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【QOL(生活の質)】「がん哲学外来」へのいざない
目次
全国の病院やカフェで開催されている
がんの治療は、日進月歩の進化をたどっています。しかし今もまだ、再発や転移のがんは回復が難しく、患者さんが心を痛めてしまうことは少なくありません。自分はどうなってしまうのか。なぜ、自分がこんな目に遭うのかと、繰り返し考え、堂々巡りのような気持ちになる時も、あるのではないでしょうか。
「がん哲学外来」は、そうした患者さんが素直に気持ちを語ることができる「対話」の場です。順天堂大学医学部病理・腫瘍学教授の、樋野興夫(ひの・おきお)先生が2008年に始めた取り組みで、今では全国各地に広がりました。「外来」といっても、診察をするわけではありません。病院の中や街角のカフェで、樋野先生は患者さんとしっかり向き合い、その話しに耳を傾けます。お茶を飲みながら、ゆっくりリラックスしたスタイルで、患者さんが普段感じていることを丸ごと受け止めるのです。
そして、「言葉」のお土産を持たせてくれます。樋野先生は、病理学や医学のことにとどまらず、人生とはなにか。がんを患ったからこそ見えてくるものはなにかを、患者さん一人ひとりのために語ってくれます。もちろん、付添いで来られたご家族にもです。
患者さんが哲学者になる時
「がん」と「哲学」という言葉が一緒になっていることを、不思議に思われる方もいるかもしれません。樋野先生は「がん医療は、患者さんの『心』に寄り添うという部分で、極めて不十分でした。(中略)『心』という部分へとアプローチできるのは、医学でもなければ心理学でもない、哲学であるという結論に達したのです」と、自著『がんと暮らす人のために』(主婦の友社)の中で語っています。
また、がん哲学外来を訪れる患者さんの悩みは大別すると3つ。がんそのもの痛みや苦痛、恐怖などの悩みと、家族関係の悩み、そして職場の人間関係の悩みだといいます。がんそのものの悩みは治療によって解消に向かうことができるかもしれませんが、家族関係や職場の悩みは、医療だけではカバーできません。そこにフィットするのが「哲学」だというわけです。
例えば、がんになってから家族の世話になるばかりで、自分から何かをしてあげられないと、悩む患者さんがいるとします。そこで生じるのが「人の喜びとは何か?」という哲学的な問いかけです。そんな時、樋野先生は「『与える喜び』と『与えられる喜び』。人間の喜びには、この2つがあるようです。がんになると『与える喜び』がなくなる。それを悲しいことに思うかもしれません」と語りかけます。しかし、その悲しみは必ずしも本当ではないことを教えてくれます。
「がん患者さんを励ますつもりでお見舞いに来た人が、逆に励まされ、元気になって帰って行くことがあります。患者さんからすばらしいものを受け取ったということではないでしょうか。(中略)すばらしいものの種類は違っても、与える喜びがなくなるわけではないのです」と――。
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タグ2013年4月
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