【医療情勢 I】外来化学療法を受ける患者さんの相談に電子メールで対応

公開日:2015年9月30日

 治療に関する不安や悩みを抱えているがん患者さんは多いでしょう。しかし、忙しい医師や看護師に直接相談をするのは気が引けるという方は少なくありません。そんな患者さんの心理を重視して、いつでも気軽に相談できるように電子メールでの相談を実践している医療機関があります。

患者さんの「忙しい時にごめんなさいね」がきっかけ

伊勢原協同病院(神奈川県)の外来化学療法センターでは、2年前から外来化学療法を受ける患者さんの相談を電話のほかに電子メールでも受け付けています。メール相談を始めたきっかけは患者さんが、「忙しい時にごめんなさいね」と申し訳なさそうにしていたことでした。そんな患者さんの様子を見て、同センター看護師長の神保京美さんはスタッフの長友真由美さん、吉本千晴さんと患者さんが気軽に相談できる方法を模索していました。

神保さんらは、高齢の患者さんでも治療が終わって家族に携帯電話のメールで連絡している光景を日常的に目にしており、「電子メールだったら時間帯を気にせずに相談できるのでは」と解決策を思いつきました。そこで、電子メールで治療や療養に関する相談を始めることを外来受診時の患者さんに知らせたり、チラシを渡したりして電子メール相談の利用を促しました。

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左から、長友真由美さん、吉本千晴さん、神保京美さん(伊勢原協同病院・外来化学療法センターにて)

緊急性が高い相談は少しでも早く連絡を

 利用の方法は至ってシンプルです。患者さんは、同センターのメールアドレスを直接入力するか、QRコードを読み取ってから、件名、氏名、受診している診療科を入力したうえで、本文に相談内容を書いて送信します。

同センターでは1日3回電子メールの受信履歴を確認しています。土日、祝日に送られてきた相談の返信は休日明けに行われます。また、相談内容は主治医やがん化学療法看護認定看護師も共有し、返信内容を確認したうえで患者さんに送られます。

さらに、紛らわしい表現で患者さんに誤解されないか、わかりやすく書かれているかなど、文面は必ず第三者の目が通るようになっています。また、緊急性があると判断した場合、患者さんに電話で確認し、必要に応じて来院を要請することもあります。「特に、嘔吐している、下痢をしている、熱が高い、食事ができない場合など、より緊急性が高いと考えられる時は少しでも早く連絡してほしいですね」と神保さんは呼びかけています。

患者さんの9割近くが「メールで相談したい」

 同センターではメール相談の利用状況について、患者さんに聞き取り調査をしました。その結果、約8割の患者さんが日ごろから携帯電話やパソコンの電子メールを使っていました。また、9割近くの患者さんが電子メールで治療について相談したいと考えていることがわかりました。

電子メール相談を利用している患者さんの平均年齢は50歳代後半で、電話相談を利用している患者さん(60歳代後半)より若い傾向がありました。また、症状や状況によって相談方法を電話と電子メールで使い分けている実態も明らかになりました。いずれの場合も抗がん剤による副作用に関する相談が最も多く、がんの治療以外の薬についての相談などもみられました。

神保さんは「電子メールほどの気軽さはないものの、患者さんの声から健康状態を推察することができる電話相談のメリットもあります」と指摘しています。また、電子メールの着信をリアルタイムで確認することは難しく、休日に届いた相談の対応が遅れる可能性がある点も今後の課題といえるでしょう。

メール相談は安心のためのツールであるべき

 同センターでは化学療法を開始する際に時間をかけて患者さんに説明をしています。特に初めてがんを告知された患者さんや、再発した患者さんはショックが大きく、不安を和らげるように心理面に気を配りながら患者さんに寄り添った指導が行われます。

治療が始まってからも、点滴中には看護師が、ベッドサイドで患者さんとのコミュニケーションを図るように心がけています。治療後は問診票で疑問点や不安などについて聞きとりを欠かさず行っています。こうした取り組みによって、患者さんの疾患や治療に対する意識は高く、その結果電子メールの相談件数は月に5件程度となっています。

「電話相談にしてもメール相談にしても件数が増えることを目指しているのではありません。大切なのは、患者さんが相談する手段が複数あることです。いざというときの命綱のような、安心できるツールとして機能を高めていければ」と神保さんは話しています。