【QOL(生活の質)】がん治療による外見変化の悩みは化粧でカバー!(後編)

公開日:2016年04月28日

目次

 資生堂 ライフクオリティー ビューティーセンターで、女性だけではなく、男性にも役立つ「がん患者さんのための化粧」の体験取材をしました。後編では「眉とまつ毛の脱毛」と「傷あと」をカバーする化粧について紹介します。

眉の位置決めとバランスの良い描き方

 がん治療の副作用としてよく知られているのが脱毛。最近では治療前にウィッグを準備する患者さんも少なくありません。しかし、脱毛は頭髪だけではありません。眉やまつ毛も抜けるのです。  眉の脱毛に対しては、女性も男性もアイブローで眉を描くことが多いようです。

ところが、眉毛が抜けてまったくない状態や極端に薄くなると、どのように描けば良いのかわからず、とても難しいのです。そのため資生堂ライフクオリティー ビューティーセンターでは「脱毛する前に顔写真を撮る」ことをがん患者さんにアドバイスしているといいます。眉全体の形や眉頭(起点)、眉山、眉尻(終点)の位置がわかるので、脱毛してしまった時に、同じように描きたい時の参考になります。

ここでは念のため、脱毛して眉の位置や形がわからない場合の描き方をご紹介しておきしましょう。眉の位置は表情によって変わるので「顔と鏡を並行な状態にして、まっすぐ鏡を見る」姿勢で行うことがポイントです。

  1. 1)眉頭の位置
    眉毛を描くときに大切なのは、眉毛の始まりである眉頭をどこに設定するかということです。目頭の真上が眉頭の位置、眉の起点すなわち眉頭の位置となります。(図中の①眉頭)ここにアイブローで印をつけておきます。
  2. 2)眉尻の位置
    小鼻の脇と目尻を結んだ延長線と、眉頭から引いた平行線が交わるところが眉尻の位置になります。(図中の②眉尻)ここにアイブローで印をつけておきます。
  3. 3)眉山の位置
    眉頭と眉尻を結び、眉頭から約2/3のところと、目尻側の白目の終わりの真上が眉山の位置になります。(図中の③眉山)ここにもアイブローで印をつけておきましょう。
  4. 4)眉を描く
    アイブローで眉頭、眉山、眉尻の3点に印をつけてから描いていくと自然な眉を描きやすくなります。アイブローにはパウダータイプやリキッドタイプなどさまざまな種類がありますが、「眉を描き慣れていない方や化粧に不慣れな男性はペンシルタイプとパウダータイプを組み合わせて描くと、自然に見せることができます」というアドバイスでした。

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まつ毛の脱毛はアイライナーでカバー

 通常の化粧でも若い女性などの間ではつけまつ毛は一般的です。まつ毛の脱毛にもつけまつ毛で対応するのかと思っていたのですが、今回の体験取材で化粧を担当してくれたMakeup Carist(メーキャップケアリスト)の澤田保子さんのアドバイスは「つけまつ毛はおすすめしません。むしろ、避けたほうがいいです」ということでした。その理由は、接着剤が肌の負担になる場合があるからです。肌が敏感な状態にあるがん患者さんは、こういう刺激は避けたいものです。

澤田さんが推奨するのは「アイライナーを描いて、目もとの印象をくっきりさせる」というカバー方法です。目もとの印象がはっきりすると、まつ毛の脱毛が気にならないといいます。

傷痕のカバーも体験

 取材記者の傷は唇の下にあります。怪我の治療で縫合した部分が盛り上がった状態です。本来は口元のように動きのある部分には推奨できませんが、参考までに傷跡カバーも行ってもらいました。

用いたのは、通常のファンデーションではカバーしづらい、肌の凹凸をカバーするファンデーションです。ソフトタイプとハードタイプがあり、ソフトタイプは気になる凹凸をカバーする顔全体用、ハードタイプは凹凸の目立つ部分をカバーする部分用ファンデーションです。

画像をご覧ください。肌色にあわせて濃い目のオークル系ソフトタイプを用い、ブラシで傷の部分をカバーし、さらにスポンジでカバーしたまわりをポンポンと軽くたたきながら自然に見えるようにぼかしていきました。クローズアップなので傷痕が化粧後にもわかりますが、人と向き合った際には相手の目には映らない程度にカバーできました。顔にできた腫瘍を手術で除去し、術後に生じた陥没に悩む男性に、このような化粧による傷痕カバーを施したところ大変喜ばれたという事例があるそうです。

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化粧で心を元気に!

 資生堂が肌に深い悩みを抱える人を対象に化粧の研究を始めたのは、やけど痕カバーの化粧が始まりでした。戦禍で顔に傷ややけどを負った方々のためにカバー化粧品を開発し、これをあざや白斑、さらにはがん治療で生じた肌の悩みにも対応するようになったのです。

「今は2人に1人が、がんと闘っている時代です。肌に関する悩みを軽減するために、私たちが蓄積した化粧技術が役に立てれば」というのが同センターのスタッフ一同の願いだといいます。しかし、これまでのところ利用者全体のうち、がん患者さんの利用は7%でした。

「より多くのがん患者さんを支援したい」というのがスタッフ一同の気持ちでもあります。中には「化粧でがん患者さんを支援したい」と志願し、難関試験を経て同センターに配属されたスタッフもいます。取材当日、記録を担当した伊藤美穂さんもその一人です。

同センターでは、利用者に対して、一人が化粧を、もう一人がどんな化粧品をどのように使用したのかを記録するスタッフ2名体制で応じています。この記録を利用者であるがん患者さんに渡し、自宅に帰ってからの実践に役立ててもらうというわけです。

また、同時に同センターでもデータを蓄積し、今後のがん患者さん向けの化粧に役立てていく仕組みなのです。がん治療による肌の悩みを抱えた患者さんが、化粧のアドバイスを受けて心の元気を取り戻す。その元気回復体験が、次のがん患者さんに役立つ。こうして心の元気がリレーしていくのでしょう。

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【情報メモ】
資生堂ライフクオリティービューティーセンター
http://www.shiseidogroup.jp/slqc/

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「がん患者さんのための外見ケアBOOK」
http://www.shiseidogroup.jp/slqc/information/information_151215.html

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