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【QOL(生活の質)】医師と患者のコミュニケーション~落ち着いて会話するための準備~
目次
主治医との関係性が療養中の支えになる
「医師の話がよくわからない」「忙しそうで、質問したくてもなかなかできない」・・・そんな気持ちを抱えている患者さんは少なくありません。とりわけ、再発や転移の告知や、抗がん剤の打ち切りなど、いわゆるバッドニュースを知らされた時は、冷静さを保とうとしても医師の言葉が耳に入って来ないということもよくあります。すぐには質問したいという気力さえ、起きないかもしれません。
でも、少しでも「質問したい」「話を聞いて欲しい」と思ったら、迷わず行動にうつしましょう。主治医はあなたの病気の情報を一番持っている専門家。主治医との関係性が良好であることは、その後の療養の大きな支えとなるからです。
「伝えたいことリスト」「聞きたいことリスト」を書き出そう
医師とスムーズに会話するために、あらかじめメモを用意するとよいとは、よく言われることです。ただ、メモを作るにもコツがあります。
まずは医師に伝えたい情報と、聞きたい情報を分けて考えることです。医師に伝えたい情報は、すなわち自分自身の症状ではないでしょうか。以下のポイントを抑えてメモを用意すると、話が冗長にならずに済みます。
(1)どんな症状か(痛み、吐き気、しびれなど)
(2)症状の感じ方はどの程度か
(3)いつから症状が出たか
(4)どこに症状が出ているか(ピンポイントで痛むのか、広範囲にわたるのか、あちこち痛むのか)
(5)症状が出る時間帯や頻度
(6)どうすると症状が悪くなり、どうするとラクか
例えば(2)で「痛み」のつらさを伝える場合、感じ方には個人差がありますが「声も出せない」「立ち上がれない」「夜も眠れない」など日常生活への影響を表現するとわかりやすくなります。また、一口に「痛み」といってもさまざまな種類があり、ズキズキ、ピリピリ、キリキリ、ズーンと鈍く痛む、ギュッと締め付けられる、グーッと重い圧迫感があるなど、具体的に伝える表現を考えてみましょう。
特に聞きたいことには優先順位をつけて
一方、「聞きたいこと」は治療方針や療養上の気がかりな点などが中心になることでしょう。聞きたい、知りたいという思いは、がんに対する不安感が元になっていることがあります。身体的な痛みへの怖さや、生活への影響、治療法の選択への疑問など、さまざまな悩みが浮かんでいるかもしれませんが、何が不安なのかいったん紙に書き出してみて、優先順位をつけていくとよいでしょう。例えば、次のような質問は、再発や転移をした患者さんの多くが聞きたい事柄で、優先順位が高くなりやすいものです。
1、治療の選択肢はほかにありますか?
2、それぞれの治療のメリット・デメリットを教えてください。
3、これまでの生活、人生設計を変える必要はありますか?
4、これからどんな症状が出るのですか?
5、代替療法について意見を聞かせてください。
医師に言いにくいことを伝えるときのポイント
医師とのコミュニケーションでは、「セカンドオピニオンを受けたい」「検査結果の画像が欲しい」など少なからず言いにくいことを言わなければならない場面もあります。「診察中の話を忘れないために録音させて欲しい」ということもあるかもしれません。いずれも、もし機嫌を損ねたら……と心配して躊躇しがちなテーマですが、話し方に気を配ることで医師に対する印象はずいぶんよくなるものです。例えば、気をつけたいポイントとして以下の4つがあげられます。
ポイント1 医療訴訟、医療ミスを連想させる言い方は避ける。
ポイント2 テレビや雑誌で見た情報を鵜呑みにしていると思わせない。
ポイント3 「完全」「確実」という言葉を多用しない。
ポイント4 どうしても言いにくいことは”うそも方便”。
昨今の医療訴訟の増加に伴い、医師たちは医療訴訟や患者さんとのトラブルになりそうな気配に敏感な傾向があります。「薬がぜんぜん効かないから変えてほしい」「テレビで紹介されていた治療法を試したい」といった話し方は、患者さんはそのつもりがなくても、遠回しに治療法を非難したように受け取られることがありますから注意しましょう。
また、医師の間では「医療に確実はない」という認識が常識となっています。どんなに確立された治療でも、患者さんの個人差などによって結果は様々だということです。患者さんは何気なく「完全に治る治療法ですか?」と質問しても、医師にとっては「最善は尽くすけれど完全な治療などない」と思ってしまうことがあります。「完全」「確実」という言葉はあまり使わないほうがよいでしょう。
ポイント4の「うそも方便」というのは、どうしても困った時の手段として心得ておきたいコミュニケーション術です。医師との関係があまりうまくいっておらず、どうしても聞きたいことが聞けないような場合は、「親戚に医療従事者がいて、先生にこんな質問を託されました」などと言ったほうがいいこともあるかもしれません。ただし、治療に影響が出ない範囲の”方便”であることが大前提です。
「積極性」と「節度」のバランスを意識しよう
ここまで、医師と患者のコミュニケーションを解説しましたが、よりよい関係作りには患者さんの「積極性」「節度」のバランスを意識することが大事です。いくら聞きたいからといって、短い診察時間でいくつもの質問を用意したり、聞いて欲しさのあまりに症状のつらさを一方的に話しても、よい信頼関係は築けません。医療には不確実なことや限界があるんだと理解したうえで、聞きたいことは丁寧にきくことが大切です。
がんは医師と患者さんが手をたずさえて治療にあたる病気です。日頃から良好な関係を保つことは先々の不安の解消にもなることを忘れないようにしましょう。
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タグ2012年9月
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