がんとお金のこと~障害年金

公開日:2011年04月08日

目次

障害年金の利用を検討する

がん患者さんに障害年金が適用される場合があります

がん患者さんの多くが高額な治療費に悩まされています。生活費や子供の学費などのために自身のがん治療をあきらめようとする人もいらっしゃいます。患者さんによっては、高額療養費制度などを利用している場合があると思いますが、それでも治療費がかさむ為に、長期治療を続けるのが困難になってくる場合もあるようです。収入の有無にかかわらず65歳未満で、病気が原因の機能障害や身体機能の低下により仕事や生活に支障が出ている場合は、障害年金を受給できる可能性があります。がんで障害年金?と疑問にと思う人もいるかもしれませんが、仕事や日常生活をする上で支障がでている場合には障害認定されるケースがあります。

障害基礎年金と厚生年金

障害年金には障害基礎年金と障害厚生年金があります。

障害基礎年金とは、国民年金に加入中の方又は日本国内に住所があり被保険者資格を喪失した60歳以上65歳未満の人が、病気やけがで初診を受けその初診日から起算して1年6ヶ月を経過した日(障害認定日)において障害等級1級又は2級に該当する程度の障害状態にあるときに支給される年金です。ただし、保険料納付要件を満たしている必要があります。障害発生までの加入期間中に3分の1以上の保険料の未納がなかったこと等が支払要件になってきます。20歳前に初診日がある場合は、20歳に達した日又はその後に障害認定日が到来するときはその日において障害があれば障害基礎年金が支給されます。

障害厚生年金とは、厚生年金に加入期間中であり、在職中の病気やけがにより初診を受け、障害認定日に障害等級1級、2級に該当した場合、障害基礎年金に上乗せして支給される年金です。障害厚生年金は、1級~2級までの認定基準は障害基礎年金と同じ規定になっていますが、障害厚生年金には障害基礎年金にはない3級の適応もあり、また3級よりも軽い障害の場合には、障害手当金が一時金として支給されます。ただし障害厚生年金を受けるためには、保険料納付要件を満たしている必要があり、障害の原因となる病気がみつかった初診日に加入していた方が適用されます。

障害基礎年金はすべての国民(年齢や加入状態によって制限あり)を対象とした基礎となる年金であり、会社などで働く者については、その上に障害厚生年金が加えられ、2階建てとなる仕組みとなっています。

【障害年金の支給要件と級】

国民年金(障害基礎年金)
支給要件 ●保険料納付済期間(保険料免除期間を含む。) が加入期間の3分の2以上ある者の障害。
●20歳未満のときに初めて医師の診療を受けた者が、障害の状態にあって20歳に達したとき、
または20歳に達した後に障害の状態となったとき。
障害認定時 ●初めて医師の診療を受けたときから、 1年6ヵ月経過したとき(その間に治った場合は治ったとき)に障害の状態にあるか、
または65歳に達するまでの間に障害の状態となったとき。
※例えば、初めて医師の診療を受けた日から1年6ヶ月以内に、次の①~⑦に該当する日があるときは、
その日が「障害認定日」となります。
1 人工透析療法を行っている場合は、透析を受けはじめてから3月を経過した日
2 人工骨頭又は人工関節をそう入置換した場合は、そう入置換した日
3 心臓ペースメーカー、植え込み型除細動器(ICD)又は人工弁を装着した場合は、装着した日
4 人工肛門又は新膀胱の造設、尿路変更術を施術した場合は、造設又は手術を施した日
5 切断又は離断による肢体の障害は、原則として切断又は離断した日
 (障害手当金又は旧法の場合は、創面が治癒した日)
6 喉頭全摘出の場合は、全摘出した日
7 在宅酸素療法を行っている場合は、在宅酸素療法を開始した日
障害等級の例 1級 1 両眼の視力の和が0.04以下のもの
2 両耳の聴力レベルが100デシベル以上のもの
3 両上肢の機能に著しい障害を有するもの
4 両上肢のすべての指を欠くもの
5 音声又は言語機能に著しい障害を有するもの
6 両上肢のおや指及びひとさし指又は中指を欠くもの
7 両下肢を足関節以上で欠くもの
8 体幹の機能に座つていることができない程度又は立ち上がることができない程度の障害を有するもの
9 前各号に掲げるもののほか、身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必
要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であつて、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
10 精神の障害であつて、前各号と同程度以上と認められる程度のもの
11 身体の機能の障害若しくは病状又は精神の障害が重複する場合であつて、その状態が前各号と同程度以上と認められる程度のもの
2級 1 両眼の視力の和が0.05以上0.08以下のもの
2 両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの
3 平衡機能に著しい障害を有するもの
4 そしやくの機能を欠くもの
5 音声又は言語機能に著しい障害を有するもの

6 両上肢のおや指及びひとさし指又は中指を欠くもの
7 両上肢のおや指及びひとさし指又は中指の機能に著しい障害を有するもの
8 一上肢の機能に著しい障害を有するもの
9 一上肢のすべての指を欠くもの
10 一上肢のすべての指の機能に著しい障害を有するもの
11 両下肢のすべての指を欠くもの
12 一下肢の機能に著しい障害を有するもの
13 一下肢を足関節以上で欠くもの
14 体幹の機能に歩くことができない程度の障害を有するもの
15 前各号に掲げるもののほか、身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であつて、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
16 精神の障害であつて、前各号と同程度以上と認められる程度のもの
17 身体の機能の障害若しくは病状又は精神の障害が重複する場合であつて、
その状態が前各号と同程度以上と認められる程度のもの

厚生年金保険(障害厚生年金)
支給要件 ●加入期間中に初めて医師の診療を受けた傷病による障害。
ただし、障害基礎年金の支給要件を満たしている者であること。
障害認定時 ●障害基礎年金と同じ。
障害等級の例 1級 障害基礎年金と同じ。
2級 障害基礎年金と同じ。
3級 1.両眼の視力が0.1以下に減じたもの
2.両耳の聴力が、40センチメートル以上では通常の話声を解することができない程度に減じたもの
3.そしやく又は言語の機能に相当程度の障害を残すもの
4.脊柱の機能に著しい障害を残すもの
5.一上肢の三大関節のうち、二関節の用を廃したもの
6.一下肢の三大関節のうち、二関節の用を廃したもの
7.長管状骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの
8.一上肢のおや指及びひとさし指を失つたもの又はおや指若しくはひ
とさし指を併せ一上肢の三指以上を失つたもの
9.おや指及びひとさし指を併せ一上肢の四指の用を廃したもの
10.一下肢をリスフラン関節以上で失つたもの
11.両下肢の10趾の用を廃したもの
12.前各号に掲げるもののほか、身体の機能に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の
障害を残すもの
13.精神又は神経系統に、労働が著しい制限を受けるか、
又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの
14.傷病が治らないで、身体の機能又は精神若しくは神経系統に、
労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とす
る程度の障害を有するものであつて、厚生労働大臣が定めるもの

国民年金法施行令と厚生年金保険法施行令参照

知られていない障害年金の受給

がん患者さんが障害年金の適用を受けられることはあまり知られていないようです。そのため、がんを対象としている障害年金の事例は少なくようです。そのため申請には主治医との相談や窓口の人との対応をしっかりと行うことが大切です。

まずは、初診日がいつだったか思い出して下さい。健康診断で精密検査を受けるよう指示された場合はその日が初診日と数えます。20歳から60歳までの方は、初診時に国民年金、厚生年金、共済組合に加入していないと請求することができません。職業によっても認定が異なってくる場合があります。例えば、がん手術の後にトイレが近くなる症状がでてしまった場合などは、デスクワークの方は比較的に会社のトイレに行ける状況があるので認定されない場合もありますが、長時間、容易にトイレに行けない仕事などでは続けることが困難になってしまう為認定される場合があります。生活や労働に支障が出る理由を医学的からの意見も含めて医師に書いてもらう申請書の内容が重要になってくるでしょう。

障害年金の相談や手続きは?

まず相談や困った時は、がん診療連携拠点病院の患者支援センターや病院の患者相談室などの窓口へ相談してみると良いでしょう。申請書の提出は年金の種類によって異なります。厚生年金の場合は勤務先の事業所を管轄する社会保険事務所です。国民年金の場合は、現在住んでいる市区町村役場の国民年金課となります。診断書には病気の種類によっていくつか種類があるので、窓口で確認することがよいでしょう。書類の書き方で分からない場合や、制度について詳しく知りたい場合には、障害年金に詳しい社会保険労務士やNPO団体などもあるようです。またソーシャルワーカーなどに確認してみることも手段の一つです。

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