【医療情勢】がん患者の治療と仕事の両立を目指す 厚生労働省が支援のガイドラインを発表

公開日:2016年3月31日

 日本人の2人に1人が生涯のうちにがんになる時代。医学の進歩によりがん患者さんの生存率は向上し、仕事を持ちながら通院しているがん患者さんは32.5万人に上るともいわれています。一方で、通院しながら働く環境が企業内に整っておらず、仕事を続けたくてもやめざるを得ない患者も少なくありません。

そうしたなか、厚生労働省は2月23日、がんと共存しながら仕事を続ける対応策として「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」を発表しました。がん対策基本法に基づく就労支援策の一環で、企業向けに初めて策定されたものです。

ガイドラインは、「労働者本人だけでなく、家族や医療機関関係者など、支援に関わる方も活用可能」です。

両立支援のための環境整備

 ガイドラインは、企業に対して管理者への研修のほか、次の対策を求めています。

  1. 1. 患者が安心して相談し、申し出ができるように、企業内に相談窓口を設けること
  2. 2. 患者が通院するために、時間単位の休暇制度や時差出勤制度などを導入すること
  3. 3. 主治医に患者の業務内容等を知らせるための様式や、主治医から就業上の措置等に関する意見を求めるための様式を整えること

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両立支援の進め方

企業と主治医が情報を共有するためのしくみについて、ガイドラインは次のような流れを示しています。

  1. 1. 患者が企業へ申し出る
    患者が、自らの業務内容などを主治医に伝え、それを参考に主治医が「就業の可否、時短などの望ましい就業上の措置、配慮事項」を記載した書面を作成します。その書面を患者が企業に提出します。
  2. 2. 企業が産業医などの意見を求める
    企業は、主治医からの情報を産業医などに提供し、就業上の措置、配慮に関する意見を求めます。
  3. 3. 企業が就業上の措置などを決定・実施する
    企業は、患者の意見も聞いたうえで、「就業の可否、就業上の措置、治療に対する配慮の内容」を決定し、実施します。

なお、患者が就業する場合、具体的な支援内容をまとめた「両立支援プラン」や「職場復帰支援プラン」を作成することが望ましいとしています。

様式を例示

 ガイドラインは、患者や主治医、企業の間でやり取りする際に使用する書面の「様式例」を次のように示しています。

  • ・勤務情報を主治医に提供する際の様式例
  • ・治療の状況や就業継続の可否などについて主治医の意見を求める際の様式例
  • ・職場復帰の可否などについて主治医の意見を求める際の様式例
  • ・両立支援プラン、職場復帰支援プランの作成例

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 このほか、ガイドラインではがんが再発した場合の対応についても、企業は「あらかじめ疾病が再発することも念頭に置き、再発した際には状況に合わせて改めて検討する」と記載されています。また、両立支援の留意事項として、患者のメンタルヘルス面への配慮にも触れています。

【コラム】65%が「治療と仕事の両立が困難」――内閣府調査

 昨年1月、内閣府はがん対策に関する世論調査の結果を発表しました。「治療や検査のために2週間に1回程度、通院しながら働く環境が整っているか」の問いに、65.7%のがん患者が「そう思わない」「どちらかといえばそう思わない」と答えています。仕事と治療の両立がむずかしい理由として最も多かったのは、「代わりに仕事をする人がいない、または頼みにくい」で22.6%を占めています。ほかに、「職場が休むことを許してくれるかどうかわからない(22.2%)」「がんの治療・検査と仕事の両立が体力的に困難(17.9%)」「がんの治療・検査と仕事の両立が精神的に困難(13.2%)」「休むと収入が減る(13.1%)」などが挙げられています。

東京都の取り組み

 ■企業向けにハンドブックを発行
がん患者と家族および企業におけるがん罹患後の就労に関するニーズや課題を把握するため、東京都は平成25年度に「がん患者の就労等に関する実態調査」を行いました。この実態調査の結果に基づいて、昨年3月に「がんに罹患した従業員の治療と仕事の両立支援ハンドブック」を発行。ハンドブックは「基礎知識編」と「実践事例編」の2部構成で、事業主や人事労務担当者が必要とする情報が掲載されています。

優良な取り組みを行う企業を表彰

 今年2月、東京都は「がん患者の治療と仕事の両立への優良な取組を行う企業」として表彰企業7社を発表しました。各社の取り組みは事例紹介集「企業でできるがん対策事例紹介集――検診から就労支援まで」にまとめられています。今後の普及啓発活動に役立て、がん対策の促進を目指すとしています。