【医療情勢】がん治療と公的支援――高額療養費制度と自治体の経済的支援策

公開日:2017年2月28日

  がん治療に関わる経済的負担を軽減するために活用できる代表的な公的支援策が「高額療養費制度」です。また、がん先進医療の経済的支援策を行う自治体もあります。がん闘病中の支援情報として、公的医療保険の高額療養費制度と自治体の経済的支援策を中心に紹介します。

高額療養費制度とは

  公的医療保険の高額療養費制度とは、一カ月(月の1日~末日)に医療機関や薬局の窓口で支払った額が一定の金額を超えた場合、超えた金額分が高額療養費として健康保険組合から払い戻される制度です。公的医療保険が適用される医療費であれば、入院・通院・在宅医療を問わず対象になります。ただし、上限がいくらになるのかは、図のように年齢や所得水準に応じて異なります。

例えば、70歳未満で年収約500万円の患者さんの、ある月の医療費が100万円に達した時に高額療養費制度が適用されると、窓口で一旦30万円(3割負担)支払ったとしても、負担の限度額は87,430円なので、後日、加入している健康保険から限度額を超えた分21,2570円が支給されます。

さらに、高額療養費を申請する直近の12カ月間に高額療養費の支給を受けた月が3カ月以上ある場合、4カ月目からは「多数回該当」扱いになり、自己負担額が44,400円に減額されます。

< 70歳未満>(厚生労働省保険局資料より抜粋)

<70歳以上>(厚生労働省保険局資料より抜粋)


図の出典:http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000075123.pdf

この制度を利用するには、患者さんが加入している公的医療保険の窓口に申請しなければなりません。払い戻しは申請からおよそ3カ月後です。また、高額療養費の申請は、診療を受けた月の翌月の初日から2年間有効です。該当する高額療養費があれば、過去にさかのぼって支給申請することができます。

限度額適用認定・標準負担額減額認定証

  高額療養費制度の利用で超過分が払い戻されるとはいえ、一時的な支払いは大きな負担になる場合があります。入院などでこれから高額な医療費がかかることが分かっている場合には、加入している公的医療保険に申請して「限度額適用認定証」または「限度額適用認定・標準負担額減額認定証」の交付を受けておきましょう。これをあらかじめ医療機関の窓口に提示しておけば、支払額が高額療養費制度の自己負担限度額までとなります。

なお、70歳以上75歳未満の方は申請の必要はありません。受診時に保険証と高齢受給者証を提示すれば、限度額適用認定証と同様に、医療機関での支払いが自己負担限度額までの支払いとなります。

高額医療・高額介護合算療養費制度

  がん治療中、公的医療保険だけではなく介護保険も利用している方もいるでしょう。公的医療保険における高額療養費制度のように、介護保険にも1カ月の自己負担額の限度を定めた「高額介護・高額介護予防サービス費制度」が設けられています。

しかし、これらの2つの制度を利用しても負担が大きい場合に、自己負担の年間上限を定めたのが「高額医療・高額介護合算療養費制度」です。世帯内における同一の医療保険加入者について、1年間(8月1日から翌年7月末日まで)にかかった医療費、介護費の自己負担(保険適用のもの)が限度額を超えた場合に利用できます。

申請は、各市区町村役場の介護保険の窓口と、加入している公的医療保険の窓口の両方で手続きを行う必要があります。

自治体が行なっているがん先進医療に対する経済的支援策

  先進医療とは、厚生労働省が定める高度な医療技術を用いた治療のことで、医療技術ごとに施設基準が設定され、その基準に適合する医療施設にて行われているものを指します。先進医療は公的保険適用外なので、全額自己負担となります。例えば、重粒子線治療や陽子線治療も先進医療のひとつで、その治療費は300万円前後かかると言われています。そのため先進医療を受ける際には、その高額な費用の捻出が問題になります。自治体の中にはこうした負担を軽減するために、経済的な支援制度を設けているところがあります。

鳥取県や長野県、茨城県、佐賀県、和歌山県などでは、がんの先進医療を受ける方やその家族の方への経済的支援として、県が指定する金融機関のがん先進医療費専用のローン利用者への、利子相当額を助成する「がん先進医療費利子補給制度」を設けています。

また、福岡県や神奈川県、鹿児島県でも同様に「重粒子線治療費利子補給制度」あるいは「重粒子線治療費助成制度」などの名称で、同様の経済的支援を行なっています。

助成制度や、その利用方法など、詳しくはお住まいの自治体にお問い合わせください。インターネットでも検索できます。

まだ間に合う、確定申告で医療費控除

  医療費控除は、かかった医療費に応じて、税金が軽減される制度です。1月1日から12月31日までの医療費の自己負担額から、高額療養費や民間保険の保険金として戻ってきた金額を除いて、10万円(所得が200万円以下の人は所得の5%)を超えていれば、医療費控除を受けることができます。

ただし、医療費控除を受けるには最寄りの税務署へ行くか、郵送またはインターネットを使って、確定申告をしなければいけません。確定申告期間は2月16日~3月15日ですが、過去に控除を受けていない医療費がある場合、5年以内であれば申告することができます。該当する方は、医療費控除に関する事項を記載した確定申告書、医療費の領収書、給与所得の源泉徴収票を準備し、最寄りの税務署にお問い合わせください。

国税庁のサイトには医療費控除を受ける方のために、その手続き内容を解説した動画もあるのでご参照ください。
http://www.nta.go.jp/webtaxtv/201601_c/webtaxtv_fb.html

経済的な不安があれば相談を

  経済的な不安があると、安心して治療に専念することができなくなります。そのようなときには、不安を抱え込まず、相談しましょう。がん診療連携拠点病院などのがん相談支援センターあるいは通院先の医療機関に設けられた相談窓口などで対応してくれます。

がん診療連携拠点病院のがん相談支援センターについてはバックナンバーもご参照ください。
【医療情勢】ここまでできる、がん相談支援センターの活用法(2017年1月号)

また、地域に暮らす人たちの介護や保険福祉、医療などをサポートする目的で各市区町村に設置されている地域包括支援センターでは、社会福祉士、保健師、看護師、主任介護支援専門員などの専門職が、必要なサービスの情報提供や紹介を行っています。介護保険を利用していなくても相談可能で、相談料金は無料です。

身近な相談窓口を利用して、安心して治療が受けられるようにしましょう。