【最新医療】がん研究の道筋~患者のニーズに応える研究へ~

公開日:2013年06月28日

目次

日本のがん研究を発展させる7つの戦略

新たながん治療の開発や、患者さんにとって過ごしやすい社会環境が整備される背景には、多くの医師・研究者による懸命な努力があります。これからも、いっそう充実した治療、そして療養環境が広がるためには、継続した研究が欠かせません。今年6月、厚生労働省・文部科学省・経済産業省の3省による「今後のがん研究のあり方に関する有識者会議」は報告書案(暫定版)をまとめ、これからのがん研究で力を入れる領域として、7つの戦略を示しました。

(1)がんの本態解明に関する研究
(2)個人のリスクに応じたがんの予防法や早期発見手法に関する研究
(3)新薬創出国として世界をリードする新規薬剤開発に関する研究
(4)ものづくり力を生かした新規医療技術開発に関する研究
(5)明日の標準 治療を創るための研究
(6)より充実したサバイバーシップの実現を目指した研究
(7)ライフステージや個々の特性に着目した重点研究領域

これら戦略の1つ1つは、複数の具体的研究テーマから成り立っています。現在がんと闘っている人、療養している人にとって知っておきたいトピックスを整理しました。

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免疫療法や遺伝子治療の開発を促進

まず、(1)「がんの本態解明に関する研究」とは、いまだ解明されていない発がん要因や、浸潤・転移など、がん細胞の生物学的特徴に関する研究です。iPS 細胞やゲノム医学、薬物伝達システム(ドラッグ・デリバリーシステム:患部に集中的に薬を送り込む技術)といった新しい技術を融合させて発展させることがテーマとなっています。(2)「個人のリスクに応じたがんの予防法や早期発見手法」は、遺伝情報や感染の有無、生活習慣などから、個人の発がんリスクを解明する研究です。先般、アメリカの映画女優が乳がんの予防的切除手術を受けたことは大きな話題となりましたが、日本国内の研究においても、そうしたリスク軽減手法の開発に力を入れることが見込まれています。(3)「新薬創出国として世界をリードする新規薬剤開発」は、新薬候補となるものの探索や、すでに候補にあがっているものを臨床試験に橋渡しするための研究です。免疫療法や遺伝子治療をはじめとする、新しい治療薬の開発の実用化を目指しています。次の(4)「ものづくり力を活かした新規医療技術開発に関する研究」では、早期発見が難しいがんや、再発・転移の早期診断のための技術が研究されます。また、(5)「明日の標準治療を創るための研究」は、治療の有効性や安全性、QOL 向上をめざした標準治療開発のために多施設が共同で臨床研究を行うことを目的としています。患者さんの苦痛の緩和や栄養療法、リハビリ療法などの支持療法の開発発に関する研究にも力を入れることになっています。

サバイバーが生きやすく、暮らしやすい社会へ

(6)「より充実したサバイバーシップの実現」は、がんの経験のある人にとって心強い研究です。がんに関する情報提供・相談支援や、患者さん自らが実践できる健康維持増進に関する研究。ならびに、患者さんとその家族の精神的問題に関する研究などが目標とされています。がん治療の外来化が進んだ今、喫緊のテーマと言われる患者さんの就労問題も研究テーマの1つです。
また、(7)「ライフステージや個々の特性に着目した重点研究領域」では、子どもと高齢者のがんに特化した研究があげられています。子どもに関しては、いわゆる「AYA世代」(Adolescent and Young Adult:15歳~29歳)のがんの実態解明と治療開発を進めるとしています。高齢者は、今以上に予後を快適にする研究のほか、高齢者にしぼった治療ガイドラインの作成と普及を目指すことも盛り込まれています。

再発・転移がんの新規治療のテーマの1つ

加えて、これまで効果的な治療法が開発されていない難治性がんに対する新しい治療開発も、(7)の戦略に含まれる研究テーマです。 難治性がんの治療薬には、欧米ではすでに標準となっているにもかかわらず、国内では保険適応外だったり未承認だったりするものがあります。それらの実用化を目指し、開発ラグ解消のための臨床研究が進められるとしています。また、再発・転移がんの特徴に着目した新規治療の開発研究も、研究テーマとしてあげられています。
ほかにも、これまで民間主導の研究開発が進みにくかった希少がんの治療に関する研究も後押しされます。難治性がん同様、海外では標準となっていて日本で承認されていない薬の開発ラグを解消する臨床研究がテーマとなっています。

研究で得られた知見やデータが実際に臨床に生かされるには、ある程度の期間がかかります。そのため、この「がん研究戦略」は10ヵ年戦略とされていますが、今後も必要に応じて見直しを行うことが見込まれています。戦略そのものは省庁連携によって生まれ、実際の研究は産官学連携で進められます。今のがん治療に不足している研究資源が確保され、1人でも多くの患者さんの利益になることを願わずにいられません。

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