【医療情勢】知っているようで実はよくわからない――がんの先進医療とは?

公開日:2017年03月31日

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がん治療に関連して「先進医療」という言葉を聞くことがあります。どんな治療なのか?そのメリットとデメリットは?費用は?きっといくつもの「?」が浮かぶのではないでしょうか。
聞いたことはあるけれど、その具体的な内容についてはあまり理解されていない。そんな用語について解説します。がん治療選択肢を考える際に役立ててください。

先進医療とは(保険診療とどう違うのか)

がんの治療で一般的に行われているのは、がんの種類や進行の程度に応じた「標準治療」です。これは科学的な根拠に基づいて、現時点で利用できる最良の治療法のことを指しています。そしてこの標準治療には公的健康保険が適用されます。

一方、「先進医療」は厚生労働省が定める「高度な医療技術を用いた治療」のことで、厚生労働省の指定を受けた医療機関でのみ実施することができます。公的健康保険は適用されません。

医学は進化しています。しかし、新しく開発された治療法や新薬がすぐに保険診療に導入されるわけではありません。保険適用可否について評価する「評価療養」という審査があり、先進医療もその対象の一つです。

先進医療のうち、2012年4月に公的医療保険が適用されるようになったのが、前立腺がんに対して行う内視鏡下ロボット支援手術です。医師が患部の立体的な画像を見ながら行う内視鏡手術の一つですが、従来の術法との違いは、遠隔操作でロボットアームを動かして手術をすることです。また、早期胃がんや早期大腸がん、早期食道がんの内視鏡治療ESDも、先進医療から保険適用の標準治療となった例です。

このよう先進医療の中には、保険適用となるものがある一方、保険診療への導入には不適との評価を受けて、先進医療から除外されるものもあります。

がんに関わる先進医療

先進医療は、有効性がある程度明らかで安全性の問題が少ない「先進医療A」と有効性が必ずしも十分に明らかでなく、安全性と有効性に関する厳しい評価を求められる「先進医療B」に分類されています。

2017年3月1日現在でA・B合わせて109種類となっています。例えば、新たな放射線治療方法として注目されている陽子線治療や重粒子線治療は先進医療Aに分類されるもので、放射線の一種である陽子線や重粒子線を、狙った病巣に集中して照射する治療法です。がんを切らずに治療する低侵襲な治療方法として注目されています。

先進医療には治療方法だけではなく、検査方法も含まれています。その一例が早期胃がんを対象とした先進医療Bの腹腔鏡下センチネルリンパ節生検です。早期胃がんの標準的な手術法としてはがんの部位に応じた部分切除や全摘出が行われますが、リンパ節転移の可能性を考慮して領域リンパ節郭清が同時に行われます。

しかし、実際には早期胃がんではリンパ節転移がない場合も少なくありません。そこで標準手術が過大手術とならないようにあらかじめ実施できる低侵襲な検査方法が求められています。なお、がんがリンパ節に転移していないかを調べるセンチネルリンパ節生検は、乳がんや皮膚がんにおいては2010年4月から保険適用になり、標準治療として行われています。

先進医療の内容や対象となるがんについての詳細は、厚生労働省のサイト「先進医療の各技術の概要」(http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/sensiniryo/kikan03.html)で確認してください。

先進医療を受ける方法と注意点

先進医療は、厚生労働省が定めた基準を満たした医療機関でのみ受けることができます。先進医療を実施している医療機関の一覧は、次の厚生労働省のサイト(http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/sensiniryo/kikan02.html)で見ることができます。

ただし、先進医療は誰でも希望すれば受けられるものではありません。患者が希望し、同時に医師がその必要性と合理性を認めた場合に行われます。したがって、先進医療を行っている医療機関で受診して、可否の判断を仰がなければなりません。

先進医療を受ける場合には、治療内容や必要な費用などについて、医療機関から説明を受けます。その説明内容について十分に納得できたら、同意書に署名し、治療を受けることが最終決定します。

先進医療のメリットは、治療の選択肢が増えることです。しかし、まだ新しい治療方法なので予期せぬ副作用が起こる可能性もあり、長期的な安全性が確保されにくいのがデメリットです。また、先進医療を受けられる施設が限定されていることに加え費用が高いこともデメリットと言えます。

なお、先進医療と紛らわしい「最新治療」や「先端医療」と称する治療法があるので、混同しないように注意しましょう。なぜなら、そうした似たような名称の治療法の中には科学的根拠や必要性があいまいなものや、期待する効果が得られないばかりか、高額な治療費を請求されるケースもあるからです。

先進医療を選択する前に、その治療内容をよく吟味し、それが本当に必要な治療なのか、しっかり考えてみましょう。

先進医療の費用について

厚生労働省の「平成28年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告」によると、1件あたりの先進医療費は、例えば陽子線治療の場合が2,760,022円、重粒子線治療は3,093,057円、内視鏡下手術用ロボットを用いた腹腔鏡下胃切除術は1,058,832円となっています。

公的健康保険が適用されていない先進医療の費用は、全額自己負担ですが、その金額は、医療技術の種類や医療機関によって異なります。保険適用のない診療については費用が設定されていないので、個々の医療機関で自由に設定することができるからです。

先進医療の費用とは、「先進医療として認められた医療技術」を指しています。先進医療以外の診察・検査・投薬・注射や入院料など、一般治療と共通する部分の保険適用が認められます。

例えば、先進医療に関わる費用が20万円で、その他の診察や検査、入院などの一般治療と共通する費用で80万円かかった場合、全体の費用は100万円です。しかし、全額負担となるのは20万円で、一般治療と共通する費用は公的健康保険適用による3割負担となるので24万円。つまり実質的な支払い金額は、自己負担と健康保険適用負担額を合わせて44万円となります。

公的健康保険適用による3割負担の金額に対しては高額療養費制度を利用すれば、年齢や所得に応じて負担が軽くなります。

重粒子線治療や陽子線治療などの費用は300万円前後かかると言われています。自治体の中にはこうした負担を軽減するために、経済的な支援制度を設けているところがあります。がん先進医療の助成制度やその利用方法など、お住まいの自治体に問い合わせてください。

がん保険の加入者で「先進医療特約」を付帯している場合には、希望する先進医療が該当するかどうか保険会社に問い合わせてみましょう。

なお、確定申告で医療費控除を受けられるので、支払った医療費の領収書は大切に保管しておきましょう。

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