【医療情勢】来年1月、全国がん登録制度がスタート

公開日:2015年10月30日

 2016年1月から、全国がん登録制度が始まります。日本国内でがんと診断されたすべての人のデータを国で1つにまとめて集計・分析・管理する新しいしくみです。新しい制度でがん患者さんにどのような影響があるのでしょうか。

情報の一元管理でがん医療の質向上を期待

 残念ながら日本では1981年から死因の第一位ががんになっています。がんを全くなくすことはできなくとも、がんにかかる人やがんで亡くなる人を減らしていこうというのが「がん対策」です。そのがん対策の1つとして行われるのが全国がん登録で、これまでの「地域がん登録」で指摘されてきた課題を改善し、より有用な統計を出すためにスタートする制度です。

従来、がん登録は都道府県単位で独自に行われていました。そのため、地域によっては登録自体が行われていなかったり、都道府県をまたいで医療機関を受診した患者さんは重複して登録されたりするなど、正確な患者数さえ出すことができませんでした。全国がん登録制度開始により、すべての病院と都道府県の指定を受けた診療所は、がん患者さんに関する情報を届け出ることになります。

新しい制度では、まず個々の患者さんの氏名、がんの種類、診断の情報など26項目の個人情報が各都道府県に設置される「がん登録室」に集められます。国が指定するがん診療連携拠点病院は「院内がん登録」として一度まとめた情報を都道府県に提出します。各都道府県のがん登録室で整理された患者さん情報は、国立がん研究センターの全国がん登録データベースに入力され、最終的に国が一元管理します。

患者情報の登録の実務は、国立がん研究センターで個人情報の取り扱いなどに関する研修を受けた専門職が行います。登録のセキュリティーは厳重で、ネットワークも一般に開かれていないものを用いるなどして、万に一つも個人情報が流失しないようなしくみになっているといいます。

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出典「厚生労働省 第7回がん登録部会 参考資料1より」

すでに大阪、長崎で「がん登録」の成果

 全国がん登録制度によって正確な患者数がわかるようになるなど、従来の地域がん登録で課題とされてきたことが改善されますが、がん患者さんにとってどのようなメリットがあるのでしょうか。

まず、正確ながん患者さんの数やそれぞれのがんについての情報が明らかになることから、罹りやすいがん、再発・転移しやすい臓器や部位などが分析できるようになります。がん種別の生存率も明らかになります。さらに、医療機関によっては、院内がん登録のデータと併用することで、自施設の医療を見直し、質を向上させるきっかけになります。患者さんにとっては医療機関を選択する基準ができるようになることは好材料といえます。

これまで都道府県、地方自治体で独自のがん登録が行われ、成果が上がっています。たとえば、大阪府は1985年~89年に府内の肝がん罹患率を市町村別に分析してきました。C型肝炎の高感染地域では住民検診にC型肝炎ウイルス抗体検査が導入され、一般住民からC型肝炎ウイルス保有者を早期発見し、適切な治療につなぐ対策が講じられました。

また長崎県では、1973年~2003年の長崎市の疾患データを用いて子宮頸がんの進行度、罹患数の推移、検診による発見率などを検討した結果、25歳~34歳では浸潤がんの増加傾向が見られ、若年者を対象にした対策の必要性が指摘されました。

各地で市民向け説明会も

 来年1月から全国でがん登録が始まり、12月には各医療機関のデータが都道府県に集積されます。それからさらに1年間かけてデータを構築して、2019年1月~3月になって初めて統計結果が公表されることになります。統計の情報は一般に公開されると同時に、国や都道府県のがん対策を始め、がん検診や治療の体制づくり、がん研究などに役立てられます。

国立がん研究センターでは、「がんという手ごわい病気を克服できる社会をみんなで力を合わせてつくっていくために全国がん登録へのご理解とご協力をお願いします」と呼びかけています。

がん登録制度についての市民向けの説明会が11月3日、12月13日に全国20カ所で開かれます(http://www.ncc.go.jp/jp/information/event/2015_reg_stat_info.html)。

※掲載している情報は、記事公開時点(2015年10月30日)のものです。