

がんの種類によっても進行スピードに差があり、甲状腺がんや前立腺がんは進行が遅く、逆に早いのはすい臓がんやスキルス胃がんです。

すい臓がんで助かる方はほんのわずかですが、その多くは検診でがんが見つかった方です。すい臓がんの5年生存率がおよそ10%であるのに比べて、乳がんは80%以上です。肺がんも初期の段階で見つかると5年生存率は80%以上といわれています。大腸がんも早いうちに見つかれば95%と高い生存率ですが、ほかの部位に転移してしまうと18%まで下がります※4

※4 国立がん研究センターがん情報サービス「がん診療連携拠点病院等院内がん登録生存率集計」参照
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/brochure/hosp_c_reg_surv.html

欧米では7割ががん検診を受診。
命や健康の価値を理解し、まずはなんらかの形で検診を

がんを予防するにあたって明確なデータやエビデンス(科学的根拠)がある有効な対策は、喫煙対策とがん検診です。日本では主に子宮、乳房、大腸、胃、肺についてがん検診を行っていますが、検診を受けている人と受けていない人とではっきりと生存率に差が出ています。

欧米ではおよそ70%の人ががん検診を受けているのに対し、日本はやっと40%に届いたほどです※5。これは、欧米と日本での生命に対する考え方の違いが背景にあるように思います。

※5参考:国立がん研究センター がん情報サービス「がん検診について」より
https://ganjoho.jp/med_pro/pre_scr/screening/screening.html

欧米ではまず命を守ることを最優先にします。検査でがんが見つかると「早く見つかってよかった」と喜び、がんがなければ健康に自信を持てるので、がんが見つかっても見つからなくても「よかった」と考えます。

一方、日本人では、がんが見つからなかった場合「検診のお金がもったいない」という発想の方がいます。また、検診を受けることよりも会社や家族のことを優先してしまう傾向が強いようです。命の尊さや健康の価値を本当の意味で理解してほしいと思います。

「自分は大丈夫」とか「検査の結果が怖い」という理由で検診を受けない方ほど、進行がんや末期がんが見つかるリスクが高まります。統計上は2人に1人ががんになりますし、がんは遅れて見つかるほうがよっぽど怖いのです。これは、がんや生命のことについて学校教育であまり教えていないのも原因でしょう。

どのような検診を受けたらいいか迷ったら、とりあえず何らかの形で検診を受けてみてください。一口に検診といってもそれぞれ検査する範囲(部位)や精度が異なりますので、まずは最初の検診を入口にして、興味や余裕が出たらより精度の高い検診を受けてほしいと思います。

ポイントまとめ

  • 男性は2人に1人、女性は3人に1人ががんになり、50歳くらいまでの比較的若い年代では女性の方が罹患リスクが高い
  • 日本人のがんの主な原因は、喫煙、食生活の欧米化、ウイルスへの感染。遺伝もがんの要因の一つ
  • 科学的に有効性が明らかな「がん対策」は、禁煙とがん検診。検診を受けているかいないかが生存率に影響
  • 欧米のがん検診受診率約7割に対して、日本では4割程度。まずは何らかの形で検診を受け、徐々に精度の高い検診を受けてほしい

取材にご協力いただいたドクター

森山 紀之先生

森山 紀之 (もりやま のりゆき) 先生

一般社団法人あきらめないがん治療ネットワーク 理事
医療法人社団ミッドタウンクリニック 理事

医療法人社団進興会 理事長
グランドハイメディック倶楽部 理事


主な資格など
■略歴
1973年 千葉大学医学部卒業
1986年 米国Mayo Clinic 客員医師
1987年 国立がんセンター放射線診断部 医長
1992年 国立がんセンター東病院放射線部 部長
1998年 国立がんセンター中央病院放射線診断部 部長
2004年 国立がんセンターがん予防・検診研究センター センター長
2010年 独立行政法人国立がん研究センター がん予防・検診研究センター センター長
2013年 医療法人社団ミッドタウンクリニック常務理事 兼 健診センター長 医療法人社団勁草会理事
一般社団法人あきらめないがん治療ネットワーク理事に就任
2016年4月 医療法人社団進興会 理事長に就任
2016年8月 グランドハイメディック倶楽部 理事に就任

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