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【トピックス】薬局の管理栄養士が在宅患者さんを「訪問栄養指導」
目次
約90人の管理栄養士が栄養面から健康をサポート
がん治療の効果やQOL(生活の質)に大きく影響する、患者さんの栄養状態。栄養が十分にとれていないと、体力・免疫力が落ちて感染症などにかかりやすくなります。入院中は病院食で栄養がサポートされますが、退院後は患者さんの状態や家族構成など、さまざまな要因で食事・栄養が十分にとれないこともあります。
首都圏を中心に約150店の保険調剤薬局を展開する薬樹株式会社では、約90名の管理栄養士が店頭で食事・栄養に関する相談にのるほか、患者さんの自宅に出向いて行う「訪問栄養指導」に取り組んでいます。
薬局の管理栄養士の訪問栄養指導は、保険制度の上では介護保険の「(管理栄養士が行う)居宅療養管理指導」にも、医療保険の「在宅患者訪問栄養食事指導」にもまだ認められていません。
現時点では同社の管理栄養士が基本的に無料で在宅の患者さんを毎月訪問し、健康状態の確認、食事面のアドバイスを行っています。30分という短い滞在時間で不足している栄養を見極め、患者さんが食べられる食材や調理方法を判断し、状況に応じた提案をします。
自宅療養では、特に低栄養に気を付ける必要があります。低栄養とは、エネルギーや蛋白質が不足した状態を指します。低栄養になると、筋肉量や骨量が減少したり、気力が低下したりします。また、免疫力が低下して感染症にかかりやすくなり、回復しにくくなります。管理栄養士が介入する意義は低栄養の防止にあるといっても過言ではありません。
低栄養予防のためにさまざまな工夫
同社の管理栄養士の1人、訪問薬樹薬局保土ケ谷の松下由佳子さんは患者さんの状態や家庭環境を把握しながら食事についてさまざまな提案をしています。薬の副作用などで食が細くなった人には、できるだけ高栄養の食品や、喉を通りやすいゼリー状の栄養補助食品などの利用を勧めます。味覚異常があると、肉や魚の匂いに敏感に反応してしまうことがあるので、レモンなど柑橘系の果物で香りづけなどの工夫を勧めます。
自宅の庭で育てている野菜を食べたい、と希望する乳がん患者さんに、ご主人でも料理しやすく、食べやすい野菜料理のレシピを提案したところ、少しずつ口にしてもらうことができたといいます。
食事の後で嘔吐するのが怖くて食べられないという患者さんには、心理的な要因を考慮した栄養指導が必要になります。余命の告知を受けて気持ちが落ち込み、食べる気力をなくした患者さんもいました。それでも松下さんは、ご家族と一緒にスープを作るなどフォローし続けました。
その結果、患者さんは「卵って栄養価が高いんだよね」と、自分から進んで食事の話をするようになりました。「できるだけ早い段階で患者さんやご家族が低栄養の予防の重要性を認識し、体力があるうちにしっかり栄養をつけてもらうようにしています。患者さんが食事を通じて明るい気持ちになるのを見ると、管理栄養士として関わることができてよかったと思います」と松下さんは話してくださいました。
主治医、看護師、薬剤師などとも連携
患者さんがなんらかの症状を訴えた時、それが病気のせいなのか、薬の副作用のせいなのか、それとも栄養状態のせいなのか、評価に迷う場合があります。松下さんは、常に主治医や看護師などとの連携を意識しながら在宅患者さんの栄養指導を行っています。「他の職種と連携することで、患者さんの状態を正確に評価しやすくなり、より効果的な栄養指導が可能になります」
松下さんが患者さんを訪問するのは月1回ですが、毎週訪問する同店の薬剤師や、訪問介護のヘルパーなどと情報共有することで患者さんの微妙な状態が把握できます。逆に、患者さんの栄養状態から気づいたことを主治医や看護師に報告することもあります。
松下さんによると、同社が開催する医療従事者向けの講座を通じて、ケアマネジャーや理学療法士(PT)、作業療法士(OT)から栄養に関する相談を受ける機会が増えたといいます。PTやOTから依頼を受けて、患者さんに栄養食品について助言をしたり、訪問リハビリテーションに同行して患者さんの食事についてヒアリングしたりすることもあります。松下さんは多職種との連携が地域で少しずつ広がってきていることを実感しています。
とはいえ、どの薬局に管理栄養士がいて、相談できるのか一般にはまだ知られていないのが現状です。「まずは市区町村の介護保険課などに相談することをお勧めします。医療と介護をつなぐキーパーソンであるケアマネジャーも心強い存在です」と松下さんはアドバイスしています。
在宅患者さんを訪問して栄養指導する、薬樹株式会社訪問薬樹薬局保土ケ谷店の管理栄養士の松下由佳子さん(中央)
カテゴリー家族と社会のがん闘病サポート, がん患者さんの支援・サービス
タグ2018年8月
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