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【医療情勢】公的助成・支援を上手く利用するために II
目次
先月から、がん患者さん向けの公的助成について紹介しています。2回目は、収入に不安がある時に利用できる制度、「傷病手当金」「障害年金」「障害手当金(厚生年金)」を取り上げます。あまり知られていない制度ですが、経済的に困った時のために知っておくと役立ちます。
収入に不安がある時に利用する「傷病手当金」
病気で仕事を休んだ時、一定の収入を保障する制度で、就業者が対象になります。ただし、すべての健康保険にあるわけではなく、例えば市区町村の国民健康保険にはこの制度がありません。
【対象者】
・全国健康保険協会(協会けんぽ)、健康保険組合の被保険者
・共済組合の加入者
・国民健康保険組合の組合員
※組合によって異なるので確認する必要があります。
【支給内容】
・休職中、給料(日額)の3分の2が支給される
・支給開始日(欠勤4日目以降)から最長1年6カ月間支給される
【支給要件】
・病気(がん)で療養中
・仕事を3日以上連続して欠勤(支給は「待機3日間」のあと4日目以降)
・給料、障害・老齢年金などが支給されない
・療養中の給料が傷病手当金より少ない(差額が支給される)
※すでに退職した人でも、在職中に加入していた保険から傷病手当金を受け取ることができる場合があります。これには退職前に傷病手当金を受け取る条件を満たしていることが必要です。
【申請方法】
加入する医療保険の窓口に、傷病手当金支給申請書を提出します。申請書には、医師の意見書と勤務先の証明が必要となります。
コラム「社会的治癒」
Q 再発した場合、以前一度受給した傷病手当金を再び受給することはできますか。
A 同一の病気の場合、傷病手当金の支給期間は支給開始から最長1年6カ月間となっています。再発した場合については、健康保険法では「社会的治癒」という考え方で判断します。すなわち、再発であっても一定期間社会復帰を果たした場合は「社会的治癒」となります。これは医学的な治癒の概念とは異なり、社会的には「治癒していた」と見なして、再発を別の病気として扱い、傷病手当金が支給されることがあります。ケースバイケースですから、加入している医療保険の窓口に相談してみましょう。
収入に不安がある時に利用する「障害年金」
病気が原因で、重い障害を持つ65歳未満の人に年金を支給する制度です。加入する年金保険によって、障害基礎年金(国民年金)、障害厚生年金(厚生年金)、障害共済年金(共済年金)に分かれます。
【支給要件】
・障害の原因となった疾病の初診日が65歳未満であること
・初診日時点で年金に加入していること
・初診日から1年6カ月経った時点で、障害年金の等級に該当すること
・初診日の前日までに一定期間の保険料を納付していること
【障害年金の等級】
1級から3級まであり、1級と2級は日常生活の能力の低下が基準になり、3級は労働能力の低下が問われます。退職した人も、初診日に会社員または公務員であれば障害厚生年金を受け取ることができます。障害年金の等級は身体障害者手帳の等級とは異なります。
悪性新生物(がん)による障害の程度を以下、一般状態区分表で示します。また、悪性新生物による障害の程度は、基本的には認定基準に掲げられている障害の状態を考慮するものですが、各等級に相当すると認められるものを一部例示します。
区 分 | 一 般 状 態 |
---|---|
ア | 無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの |
イ | 軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの。例えば、軽い家事、事務など |
ウ | 歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の 50%以上は起居しているもの |
エ | 身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の 50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの |
オ | 身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの |
障害の程度 | 障 害 の 状 態 |
---|---|
一級 | 著しい衰弱又は障害のため、一般状態区分表のオに該当するもの |
二級 | 衰弱又は障害のため、一般状態区分表のエ又はウに該当するもの |
三級 | 著しい全身倦怠のため、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの |
(国民年金機構ホームページより)
【年金額】
年額、1級約99万円、2級約79万円。扶養する子どもがいる場合は、年額約22万を加算。3級は、最低保障額が約59万円。
【申請方法】
障害基礎年金は市区町村役場の国民年金の窓口、障害厚生年金は社会保険事務所、障害共済年金は共済組合に申請します。
収入に不安がある時に利用する「障害手当金(厚生年金)」
障害手当金は、厚生年金の加入者が対象で、障害年金の対象にならない軽度の障害が残った場合、就業者を対象に一度だけ支給されます。共済年金には「障害一時金」の制度があります。
【支給要件】
・障害の原因となった疾病の初診日の時点で年金に加入していること
・障害等級3級より軽い障害が残っている人
・年金保険料を一定期間払っていること
まずは相談してみましょう
がん患者さんの中には、経済的な理由で治療を断念する人もいます。高額療養費制度を利用しても治療費が払えない時は、病院の患者相談室やがん診療連携拠点病院の患者支援センターなどに相談してみましょう。
なお、治療費がかかって子どもの学費が払えない場合は、都道府県社会福祉協議会の教育支援資金や日本学生支援機構の奨学金などを利用する方法があります。
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タグ2015年4月
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