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【医療情勢】患者申出療養制度で混合診療の枠が拡大の方向へ
目次
今年4月から「患者申出療養制度」がスタートします。同制度について概要をご紹介します
「先進医療」以外でも混合診療が可能に
通常私たちが病院にかかると保険が適用されて、医療費は1~3割の負担で治療を受けることができます。しかし、保険適用外である未承認薬などを使った治療を受けた場合は、自由診療となって全額自己負担となります。
さらに、保険適用外の治療を保険適用となる治療と一緒に受けると、保険適用の治療も含めて全額が自己負担となります。たとえば、未承認薬である卵巣がん治療薬の「オラパリブ」を使用した場合、本来なら保険が適用される費用も、全額が自己負担となります。
例外もあります。肺がんに対するNKT細胞を用いた免疫療法や早期乳がんに対する経皮的乳がんラジオ波焼灼療法など、厚生労働大臣が定めた114種類の「先進医療」に限っては、保険診療と自由診療を組み合わせる混合診療が認められています。
混合診療とは、保険診療と自由診療を組み合わせた際に、全額が自己負担とならず、保険適用となる部分に関しては医療費の一部を支払い、自由診療の部分に関しては自己負担をするというものです。「先進医療」とは、「厚生労働大臣が定める高度の医療技術を用いた療養その他の療養であって、保険給付の対象とすべきものであるか否かについて、適正な医療の効率的な提供を図る観点から評価を行うことが必要な療養」(健康保険法等の一部を改正する法律)と定められています。
患者申出療養制度では、国が「先進医療」と認めていない未承認の薬や機器を使った治療に関しても混合診療が可能となります。
身近な病院で未承認の治療が受けられるように
患者申出療養制度の大きな特徴は、保険適用までの審査期間が大幅に短くなることです。「先進医療」では、承認申請を行ってから保険適用の承認がされるまでに3~7カ月かかっていました。一方、新制度では、前例がある治療法の場合は2週間、前例のない治療法の場合は6週間で審査が行われます。ただし、前例のないもので医学的な判断が分かれる場合には期間に関係なく慎重に審議を行うことが定められています。
この制度では、多くの医療機関で未承認の薬や機器を用いる治療を実施することを目指しています。患者さんにとっては、近くの病院で保険適用外でも効果が期待できれば治療できるメリットもでてきます。ただ、混合診療が認められても医療費が安くなる訳ではありません。国立がん研究センターでは、未承認薬を用いた場合に患者さんが支払う医療費のモデルケースを紹介しています。例えば、前述のオラパリブの場合は次のとおりです。
患者申出療養制度適応前の医療費:薬1,134,000円+その他(全額自己負担)63,560円
患者申出療養制度適応時の医療費:薬1,134,000円+その他(3割負担)19,068円
http://www.ncc.go.jp/jp/about/senshiniryo/senshiniryo_01_01.html
このように、混合診療が認められたとしても未承認薬の薬剤費に変化はないため、医療費が高額であることにはあまり変わりありません。
患者申出療養制度が実施されることで、未承認の薬や機器をいち早く利用できる可能性があります。ただし、この制度を利用するためには、患者さんが自ら国に申し出を行う必要があります。担当医と相談して、薬の安全性や有効性をしっかりと理解したうえでこの制度を活用して、納得のいく治療を選択していくことが重要です。
コラム「重篤患者も治験への参加が可能に」
重篤患者も治験(プラセボ群のない実薬単群非盲検試験)への参加が可能になる「人道的見地からの治験」の開始に向け、2015年9月17日、厚生労働省が骨子案をまとめました。これは、重篤な疾患にかかっている患者さんで、既存の有効な治療法がない場合、未承認または適応外の治療薬を使用することができる制度です。この制度も、患者申出療養制度と同様、利用を希望する場合はまず主治医に相談することが大切です。実施中の治験の情報に関しては公的機関のHPに公開される予定です。
カテゴリー家族と社会のがん闘病サポート, 医療制度・社会制度の活用
タグ2016年2月
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