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【学会レポート II】第54回日本癌治療学会学術集会 「患者さんが自分らしく生きるために」

公開日:2016年11月30日

 第54回日本癌治療学会学術集会では、患者さんが自分らしく生きるために求められている取り組みなどをテーマにしたシンポジウムやパネルディスカッションが行われました。

AYA世代がん患者さんへのサポート

 AYA(Adolescent and Young Adultの略)とは「思春期と若い成人」という意味で、15~30歳前後(15~39歳などの定義もある)の若い世代を指します。生命予後の長いAYA世代は、がんと共に長く共存していかなくてはなりません。

「社会から見たがん医療とケア」と題して講演した毎日新聞社医療福祉部の永山悦子氏は、治療やその副作用が恋愛や結婚など人生の重要な節目で大きな影響を与えることを指摘。「がん患者でも恋愛したいし、結婚して子どもを持ちたい」というAYA世代がん患者さんが抱える課題に対し、アピアランスの悩み改善や妊孕(よう)性(妊娠する力)温存など、人生の折節に必要なサポート体制拡充の必要性を訴えました。

行政の立場からもAYA世代がん患者さんへのサポートに触れる報告がありました。京都府健康福祉部がん総合対策担当課の田中美奈子氏は「行政による支援と課題――京都府の事例から」と題する講演で、治療でおろそかにされがちな教育支援と妊孕(よう)性温存について「行政として何ができるのか検討している」と述べました。

高齢がん患者さんへのサポート

 65歳以上が人口の3割を占めるようになる2025年問題を視野に入れ、増えゆく高齢のがん患者さんのサポートも今後の重要な課題です。

大阪大学の荒尾晴惠氏は「高齢がん患者のそのひとらしさを支える看護ケア」の中で、高齢患者さんの尊厳を守ることは、患者さんが安心して自分の考えや希望を言える環境を整えることだと説きました。

しかし現状では、患者さんとそれを取り巻く家族や医療者には意識のズレがあることを指摘。70代の女性患者さんが排便コントロールに悩み、これ以上の治療は望んでいないにもかかわらず、患者さんのために積極的治療を望む娘や夫が主治医と治療方針を決定し、患者さんのQOLが改善されない事例を紹介しました。

高齢の患者さんが残された人生をどのように生きたいのか、その人の価値観をふまえた提案やサポートが求められていると述べました。その上で、高齢患者さんがこれからの生き方を考えるために「心積りノート」の活用を推奨しました。「心積りノート」とは、これからの人生を快適に、自分らしく生きるために、今後の暮らし・活動・治療やケアについて心積りすることを支援するノートです。

また、高齢のがん患者さんが住み慣れた地域社会で自分らしく生きるには社会資源の活用が欠かせません。国立がん研究センター東病院がん相談支援センターの坂本はと恵氏は、ソーシャルワーカーとしての視点で、「がん診断初期から始まる社会的支援」について講演。「社会資源を活用するには手続きが煩雑である上に高齢者にはそうした知識や情報が届きにくく、医療者が情報や窓口の案内をする必要があるのではないか」と問題提起しました。

坂本氏は、がん治療の新薬登場は朗報である一方、先の見えない経済的な負担は高齢になるほど重くなっていると言及。同時にがん患者さんの離職率の高さにも触れ、企業の中には福利厚生の一環として独自の高額医療補助制度を設けているところもあるので、離職する前に社員であることの利益や権利を確認しておくことを忘れないようにとがん患者さんに助言しました。

さらに、がん患者さんが治療と生活を支えながらがんとともに生きていくためには、雇用側にも理解と協力が必要だとして、従来の人事管理とは異なる「病気を持ちながら働くシステム」作りが企業にも求められていると述べました。

家族へのサポート

 医療法人パリアンクリニック川越の川越厚氏は「最後まで寄り添うがん治療――在宅医療と苦痛緩和の立場から」と題する講演で、がん患者さんの身体的な苦痛を除去しないと生きる希望が持てなくなると指摘し、苦痛緩和の重要性を強調しました。

また、緩和ケアでは「患者さんと家族で1人の病人」という考え方があり、患者家族のサポートが必要であるとして、それにはグリーフケア(死別を経験した人に対してさりげなく寄り添い援助すること)も含まれていることを示唆しました。

患者さんの立場で登壇した特定非営利活動法人がんサポートかごしまの理事長、三好綾氏もグリーフケアに言及し、子どもたちへの支援について触れた「患者の立場から――いのちの授業を通して」という講演を行いました。

三好氏によると、昨年2000人の小・中学生を対象にした調査で、身近にがん患者がいると答えた子どもは、小学生が32%、中学生は41%でした。大人でもがんについての理解が十分とは言えない現代社会で、子どもたちは身近な人のがん闘病をどのように受け止めているのでしょうか。

「がん=かわいそう、ではない」「がん=死、ではない」「治らない場合でも、患者は最期まで希望を持ち、自分らしく生きている」ということを、ぜひ子どもたちに知ってほしいと三好氏。

そのための具体的な取り組みとして、特定非営利活動法人がんサポートかごしまでは、小・中・高生を対象に2010年から「いのちの授業」を始め、これまで延べ6000人余りの子どもたちが受けています。授業の内容は前半ががん患者さんの体験談で、後半が亡くなった患者さんの自分らしく生きたストーリーのスライド上映です。

患者さんが自分らしく生きるためにはさまざまな支援が不可欠であり、子どもたちも含め、患者さんを支える家族への支援もその例外ではないことが改めて浮き彫りになりました。