患者会ってどんな会? ~がんの再発・転移を分かち合える場所~

公開日:2011年07月26日

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「苦しいのは自分だけじゃない」

再発・転移のがんに関する治療方法は、患者さん一人ひとり症状が異なってくるため、自分の症状に合う治療方法を収集することが難しいと言われています。また、患者さん自身の不安や悩みが深いだけに、他人に相談しにくく、信頼している家族にさえ本音を言えないケースも珍しくありません。 「患者会」とは、そうしたがん患者さんの気持ちに寄り添う組織です。有益な情報提供や同じ患者同士の交流などを通して、患者さんが「苦しいのは自分だけじゃない」と思えるようにサポートしてくれます。

さまざまに混在する患者会

現在、日本にはがん患者会が200件近くあると言われています。以前は50件にしか満たなかった患者会ですが、2006年に成立した「がん対策基本法」をきっかけに、患者さん自身も積極的に情報を集めて治療に向き合うことの大切さが語られるようになってきたことから、短期間のうちに急増してきました。 ただ、ひとくちに患者会といっても、対象とするがん種や会員規模、活動内容はさまざまです。乳がんや子宮頸がんなど、特定のがん種を対象とした患者同士が集まって活動をしている会もあれば、あらゆるがん種を対象にしている会もあります。会の規模は、会員数が数10人のところから、1000人以上の大きな組織のものまであります。

患者会の2大メリットは「情報」と「交流」

ほとんどの患者会では、会報の発行やセミナー、勉強会による情報発信を行っています。加えて、定期的な患者交流会も開催。患者さんにとっては、質の高い情報の収集と、同じ悩みを持つ患者さん同士の交流が、患者会に入る2大メリットといってもよいでしょう。 交流会では、「命とはなにか」「自分が亡くなったあと、家族はどうなるか」など、普段はなかなか相談できない悩みを本音で語り合い、がんと向き合う気持ちをもたらしてくれます。会によっては、患者さん同士で旅行や音楽鑑賞などに出かけるプログラムが用意され、「生きる喜び」を見いだすきっかけにもつながります。 ほかにも、ヨガや気功、アロマテラピーなどの手法を用いた“癒し”を主眼とした会や、患者さんの家族同士の交流が盛んな会もあります。がんに関する法律を改善しようと積極的に政策提言をしたり、がん治療薬の開発のために医療機関の臨床試験に協力するなど、積極的な社会参加を行う会もあります。 以前は入会が少なかった再発・転移の患者さんに限っても最近入会する人たちが増えてきたと言われています。地域によっては、患者会が少ないことから、都市部の患者会に入り、仲間と話すために定期的に通っている方もいるようです。

患者会選びに迷ったら?

患者会に入会するきっかけは、主治医の紹介や医療機関に置かれたパンフレットによるものが多いです。いくつか検討している患者会があれば、自分のがん種や進行の度合いなどによって選ぶと良いでしょう。たとえば、単発がんの場合、基本的には標準的治療を行いますから、病院の患者相談支援センターなどから得られる治療情報で十分ということがあります。したがって、治療法に関する情報収集というより患者同士の交流に力を入れている患者会が向いているかもしれません。自分のがんに特化した会であれば、なお共感し合えるでしょう。 単発がんで進行した状態や、同じ場所に再発した患者さんの場合は、その分野における専門的な情報が蓄積されている、特定のがんに特化した患者会が向いているかもしれません。同じ悩みを抱える先輩患者の声をたくさん聞ける体制が整っているからです。また交流会のみならず、外部から医師などを招いて勉強会なども開催して、治療に関する医師などへの相談体制が整っている患者会も、自分の治療方針を決める上で大変役に立つことがありますので、参考にすると良いでしょう。

転移や複数のがんがある場合に向いた患者会とは

一方、ほかの臓器への転移や、複数の原発がんのある患者さんは、がん全般を対象とした患者会も選択肢の一つとしても良いでしょう。がん全般を対象とした患者会は、規模も大きく人や情報が集まっています。再発・転移の方達に向けた相談会やプログラムが用意されている患者会もあります。そのほか規模の大きな患者会の特徴として、医師、看護師などの医療専門スタッフや心理カウンセラーなどを常駐させて、患者さんのサポートを行っているところもあります。専門スタッフによるカウンセリングは患者さん同士の話し合いとは異なり、ルールを設けて、学術的に行っているのが特徴です。 がんの部位によっては患者会が存在しないものもあります。現状では、乳がんや子宮頸がんなど比較的予後がよく、女性患者の多いがんの患者会は多く、前立腺がん、大腸がん、肺がんなどは専門の患者会がありません。そうした場合は、がん全般を対象とした患者会に相談するとよいでしょう。複数の患者会をかけもちで加入する患者さんも多く、「最初に乳がんが見つかって乳がんの患者会に入ったが、その後、ほかの臓器のがんが見つかり、もう一つの患者会に入った」というケースもあります。

入会にあたって注意すべき点は?

患者会にはメリットもありますが、一方で注意しなければならない点もあります。会によっては、患者さんの病態や進行度にかかわりなく交流がもたれていますが、再発・転移の患者さんにとって、初発の患者さんとの交流は病態や進行度が異なることから必ずしも嬉しいものではない場合が少なくありません。「入会したものの、あまり積極的になれない」とならないためにも、進行度が近い患者さん同士の交流が持てるかどうか、事前に確認しておきましょう。 また、特定の療法や食事法を強く勧める患者会にも注意が必要です。医療機関や食品販売が主催している患者会のなかには、そこで提供される治療を普及させることを目的としている場合もあるのです。再発・転移の患者さんは、切実な思いで情報収集をされることもありますが、根拠のない治療法にはよく留意しましょう。 プライバシー保護や会費についても、事前に確認したいところです。自分のがんを家族や近所の人に知らせていない場合は、個人情報の取り扱いに関して事前に患者会へ確認しておきましょう。たとえば、会報などを分からないように封をして送ってもらえるかどうか大切になります。会費は数千円から1万円程度が相場で、各種セミナーやプログラムを受ける際、別途料金がかかることもあります。説明会があるなら必ず参加し、気になるところは質問してみて、活動内容や目的が自分と合った患者会を選ぶことが大切です。

【患者会へ取材に行ってきました1 】NPO法人 がんサポートコミュニティ(ジャパン・ウェルネス)

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