【QOL(生活の質)】がん患者さんのための「薬剤師」活用法

公開日:2015年03月31日

目次

 患者さんを支える医療チームに不可欠なのが薬剤師です。しかし、その役割があまり知られていません。よりよい薬物治療を受けるためにも基本的な「薬剤師」活用法を理解しておきましょう。

がん治療における薬剤師の役割

 DDS(ドラッグデリバリーシステム;薬物送達システム)の発達により、化学療法は入院や外来通院による治療だけでなく、経口服薬による在宅での治療も増えてきました。DDSとは、薬物投与経路の最適化を図り、抗がん剤など医薬品の効果をより向上させるための技術です。これにより薬物の治療効果を高めることはもちろん、副作用の軽減も期待できます。

薬を処方するのは主治医ですが、調剤を行うのは薬剤師です。調剤とは、単純に処方箋通りに医薬品を揃えることではありません。処方が医学的に妥当であるかの確認、医薬品の相互作用や重複投与の防止など情報提供を含めた患者さんへの適切な服薬指導、さらに副作用の予防や早期発見と対策など、さまざまな業務を包括したものなのです。

このように重要な役割を果たしている薬剤師ですが、患者さんと接する機会が少ないためか、顔の見えない存在でした。しかし、最近は薬剤師が患者さんと面談し、薬の説明を行う医療施設が増えています。また、こうした専門性を生かした「薬剤師外来」を設置する医療機関も少しずつ増えています。特にがん治療では、化学療法で薬剤師がその専門性を発揮しており、中にはより専門性の高い「がん専門薬剤師」もいます。

専門性の高い薬剤師と薬剤師外来

 名古屋大学医学部付属病院、独立行政法人国立病院機構呉医療センター、公益社団法人鹿児島共済会南風病院など、全国各地には薬剤師外来を開設している医療施設があります。その1つである国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)は、2009年に薬剤師外来を開設。そのきっかけは、自宅で経口抗がん剤を服用していた患者さんが、副作用による下痢で脱水症状となって緊急入院するケースが重なり、薬への理解を深める必要があったためとされています。

薬剤師外来では経口抗がん剤治療を行う患者さんへの服薬指導を行い、次回以降の受診時からは医師の診察の前に薬剤師が問診をしてその情報を医師に伝えると同時に副作用に対する薬物治療の提案等も行っています。

抗がん剤で重い副作用に苦しんでいる患者さんは、さらに強い副作用のある薬を新たに使うと聞くと治療をためらいますが、薬剤師外来でがん専門薬剤師から副作用が生じた場合の対応などの説明を受けると、そのためらいも和らぐといいます。

どの時期に、どのような副作用が出現する可能性があるのか。副作用が出現した際には、具体的にどのように対処すればいいのか。事前にこうした情報をわかりやすく聞いていれば、患者さんとその家族は安心して薬物治療に臨めるでしょう。同院では薬剤師外来開設後5年を機に患者さんにアンケートをとったところ、「薬の服用スケジュール」「副作用の種類」「その対応方法」について、医師の説明の後に薬剤師が説明を行うことで90%以上の患者さんが「理解度が向上した」と回答。また、「病院への連絡が必要となる副作用とその症状」についても同様に理解度の向上がみられたということです。

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抗がん剤を適切に用いるために

 がん治療において薬剤師が患者さんと直に接するようになった背景には、抗がん剤の進化と変化があります。化学療法は入院治療から外来治療が主となり、最近は抗がん剤を自宅で服用する患者さんも増えてきました。副作用の強い抗がん剤を用いるには、薬の効果と安全性の両面に配慮しながら適切に治療する必要があり、患者さんの体調管理は最重要課題です。がん以外の疾患を併せ持つ場合には、それらの治療薬との相互関係にも配慮しなければなりません。

しかし、診察時の医師からの説明や窓口で薬を受け取る際に聞く説明だけでは、こうした1人ひとりの患者さんに応じた薬のケアは決して十分とは言えないでしょう。そのため患者さんの中には、副作用がきついので勝手に服用を中止してしまったり、逆に治療が中止になるのを恐れて辛い副作用があっても申告しなかったりということがあります。こうしたことから、よりよい治療のために薬剤師の役割がクローズアップされ、その力が期待されるようになったのです。

がん専門薬剤師は全国でもまだ少なく(日本病院薬剤師会認定222人〈平成22年7月1日現在〉、日本医療薬学会認定437人〈平成27年1月 15日現在〉)、薬剤師外来を開設している医療施設も多くはありません。では、がん患者さんはどういうところで薬剤師と接しているのでしょうか。

1つは、治療を受けている病院です。薬のことでわからないことや困ったことがあれば、外来化学療法室にいる薬剤師に尋ねてみましょう。十分に副作用対策しているにもかかわらず副作用がひどい場合には、体調回復のために休薬期間を設ける、抗がん剤を減量するなど、さまざまな方法を考え、患者さんの主治医に伝えてくれるでしょう。また、選択肢が複数ある場合には、最適の治療法を選び直すこともできます。

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よりよい薬物治療を受けるために

 もう1つ、患者さんにとって身近に存在するのが調剤薬局の薬剤師です。現在、多くの医療施設では、処方箋のみ発行し、患者さんが院外の調剤薬局で薬を受け取るシステムになっています。その際に大事なのは、患者さん側からの適切な情報提供です。

1:患者さんの名前を告げる
2:受診している医療機関と主治医の名前を伝える
3:疾患名、いつから、なんの治療を受けているのか
4:使用している薬剤は何か
5:困っていることがある場合には、いつから、どんな症状に、どう困っているのか

院外の薬剤師が得られる患者さんの情報は、処方箋に記載された薬剤情報だけです。告知の有無、治療内容などの重要な情報がない中で、処方された薬の説明をするのは大変です。患者さんの治療情報を薬剤師に提供しないと、的確な服薬指導が受けられません。そのためにも「お薬手帳」や、治療計画、治療経過、副作用が起こった時の状況などを記録したノートを作っておくといいでしょう。

がん治療は患者さんが主役です。そして医療の専門職がチームで支えています。薬については薬剤師のサポートを受けましょう。

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