【医療情勢】公的助成・支援を上手く利用するために(追補)

公開日:2015年05月29日

目次

 3月から3回シリーズで、がん患者さん向けの公的助成を紹介してきました。そのほかにも、対象が限定されますが、さまざまな公的制度があります。シリーズの補足として今回は、ひとり親家庭医療費助成制度、限度額適用・標準負担額減額認定、生活保護、成年後見制度、基本手当(雇用保険)、付加給付(組合健保)をご紹介します。がん治療による経済的、心理的負担軽減の対策の1つとしてご検討ください。

医療費が高額になった時に利用できる「ひとり親家庭医療費助成制度」

 子育て中にがんにかかった場合、特にひとり親家庭では経済的に逼迫することが考えられます。各自治体にひとり親家庭の医療費を助成する制度があり、それぞれ利用条件が異なるため、各市区町村担当課にお問い合わせください。

【対象者】
子どもと養育者(ひとり親家庭の母親または父親、両親に代わって養育している人)

【対象期間】
子どもが18歳になってから最初の3月31日を迎えるまで(障害がある場合は20歳未満)

【助成範囲(東京都の場合)】
公的医療保険の自己負担分から一部負担金(表)を差し引いた額が助成されます。(住民税非課税世帯は自己負担分を助成)ただし、入院時食事療養・生活療養標準負担額は助成されません。

ひとり親家庭等医療費助成制度(マル親)一部負担金
マル親一部負担金 一月あたりの自己負担上限額
住民税課税者 通院 1割 12,000円
入院 1割 44,400円
住民税非課税者 通院 負担なし
入院 負担なし

東京都ホームページより

【申請方法】
市区町村の担当窓口に申請します。

医療費が高額になった時に利用できる「限度額適用・標準負担額減額認定」

今年3月号の「公的助成・支援を上手く利用するためにⅠ」で、がん治療費の自己負担額が高くなった場合、医療機関の窓口で「限度額適用認定証」を予め提示すると、支払いを自己負担限度額に留めることができることを紹介しました(/medical_support/system/51990/)。「限度額適用・標準負担額減額認定」は、非課税世帯の人の医療費自己負担額がさらに軽減される制度です。

【利用条件】
・世帯全員が住民税非課税
・年金収入80万円以下
・老齢福祉年金を受給している人

【申請方法】
 加入する公的医療保険の窓口に申請します。

収入に不安がある時に利用できる「生活保護」

 がんの治療が長引き、治療費が高額になって生活に困った時、生活保護制度を利用することもできます。この制度は、生活に困窮する人に国が「最低限度の生活を保障し、その自立を助長すること」を目的としています。生活保護を受けると、健康保険が適用される医療費の自己負担額がゼロになります。ただし、差額ベッド代や先進医療費などは、自己負担になることが多く、事前に確認しておきましょう。

【適用条件】
・資産(預貯金、生活に利用していない土地・家屋など)がない
・働く能力がない
・年金や手当を受けていない
・親族から援助が受けられない

【保護の内容】
・生活扶助(食費・被服費・光熱費など)
・住宅扶助(アパートなどの家賃)
・教育扶助(義務教育を受けるために必要な学用品費)
・医療扶助(医療サービスの費用)
・介護扶助(介護サービスの費用)
・出産扶助(出産費用)
・生業扶助(就労に必要な技能の習得等にかかる費用)
・葬祭扶助(葬祭費用)

【申請窓口】
住まいのある地域の福祉事務所に申請します。

生活や身体に支障がある時に利用できる「成年後見制度」

 判断能力が十分でない人が、不利益を被らないように家庭裁判所に申し立てをして、援助してくれる人を付けてもらう制度です。がんの症状の進行に伴い、自分で判断することがむずかしくなることが想定される場合、利用することができます。

【対象(がん患者の場合)】
・自分で判断できない状態が想定される人
・身寄りがない人

【申請窓口】
 住まいのある地域の家庭裁判所に申請します。

コラム「任意後見制度」

 任意後見制度は、本人が判断能力のあるうちに、自分で選んだ代理人(任意後見人)に、自分の生活、療養看護、財産管理に関する事務について代理権を与える契約(任意後見契約)を公証人の作成する公正証書で結んでおくというものです。

本人の判断能力が低下した後、任意後見人が任意後見契約で決めた事務について、家庭裁判所が選任する「任意後見監督人」の監督のもと本人を代理して契約などをすることによって、本人の意思に従った適切な保護・支援をすることが可能になります。(法務省ホームページより)

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失業した時に利用できる「基本手当」

基本手当(雇用保険)については、2013年2月号「【最新医療】がんと雇用保険~長期療養でも失業給付を受給できる~」で詳しく紹介しています。ここで掲載している基本手当日額の上限額は、2014年8月1日に変更され、次のようになっています。

基本手当日額の上限額

30歳未満 6,390円
30歳以上45歳未満 7,100円
45歳以上60歳未満 7,805円
45歳以上60歳未満 7,805円
60歳以上65歳未満 6,709円

(平成26年8月1日現在)

コラム「付加給付(組合健保)」

 今年3月号「【医療情勢】公的助成・支援を上手く利用するために I」で、がんの治療で自己負担が高額になった時に利用できる高額療養費制度を紹介しました。付加給付とは、それに上乗せする制度で、大企業などの健康保険組合(組合健保)が1カ月の医療費の自己負担限度額を定め、限度額を超えた金額を払い戻します。 付加給付の金額は健康保険組合によって異なりますが、厚生労働省は1人1カ月の自己負担額を25,000円と指導しています。詳しくは加入する健康保険組合にお問い合わせください。

※掲載している情報は、記事公開時点のものです。