災害時におけるがん治療

公開日:2011年10月14日

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9月2~4日仙台にて第19回日本乳癌学会学術集会が開催されました。今回は仙台で行われたということもあり、災害時医療に関するシンポジウムが特別に講演されました。乳がんに関わらず災害時には、病院の崩壊や薬剤の不足などによって、いままでの治療を継続的に受けることが難しくなる場合が起こってきます。やむなく病院を変更せざる得ない場合や、薬を変更しなければいけない場合が起きた場合に備えて、自分の治療を理解していることはとても大切です。最終日に行われた市民公開講座の中でも災害時医療が取り上げられ、市民に対する情報提供が行われました。今回は災害時における医療をテーマに、備えるべきことや、情報収集の方法などをご紹介したいと思います。

災害発生時には情報の備えも大切

医師を信用して治療を継続するのはとてもよいのですが、自身の治療を知らないというのは困ります。治療に関することは自身でも知っておくことが大切です。とくに災害時には自分の症状を他の医療関係者に説明しなければいけない場合が起きます。災害後にも同じ病院で診療を続けられる場合はよいのですが、病院を変更しなければいけなくなった場合は、主治医や病院に連絡をしてカルテなどの診療記録を自分自身に送ってもらうか、受け入れ先の病院に送ってもらうことがとても大切です。診療記録は迅速な治療再開や薬の処方にとても重要な役割になってきます。 がん種や治療法などによって、日本には様々な医療学会が存在していますが、これらの機関は患者さんのために迅速な情報提供を心がけています。自身の治療法やがん腫による医療系の学会は存在しているのか、ホームページはあるのか、インターネット以外での情報入手方法はあるのかということを知っておくことも大切です。国立がん研究センターではホームページの中でがん診療連携拠点病院の受け入れ体制を公開しています。また、被災されたがん患者さんの受け入れに関する電話によるホットラインを開設しております。こちらのホットラインでは紹介状がない方も電話受付できる窓口が設置されています。日本臨床腫瘍学会などでも、受け入れ可能な医療機関のリストを公開しています。 災害・事故発生が起こると被災者の方達には「生活支援の必要性」、「身体症状」、「災害による心の傷」などの問題がおこってくると言われています。社会制度の中では、これらに対応する社会機関などが異なってきますので、それぞれの措置を受けることができる主体を知っていることが大切です。「生活支援の必要性」に関しては住民同士の支援(ボランティア活動)・企業支援・行政・福祉機関が対応します。「身体症状」に関しては一般医療機関が対応します。「災害による心の傷」に関しては精神医療の分野が対応します。

発生後の落ち着いた行動が大切

災害時に避難している場合には、まず一時避難所に医療従事者がいることを確認します。いる場合には、がんの治療中であることと、医師や病院とできるだけ早く連絡をとる必要がある旨を伝えましょう。医師のところや病院へ車などで連れていってもらわなければならない場合は、そのことも必ず伝えましょう。医療従事者がいない場合は避難所や仮設住宅の責任者、避難先のご家庭に頼んで、最寄りの病院や保健所に連絡してもらってください。意思表示をすることがとても大切です。 今回の震災では、県外の親類などに身を寄せて病院を変更しながら治療継続をしている方もいらっしゃいますが、被災地の近くに残っている方の中には情報がなく、やむなく治療を中断しなければならなかった方もいらっしゃるようです。 もしかかりつけの病院が被災をしてしまい、診療記録を入手できない場合などでも焦らないでください。治療に関することを書きだして、受け入れ先の病院に相談することが大切です。日本乳癌学会学術集会の市民公開講座の中でも、紹介がありましたが、日本乳癌学会のホームページには下記の点を記すように解説されています。

○もし知っていれば、「何がん(がんの部位)」で「何期(がんの病期またはステージ)」なのか

○これまで受けた治療(薬物療法、放射線療法、手術など)

○直近の治療日

○主治医の名前と病院名

○投与中の薬剤名(抗がん剤やその他の薬剤)。名前がわからない場合は、薬の色、大きさ、形、注射薬か錠剤あるいは粉薬か、服用回数などを詳しく。

○がん以外に罹っている病気や健康に関する問題点

またこれ以外にもインフォームドコンセントを受けた時のコピーや、抗がん剤の副作用に関する説明書や、病状などを記入した日記などがあれば何を使って治療を行っていた可能性があるのか分かるかもしれません。しかしながら、事前に治療に関する情報を整理していることも大切なのですが、もし情報が入手できなかった場合でも、落ち着いて状況を説明するようにしましょう。

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