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【学会レポート】 第14回日本臨床腫瘍学会 各地で取り組み進むがんサバイバーシップの支援活動
目次
「がんの経験者が生活していくうえで直面する課題を家族や医療関係者、仲間と共に乗り越えていくことや、そのためのサポート」をがんサバイバーシップといいます。がんサバイバーシップを後押しする活動が全国で行われています。前回に引き続き第14回日本臨床腫瘍学会より、がん経験者を支援する取り組みについてご紹介します。
がん安心生活サポートハウスにおけるがんサバイバーシップ支援とピアサポート(石川県)
石川県は「がんになっても安心して暮らせる社会の構築」を目指しており、2013年6月に県が運営するがんサロン「石川県がん安心生活サポートハウス(通称:つどい場はなうめ)」が、委託先の石川県済生会金沢病院内に設置されました。
「サポートハウス」の特徴は、相談員(看護師)のほかにがん経験者がスタッフに加わり、患者さんの視点で相談体制を構築していることです。相談員と事務員、さらにがん経験者が常駐していることで、患者さんやその家族・遺族、専門職、学生など、多くの人が集まってきます。
「サポートハウス」ではまた、県の委託事業としてピアサポーター養成講座(3日間コース)を年に1回開催しています。また、がん相談のほか、利用者向けの勉強会、図書や新聞記事の展示、「サポートハウス」広報役としての市民サポーターの養成も行っています。がん経験者も運営に携わることでやりがいを感じているといいます。
今後は、がん患者さんや家族への理解が深まり、がんとともに暮らしやすい地域づくりを目指し、県内各地に支部展開をしていく予定としています。患者会活動が困難な離島で医療者によるがんサバイバーシップ支援(沖縄県)
離島地域ではがん患者の数が少なく、がんであることを家族以外に話すこともあまりありません。そのため、患者会の数も少なく、患者会のリーダーも孤立しやすくなります。
そこで、琉球大学医学部附属病院がんセンターと沖縄県地域統括相談支援センターは、がん患者会の活動が困難な離島地域の宮古医療圏と八重山医療圏(いずれも二次医療圏※1)のがん患者会と医療関係者、行政関係者と協力して、がん経験者が活躍できる環境づくりを支援しています。
これまでにがん患者や患者会向け研修会として、ピアサポーター養成、フォローアップ、がんピアサロン運営研修会が8回開催され、延べ205名の修了者が誕生しました。また、地元のがん患者会、がん診療拠点病院の院長などの医療者、県、市町村、保健所などの関係機関が参加し、宮古医療圏がん医療連携協議会と八重山医療圏がん医療連携協議会が4カ月ごとに計7回開催されました。
さらに、がん情報の普及啓発を目的に、市立図書館と共同でがん情報コーナーの設置、がん関連図書の出張貸し出し、講演会などが行われました。医療者が積極的に患者会に働きかけ、協働することで、がん経験者が活躍する環境づくりを支援できる可能性があるとしています。
※1 二次医療圏とは、都道府県が病床の整備を図るために設定する地域的単位(医療圏)のうち、特殊な医療を除いた入院に係る医療を提供することが相当であると設定された区域のこと。
がん患者就労支援における多職種相談会の現状と課題(長野県)
長野市民病院がん相談支援センターでは、社会保険労務士の資格を持つ常勤職員と外部の社会保険労務士に看護師とソーシャルワーカーを加えた多職種による就労相談会を2015年4月から行っています。
多職種相談会では、主に就労継続、再就職、社会保険に関する支援が行われ、がん経験者の自信や自尊心の回復などにつながっているといいます。社会保険労務士が継続的にフォローすることも可能で、障害年金手続きなどもスムーズに処理され、短期間で受給決定に至った例もあるといいます。
再就職支援に関しては病院だけで完結することは困難で、ハローワークなどと協働する体制作りが今後の課題となっています。
がん相談支援センターの相談内容と今後の課題(愛知県)
名古屋市立大学病院では2013年4月から翌14年3月までの1年間に、がん相談支援室で受けた相談は841件でした。相談者の平均年齢は52.6歳で、男性が365名、女性が462名でした。がん種別でみると、相談が最も多かったのは乳がん(145件)で、食道・胃・大腸がん(103件)、肺がん(98件)がそれに続きました。
相談内容は疾患や治療などの情報に関するものが多かったのですが、実際に行われた支援は、患者さんの悩みや不安に対するものが多かったといいます。相談の内容にかかわらず、情報提供と精神的支援が必要になるとしています。
■第14回日本臨床腫瘍学会 ポスター
カテゴリー家族と社会のがん闘病サポート, がん患者さんの支援・サービス
タグ2016年10月
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