【医療情勢】公的助成・支援を上手く利用するために I

公開日:2015年03月02日

目次

 再発・転移がんの治療が長期化すると、医療費が増大し、患者さんの生活は圧迫されます。患者さんやご家族の経済的負担をできるだけ軽減するために、国や自治体はさまざまな助成制度を整えています。各種制度を上手く利用すれば治療に専念することも可能になります。

 今月から3回に分けて、がん患者さん向けの公的助成について紹介します。公的制度は定期的に見直され、改定が行われています。たとえば、医療保険の制度の1つである高額療養費制度は今年1月1日に改正されました。また、年齢によって利用できる制度が異なったりします。これまでに公的助成を受けた経験のある方も、その都度確認する必要があります。

医療ソーシャルワーカーに相談を

 助成を受けるためには所定の手続きが必要となります。専門的な知識がないとなかなか理解しにくいこともあり、制度を確実に利用するためには、信頼できる相談窓口(市区町村の相談窓口、病院の相談窓口、がん相談支援センターなど)に問い合わせるか、専門家(医療ソーシャルワーカー:MSW)に相談するとよいでしょう。

 保健医療機関に所属するMSWは、社会福祉の立場から患者さんやその家族の方々が抱える経済的・心理的・社会的問題の解決、調整を援助し、社会復帰の促進を図る業務を行います。公的援助を受ける際には心強い相談相手となります。MSWの業務には次のようなものがあります。

 ・療養中の心理的・社会的問題の解決、調整援助
 ・退院援助
 ・社会復帰援助
 ・受診・受療援助
 ・経済的問題の解決、調整援助
 ・地域活動

 近年は、医療と福祉の連携強化が求められている状況で、病院・保健所だけでなく老人保健施設、在宅介護支援センターなどの介護施設にもMSWの業務の範囲が広がっています。

がん患者さんが利用できる公的制度

 がん患者さんが抱えている問題や状況に応じてさまざまな公的支援・助成の制度があります。

 ・がんの治療費が払えない時⇒公的医療費助成制度、自己負担減免制度(国民健康保険)
 ・がんの治療費、介護の費用が高額になった時⇒高額療養費制度、高額医療・高額介護合算制度、付加給付(組合健保)
 ・治療費や生活費を借りたい時⇒高額療養費貸付制度、生活福祉資金貸付制度
 ・がんで休職した時⇒傷病手当金
 ・がんで失業した時⇒基本手当(雇用保険)
 ・がんで障害が残った時⇒障害年金

医療費が高額になった時に利用する「高額療養費制度」

 患者さんは、医療保険が適用される医療については、費用の1~3割を負担します。がんの治療で自己負担分が高額になった場合、高額療養費制度を利用することができます。高額療養費制度については、当サイト2014年8月号(【医療情勢】がん治療における治療費の軽減 現状の医療制度をうまく活用する。)で詳しく紹介しています。

●高額療養費制度の見直し
高額療養費の自己負担限度額について、平成27年1月診療分から、70歳未満の所得区分がこれまでの3区分から5区分に細分化されています。患者さんの支払い能力に応じた負担を求めるのがねらいです。

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厚生労働省ホームページより引用

●限度額適用認定証の交付申請
高額療養費制度では、患者さんが病院に医療費の自己負担分を払い、後日、医療保険から限度額を超えた分の費用を払い戻してもらいます。申請してから実際に費用を受け取るのは約3カ月後です。ひと月に支払う医療費の合計が限度額を超えそうな時は、加入している全国健康保険協会や健康保険組合に「限度額適用認定証」をあらかじめ発行してもらい、病院の窓口で提示すれば、支払いを自己負担限度額に留めることができます。

「限度額適用認定証」は、70歳未満で課税世帯の方が対象です。70歳未満で非課税世帯の方は、「限度額適用・標準負担額減額認定証」の交付を申請します。また、70歳以上で課税世帯の方は、「高齢受給者証」または「後期高齢者医療保険者証」を提示すれば、窓口での支払いを限度額に留めることができます。

介護も併せて助成する高額医療・高額介護合算制度

 医療、介護サービスの両方を受けている方の負担を減らすために、2008年4月から始まったのが高額医療・高額介護合算制度です。医療保険の高額療養費制度と同様に、介護保険でも高額介護(介護予防)サービス費制度が設けられています。

しかし、これらの2つの制度をそれぞれ利用しても、高額の医療と介護をともに受けた場合、大きな負担が生じます。そこで、医療、介護の両方にかかった費用について、1年間の負担の上限を決めたのが高額医療・高額介護合算制度です。

医療保険と、介護保険の両方を利用している方が対象で、1年間(8月1日~翌年7月末日)にかかった医療費、介護費の自己負担(保険適用のもの)が限度額を超えた場合に利用できます。限度額は、年額56万円を基本とし、医療保険各制度や被保険者の所得・年齢区分ごとの自己負担限度額 を踏まえて細かく設定されています。

世帯全体での医療、介護費の合計額が対象で(一定の条件があります)、各市区町村役場の介護保険の窓口、加入する医療保険の窓口で手続きができます。

【参考】厚生労働省ホームページ(PDF:328KB)

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