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【最新医療】がん治療技術の早期承認・適応に向けて~「先進医療」「高度医療」の一本化が、がん患者にもたらすもの~
目次
先進医療の対象になるがん治療とは
日本の医療制度は、保険適応の治療と適応外の治療を併用する「混合診療」が禁じられています。そのため、入院または通院している医療機関で保険適応外の治療を受けると、検査や入院費などもすべて自己負担になります。ただ、例外的に「先進医療制度」や「高度医療制度」として認定された治療は混合診療が認められていました。2012年10月、この2つの制度は一本化され、がん治療にも少なからず変化が訪れようとしています。
ここで「先進医療」と「高度医療」の役割について、簡単におさらいしておきましょう。先進医療は、薬事法の承認が済んでいる医薬品や医療機器を使用する最先端技術が対象です。安全性や有効性、将来の保険適応の必要性、安全に実施するための施設基準などを検討するために、混合診療が認められていました。
がん治療では、重粒子線や陽子線といった特殊な放射線治療、あるいは樹状細胞および腫瘍抗原ペプチドを用いたがんワクチン療法などが該当します。
一方、高度医療は、使用する薬剤や医療機器が薬事法未承認の最先端技術が対象です。混合診療を認めることは、薬事法の承認が妥当かどうかを検討する臨床試験としての目的が含まれています。肺がんのペメトレキセドとシスプラチンの併用療法、乳がん術後のホルモン療法とTS-1の併用療法などのほか、同年9月には、標準治療を終えた頭頸部扁平上皮がんの免疫細胞治療も、高度医療として認定されています。
従来の高度医療が受けやすくなる可能性
では、先進医療・高度医療の一本化によって、患者さんにはどのような影響があるのでしょうか? まず新しい制度では、先進医療・高度医療が「先進医療A」と「先進医療B」に再分類されます。
Aは、薬事法の承認が済んでいる医薬品や医療機器を使用し、ある程度有効性が明らかなもので、従来の先進医療は主にここへ移ります。それに対し、Bは未承認・適応外の薬剤などを使用する技術。またはそれらを使用しない技術でも、安全性、有効性等の面から、特に重点的な観察・評価が必要なものが該当します。従来の高度医療の多くはこちらに移ります。
厚生労働省は、Bに該当する技術として、具体的に以下の5つあげています。
・がん免疫療法等の免疫療法を活用した治療技術
・自家移植、同種・異種移植(臓器移植・組織移植)
・幹細胞を用いる治療技術
・遺伝子、ウイルス操作を用いる治療技術
・ロボットを用いる手術
先進医療を受けられる病院が増える
制度改正によって、先進医療を実施する医療機関は増加する可能性があります。 先進医療Aは、厚生労働省の「先進医療専門家会議」で新たな施設基準を設け、その基準をクリアした医療機関であれば先進医療が受けられるようになります。一方の先進医療Bは、医療機関ごとに個別に実施の可否が審査されます。Aに比べて厳しい基準になっていますが、従来制度よりは緩められています。
従来の先進医療では、実施申請をするために数例以上の臨床使用実績が必要でしたが、新しい制度下では一定の条件のもとで不要になります。具体的には、早期・探索的臨床試験拠点や臨床研究中核病院等などで、未承認・適応外の薬剤などを用いた先進医療を有効かつ安全に実施できると確認された場合です。これまで臨床実績がなくて諦めていた医療機関でも、先進医療を受けられる可能性が広がりました。
これまでの先進医療認定が外れる医療技術も
なお、実施に当たってはA、Bどちらの技術も専門家による審査を前提としています。これまでの制度でも専門家による審査は行われていましたが、先進医療は厚労省保険局医療課、高度医療は医政局研究開発振興課と管轄が分かれていたため、時間がかかることが指摘されていました。一本化によって、事務局も両方の部署が連携した「先進医療専門家会議」に統合され、保険適応の迅速化が期待されています。
先進医療Bについては同会議の下部組織である「技術審査部会」が技術的妥当性や試験実施計画等を審議し、技術的妥当性が認められれば先進医療会議に戻して審査します。先進医療専門家会議の審査では、(1)「保険収載する」、(2)「先進医療として継続する」、(3)「先進医療告示から取り消す」のいずれかの結論を出すとしています。がん免疫療法なども、保険収載を検討される道が近づいたと考えることもできるでしょう。
先進医療Bについては同会議の下部組織である「技術審査部会」が技術的妥当性や試験実施計画等を審議し、技術的妥当性が認められれば先進医療会議に戻して審査します。先進医療専門家会議の審査では、(1)「保険収載する」、(2)「先進医療として継続する」、(3)「先進医療告示から取り消す」のいずれかの結論を出すとしています。がん免疫療法なども、保険収載を検討される道が近づいたと考えることもできるでしょう。
先進医療A、Bの具体的な振り分けは、11月を目途に先進医療専門家会議で議論されることになっています。また厚労省は、2016年3月末までを移行期間として、先進医療から外れた医療技術も、暫定的に先進医療Aとして実施することを認めており、これまでの治療が急に打ち切られることを防いでいます。
なお、民間保険会社には先進医療を受ける際に給付金が降りる「がん先進医療特約」などの商品があります。これまで高度医療は対象外とするものがありましたが、今後の対応は、先進医療A、Bの振り分けが確定した時点で各保険会社から発表される見通しです。
カテゴリー家族と社会のがん闘病サポート, 医療制度・社会制度の活用
タグ2012年11月
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