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【医療情勢】国のがん対策が加速化――年内にプラン策定へ
目次
2007年に策定されたがん対策推進基本計画の中で、国は「75歳未満のがん死亡率を10年間で20%減らす」ことを目標にしました。しかし、がん検診の受診率は伸びず、喫煙率の低下も進まないまま、目標達成はむずかしくなっています。
塩崎恭久厚生労働大臣は、6月1日都内で開かれた「がんサミット」(厚生労働省主催)で、今後がん対策を強化するため、年内に「がん対策加速化プラン」を策定する考えを示しました。7月29日、国のがん対策推進協議会は都内で会合を開き、「がん対策加速化プラン」と第3期がん対策推進基本計画の策定に向けた議論を始めました。
今回は、年内に策定される「がん対策加速化プラン」の3本柱を中心に、国のがん対策の強化策を紹介します。国の施策は、医療機関や地域医療の現場に直結しています。がん対策の概要を理解し、患者支援を積極的に活用していくことが重要です。
国によるがん対策
2006年にがん対策基本法が成立し、翌07年から「がん対策推進基本計画」が始まりました。その後、2012年から「第2期がん対策推進基本計画」が始まり、現在進行中です。2017年には、「第3期がん対策推進基本計画」が始動する予定です。がん対策の歩みは次のとおりです。
- 2006年6月:がん対策基本法成立
- 2007年4月:がん対策基本法施行
- 2007年6月:がん対策推進基本計画、閣議決定
- 2012年6月:第2期がん対策推進基本計画、閣議決定
- 2013年12月:がん登録推進法成立
- 2015年6月:がん対策推進基本計画、中間評価
- 2017年6月頃:第3期がん対策推進基本計画、閣議決定
なお、「がん対策加速化プラン」は年内にも策定される動きです。
がん対策加速化プランの3本柱
がんは、日本人の死因の第1位で、今や「国民病」といえます。国はがん対策を加速するために、3つの柱となる考え方(予防、治療・研究、共生)で新たなプランを策定するとしています。
- 1.がん予防を進め、避けられるがんを避ける
- がん予防の強化策として挙げられているのは、①がん教育・普及活動の推進、②感染症などによるがん予防、③受動喫煙の防止、④早期発見、の4つです。 国民の2人に1人ががんにかかる時代、学校教育の中でがんおよびがん患者について教えることが必要不可欠とされています。第2期がん対策推進基本計画にも、「がんの教育・普及啓発」の目標が盛り込まれており、子ども達ががん予防と早期発見について理解を深めるよう、文部科学省で検討会が開かれています。
がんの主要な原因の1つである喫煙については、現在受動喫煙の防止を含めた「たばこ対策」が進行中です。2020年に開催予定の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、いっそうの強化策が推進されます。
- 2.治療・研究を推進し、死亡者数の減少につなげる
- 治療と研究の推進策として挙げられているのは、① 難治性がんの克服、② 革新的な医薬品などの開発、③ ライフステージを意識したがん対策の充実、の3つです。難治性がんとは、10万人当たりの年間患者発生数が6人未満のがんで、治療例が少なく、専門的な治療を受けられる医療機関の情報が入手しづらいのが現状です。今後、難治性がんについての情報提供と、相談体制の整備が進められる予定です。
がん患者には、そのライフステージ(小児期、思春期・若年成人世代、壮年期、高齢期)ごとに異なる問題が起きます。それぞれの身体的、精神心理的、社会的問題に応じて、がん対策が推進されます。
- 3.がんとの共生を進め、がんと共に生きることを支援する
- がんとの共生の推進策として挙げられているのは、①がんと就労の調和の推進、②緩和ケアを含む地域完結型のがん医療・介護の推進、の2つです。医療の進歩により、がん患者の生存率は高くなっていますが、就労となるとむずかしい場合も多くあります。今後、地域医療をより充実させ、「がんと共に生きる」ことへの支援体制が整備されていきます。
コラム1 がん対策推進基本計画の中間評価
がん対策推進基本計画では、2007年からの10年目標として、3つの全体目標が掲げられています。今年6月に発表された「がん対策推進基本計画の中間評価」では、それぞれの目標について、引き続き次のことが必要であるとしています。
- 目標1
- 「がんによる死亡者の減少(75歳未満の年齢調整死亡率の20%減少)」では、喫煙率減少やがん検診受診率向上など、がん対策をよりいっそう推進させることが必要。
- 目標2
- 「すべてのがん患者とその家族の苦痛の軽減と療養生活の質の維持向上」では、緩和ケアなどの提供体制の検証と整備が必要。
- 目標3
- 「がんになっても安心して暮らせる社会の構築」では、がんの教育・普及啓発、がん患者への社会的苦痛の緩和などの取り組みをよりいっそう推進することが重要。
コラム2 全国がん登録
全国がん登録とは、がん登録推進法(2013年12月成立)に基づき、2015年1月以降に「がん」と診断されたすべての患者が登録される制度です。全国の病院と都道府県が指定する診療所は、患者をがんと診断したら必ず都道府県に報告するようになります。報告する内容は、「医療機関名、日付、患者の名前と年齢、がんの進行度、放射線や化学療法、外科的治療の有無」などとされています。全国がん登録により、どのがんがどの地域に多いのかがわかるようになるほか、がん検診の効果を確認することなどにも役立つと期待されています。
カテゴリー家族と社会のがん闘病サポート, 医療制度・社会制度の活用
タグ2015年9月
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