【医療情勢】確定申告に向けて今から準備~医療費の一部が戻ってくる「医療費控除」を申請しよう~

公開日:2012年12月03日

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還付金が戻るうえ、翌年の税金が安くなることもある

医療費の負担を少しでも抑えたいというのは、がんの患者さんに共通した願いです。さまざまな制度がありますが、毎年、確定申告の際に申請できる「医療費控除」は、ぜひ活用したいものです。還付金そのものは高額ではありませんが、課税所得が少なくなるため、翌年の所得税、住民税、健康保険料などが安くなる可能性があります。

医療費控除の対象となるのは、前年1年間(1月1日~12月31日)に支払った医療費から「高額療養費」など公の給付金や民間保険の保険金を差し引いて、残りの額が10万円以上だったケース(課税総所得が200万円未満の方は、その5%以上)。最高200万円を上限に所得税から控除され、還付金を得ることができます。

生計を一にする家族がいれば、医療費を合算して申請できます。ここで言う「生計を一にする家族」は、同居しているかどうかは関係ありません。単身赴任や進学などで別居していても、生活費や学資金などの送金があれば、医療費の合算が認められます。一家の医療費の合計金額が10万円を超えていれば、条件を満たします。
つまり、下記の計算式になります。
(前年に支払った家族の医療費の合計額)-A-B=医療費控除額(上限200万円)
※A…公的保険から支給される高額療養費・家族療養費・出産育児一時金など。
あるいは、民間生命保険で支給される入院費給付金など。
※B…10万円(課税総所得が200万円未満の人は、その5%未満の額)

タクシー代は控除対象だが、自家用車のガソリン代は不可

注意したいのは「医療費と認められる範囲」です。原則として”治療目的は認められ、予防目的は不可”となっていますが、意外と幅広い範囲にわたっています。

例えば、通院のために支払ったタクシー代や電車代などの交通費。自家用車のガソリンは不可ですが、公共の交通機関の運賃は控除が認められています。また、医師が必要と認めれば、個室への入院代(差額ベッド代)や、病院から支給される食費代も対象。かぜ薬など薬局で購入した市販薬の代金、ヘルパーなどに療養上の世話をしてもらった対価も認められます。

場合によっては、先進医療の費用や、適応外または未承認の抗がん剤の薬剤費も対象になりますが、税務署の窓口で必要な治療だったかどうかが判断されます。
なお、通常は予防のための人間ドックや健康診断は不可ですが、健診等によってがんなど重大な病気が発見され、引き続き治療を行った場合は別です。治療の一部と見なされ、その健診費用も医療費控除の対象になります。(詳細下表参照)

●医師、歯科医師による診療や治療の対価
●治療のためのあんまマッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師などによる施術の対価
●助産師による分べんの介助の対価
●医師等による一定の特定保健指導の対価
●介護福祉士等による喀痰吸引等の対価
●医師等による診療等を受けるために直接必要なもので、次のような費用
・通院費
・入院の対価として支払う部屋代や食事代
・医師等の送迎費
  ・医療用器具の購入や賃借のための費用
・義手、義足、松葉づえや義歯等の購入の費用
・身体障害者福祉法などの規定により、都道府県や市町村に納付する費用のうち、医師等の診療費用等に当たるもの
・6か月以上寝たきりの人のおむつ代で、その人の治療をしている医師が発行した証明書(おむつ使用証明書)のあるもの
●介護保険制度の下で提供される一定の施設・居宅サービスの対価
●容姿を美化し、容ぼうを変えるなどの目的で行った整形手術の費用
●健康診断の費用
●自家用車で通院する場合のガソリン代や駐車料金
●治療を受けるために直接必要としない、近視、遠視のための眼鏡や補聴器等の購入の費用
●保健師や看護師、准看護師による療養上の世話の対価 ●左記以外で、療養上の世話を受けるために特に依頼した人に支払う療養上の世話の対価 ●親族に支払う療養上の世話の対価
●治療や療養に必要な医薬品の購入の対価 ●かぜの治療のために使用した一般的な医療品の購入費用
●医師等の処方や指示により、医師等による診療等を受けるため直接必要なものとして購入する医薬品の購入費用
●疾病の予防又は健康増進のために供されるものの購入の費用
●病院、診療所又は助産所などへ収容されるための人的役務の提供の対価 ●病状からみて急を要する場合に病院に収容されるための費用 ●親族などから人的役務の提供を受けたことに対し支払う謝礼

出典:国税庁「暮らしの税情報」(平成24年度版)を元に作成

年末には領収書を集めて準備を開始しよう

医療控除の申請窓口は最寄りの税務署です。受付期間は毎年2月16日から3月15日までですが、5年以内であればいつでもさかのぼって還付申告することができます。必要書類は、以下の3つです。

・医療費控除に関する事項を記載した「確定申告書」
・1年間の医療費の領収書(電車代など以外は原則としてすべて領収書が必要)
・給与所得の源泉徴収票(給与所得者のみ)

まずは、家族全員分の医療費の領収書を集め、通院などで使った公共の交通機関の運賃も計算してみましょう。先の計算式に当てはめて10万円を超えるようなら確定申告書を準備しましょう。税務署で配布しているほか、インターネットでもダウンロードできます。
記入後は、税務署の窓口に持参するか、郵送、またはインターネット経由で申告(e-Tax)します。

覚えておきたいのは、”家族の中でもっとも収入が多い人が申告したほうが得”ということです。所得税の税率は所得額に応じて5~40%まで6段階がありますが、税率が高い人ほど控除による還付金額も多くなります。

詳しい申告方法は、税務署に訪ねると丁寧に教えてもらうことができます。ただ、例年、確定申告の締め切り間際は、税務署が非常に混み合うため、早めに準備することをおすすめします。年末には1年間の医療費が決まるので、その時点で早々と領収書を集め、2月中旬になったらすぐ税務署に相談するとスムーズでしょう。

※掲載している情報は、記事公開時点のものです。