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【医療情勢】各地で広がる先端医療向け融資制度
目次
利子相当額を自治体が負担してくれる
がんの治療費を軽減するには、高額療養費制度や傷病手当など公的保険による手当がよく活用されます。しかし、再発や転移で治療費の出費がかさむと、それだけでは十分でないと感じるケースもあることでしょう。特に、樹状細胞や腫瘍抗原ペプチドを用いたがんワクチン療法など、厚生労働省が保険外併用を認める先進医療を受ける場合は公的保険がきかないため、患者さんにとって大きな負担となります。
そうした時、選択肢の1つとして知っておきたいのが、いくつかの自治体で実施している「先進医療専用ローン」や「がん先進医療費利子補給制度」(名称は制度による異なる)です。がん先進医療を行う患者さん本人や、その親族が治療費のための融資を受けやすくする制度として、ここ数年、徐々に増えてきました。多くは、自治体が地元の金融機関と提携して提供されています。
東京豊島区や鳥取、愛知、群馬などで実施
例えば東京では、豊島区が巣鴨信用金庫と東京信用金庫と提携し、先進医療を受けるための専用ローンを2013年6月に開始する予定です。がん先進医療を受ける患者さんや、その家族が対象で、1年以上、区に在住し、住民税等の滞納がなく、一定の所得以下であることが条件になる見込みです。融資の上限額は300万円以内で、利子相当額を区が助成する制度になるとされています。
また、鳥取県では「鳥取県がん先進医療費利子補給制度」によって、鳥取信用金庫、倉吉信用金庫などの県内の金融機関が「鳥取県がん先進医療ローン」をすでに始めています。対象は、がん先進医療を受ける本人または3親等以内の親族。いずれも1年以上、県に在住で税金の滞納がなく、課税所得が600万円以下の世帯であることが条件になっています。
融資額は最大300万円で、年利固定6%(保障料を含む)。その6%の利子相当額は7年間、県が助成します。つまり、先進治療のための融資300万円を、7年間は実質金利0円で受けられるのです。県外の医療機関で受けた治療も対象になっている点は、全国でも珍しいとされています。
助成を受けるには事前の申請が必要で、主に次のような流れになります。
先進医療専用ローンや利子補給を受ける流れ(鳥取県の例)
先進医療を行う医療機関が発行する「治療実施計画書」に、住民票等を添えて県に提出
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県から「承認決定通知書」を受け取り、金融機関に提出(ローン申し込み)
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先進治療を受け、ローンを支払う
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金融機関が発行する「利子支払証明書」と、医療機関が発行する「治療実施証明書」を県に提出
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金利分の助成額の受け取り
治療法を特化したローンや利子補給制度も
先進医療の中でも、特定の治療法に限定したローンや、助成制度を設けている自治体もあります。
名古屋市は愛知銀行や中京銀行などと提携し、それぞれの金融機関で「陽子線専用ローン」を用意し、融資額は最大300万円(変動金利型 年3.20%)。利子相当額は「名古屋市陽子線治療資金利子補給制度」によって市が負担します。
対象となるのは、名古屋陽子線治療センターで陽子線治療を受ける患者さんの親族です。借入時の年齢が満20歳以上65歳以下で、完済時の年齢が満70歳未満。なおかつ、前年度の税込年収が200万円以上などの条件があります。
また、群馬県では重粒子線に特化した専用ローンと、利子補給制度を設けています。県が群馬銀行などと提携し、「重粒子線治療ローン」を用意。「群馬大学重粒子線医学センター」で重粒子線治療費を受ける患者さんや、その親族は最大314万円(技術料の上限)、年利固定3.9%で融資を受けられます。こちらも、利子相当額は県が負担します。
鹿児島県では県内の「メディポリス医学研究財団 がん粒子線治療研究センター」で粒子線治療を受ける患者さんや、その親族に向けた専用ローンと、利子補給制度があります。 制度の適用になる治療方法は限られてはいますが、いずれも難治性のがんへの効果が期待されている治療法です。制度の利用は、一考の余地があると言えそうです。
福井県では先進医療を受けるための交通費が助成される
ほかにも福井県では、「福井県立病院の陽子線がん治療センター」で陽子線治療を受ける患者さんや、その家族向けに、さまざまな負担軽減制度を設けています。治療費を借入れた際の利子のほか、治療費・通院の交通費を助成する制度もあるため、県内でも陽子線がん治療センターから遠いところに住む患者さん等には利用価値が高い制度になっています。
なお、いずれの制度も申請には書類の準備などが必要です。また、融資を受ける際には審査があり、その結果によっては連帯保証人が必要な場合も出てきます。まずは、各自治体の福祉保健局等に問い合わせてみるとよいでしょう。
カテゴリー家族と社会のがん闘病サポート, 医療制度・社会制度の活用
タグ2013年4月
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