【患者会に行ってきました1】 NPO法人がんサポートコミュニティ(ジャパン・ウェルネス)

公開日:2011年07月26日

目次

がん種や進行度を問わず、あらゆるがん患者を支える

がんの患者会には、特定のがん種に特化した会と、あらゆるがんを対象にした会があります。NPO法人 がんサポートコミュニティ(ジャパン・ウェルネス)は後者の草分け的存在で、幅広い層の患者さんが加入しています。同会の特色や活動内容について、事務局長の大井賢一氏にお話を伺いました。

患者会概要 法人名 NPO法人 がんサポートコミュニティ(ジャパン・ウェルネス) 創始者 竹中 文良 代表者 渥美 隆之 所在地・連絡先 107-0052 東京都港区虎ノ門3-10-4 虎ノ門ガーデン214号室 URL http://www.csc-japan.org/

Q なぜ、がん種を問わない患者会としているのでしょうか?

A 当会が発足した2001年は、まだ国内にがんの患者会が少なく、あるとすると特定のがんの患者さん同士が集まる場か、予防医学の支援団体でした。しかし、がんの悩みは患者さんもご家族によってさまざまです。特に再発・転移の患者さんは、がんが複数にわたることも多く、幅広い知識を持った専門家によるサポートも必要とします。 当会の母体である国際ネットワーク「The Wellness Community」(本部・アメリカ)は、1982年からすでに専門的なプログラムによって、すべてのがんの患者さんとご家族の心のケアを行っていました。その活動に共感したのが、当会の創設者で消化器外科医の竹中文良(故人)です。竹中自身、大腸がんをわずらい、その後、肝臓がんで亡くなりましたが、医師であり患者でもある経験から、がん種を問わず専門家のサポートを受けられる患者会として当会を発足させたのです。

Q 会員はどのように活動をしていますか?

A プログラムの1つに、6〜8人のグループで語り合う「サポートグループ」があります。 入会から2ヵ月間は、「短期サポートグループ」といって、毎週1回、がん種を問わず同じメンバーで語り合う場に参加していただきます。「生きるとは何か」「がんとどう向かうか」など、患者さんに共通した根源的な話をします。 その後は、「継続サポートグループ」といって、月に2回のディスカッションに参加することができます。こちらでは、乳がん、大腸がん、肺がん等の部位別のグループのほか、腎臓がん、膀胱がん、血液がん等の希少部位の患者さんで構成される混合グループに別れて、それぞれの思いを語り合います。そして無症候状態が5年続いた場合は、“卒業”となり、希望される方は卒業者同士の「友の会」に加入します。 がんになった苦しさや、悲しさ、悔しさ、内面の葛藤は、患者さん同士でなければ本当の理解は難しい面があります。普段、口に出しにくい本音を打ち明け、ほかの患者さんの体験を聞くことは、患者さん同士の連帯感をもたらし、「自分は決して一人ではない」と理解することにつながります。

患者さん達がお話をする部屋

部屋A                                 部屋B

Q専門家のサポートとは、具体的にどのようなものがありますか?

A 患者さん同士が語り合う場には、必ず専門の訓練を受けた臨床心理士や看護師、ソーシャルワーカによる進行役(ファシリテーター)が同席します。ディスカッションの論点を整理し、患者さんの発言を促したり感想を求めたりしながら、話題が偏ることなく進行させます。もしも、ほかの患者さんが特定の治療法などを勧めた場合も、ファシリテーターが間に入って仲裁します。 また、座禅やヨガ、アロマテラピーなどの補完療法を行う「リラクゼーションメニュー」も、それぞれの分野の専門家が講師となっています。なかでも、座禅を指導する京都・大徳寺の松濤諦雲住職は、自身もがんをわずらい、患者としての死生観をまじえながら仏教の教えを語ります。 ほかに、当会の協力医による「セカンドオピニオン相談」もあります。複数名の医師が30分にわたり患者さんの思いを聞き、治療の内容、方向について専門家としてアドバイスします。

Q再発・転移の患者さんに向けたプログラムはありますか?

A 「継続サポートグループ」では、再発・転移の患者さんだけが語り合う時間を設けています。患者さんの悩みは、がんの進行度によっても異なります。再発・転移の患者さん同士、治療や療養について情報を交換したり、「自分がいなくなったあと、家族はどうなるだろう」など話し合ったりするなど同じ立場だから語れる深い悩みを打ち明けることができる場です。 「セカンドオピニオン相談」も、具体的な治療法だけでなく、ターミナルを見据えた治療方針について相談できます。緩和ケアを始めるタイミングや、積極的治療の手控えを医師に伝えるにはどうしたらいいかなど、センシティブな相談にも応じます。 その他、スタッフ同伴で患者さんやそのご家族を対象に旅行、観劇などのイベントも開催されています。末期がんの患者さんから「自分だけでは子どもに何もしてあげられないが、よい思い出ができた」という声をいただいております。この会では患者さんとそのご家族との大切な時間を過ごすこともサポートしたいと思っております。

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