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【QOL(生活の質)】「外見の変化」に関する悩みを軽減するために
目次
治療によって生じる「外見の変化」に悩むがん患者さんは少なくありません。気にするあまり、人に会うことを避け、病院に通うことすらつらくなるケースもあります。治療を継続し、明るく日々を過ごせるように、「変化」をケアしましょう。
外見の変化が生じる理由
抗がん剤の副作用として生じる容貌の変化といえば、一番にあげられるのが脱毛。抗がん剤は全身治療なので、頭髪だけでなく眉毛、まつ毛など体毛すべてに影響が及びます。また、抗がん剤によって皮膚の新陳代謝が損なわれ、皮膚の中で色素を産生するメラニン細胞に作用するため、皮膚のくすみ、乾燥、指先や爪が黒ずむといった症状が起こることもあります。
抗がん剤の治療が終わればこうした症状も回復していきますが、それでも長期間にわたる外見の変化は、心に影を落としがちです。女性はもちろんのこと、仕事で人と接しなくてはならない営業職の男性にとっても、外見の変化には心穏やかではいられないでしょう。
抗がん剤治療に伴う頭髪の脱毛については広く知られており、医療用ウイッグや帽子など、対応策もさまざまに工夫されるようになりました。近年は、さらに眉毛やまつ毛の脱毛、肌のくすみなど「顔の変化」に伴う悩みに対する解決策の情報も増えています。
日常的なスキンケアとメイクアップでカバーする
ここでは顔を中心にした脱毛と皮膚のカバー方法を紹介します。抗がん剤治療中は紫外線の影響を受けやすいので、手先や爪が黒くなる色素沈着の副作用を抑えるには、日傘や帽子、日焼け止めの活用、長袖の衣服着用などで、紫外線から肌を守りましょう。
また、保湿も重要です。皮膚の表面を覆う皮脂膜は、紫外線や細菌などの侵入抑止、そして皮膚内部の水分を保つ役割を果たしています。ところが、治療の副作用でその機能が弱まるのでトラブルが生じてしまうのです。過度に皮脂を洗い流さないように熱いお湯(40度以上)の使用は避け、手洗いや入浴後は水分の押さえ拭きを行い、皮膚がしっとりしているうちに保湿ケアをしましょう。
保湿ケアには、香料や添加物が少なく、アルコール成分が入っていないローションやクリームを使用してください。スキンケアというと顔というイメージが強いのですが、手、足や身体のスキンケアも必要です。
顔に生じる変化をカバーする方法といえばメイクアップ。肌のくすみを目立たなくするには、ファンデーションの前に下地としてコントロールカラーを塗るのがポイントです。
眉毛が脱毛した場合には、眉墨(アイブロウ)で眉を描きます。男性の場合はやや太めに描くと自然に見えるでしょう。また、市販の付け眉毛を使ってみるのも1つの方法です。手や指の黒ずみが気になる場合には、手術の痕などを隠すために使われる、こすれても落ちにくいファンデーションを手の甲や指先に塗る方法もあります。
男性の患者さんへのアドバイス
男性には身だしなみを整える習慣はあっても、化粧の習慣はありません。そのため、眉墨を描くとか指先にファンデーションを塗るような方法には抵抗を感じることもあるかもしれません。
化粧ではなく「外見の変化をカバーする方法」として受け止めてみてください。また、抗がん剤治療中のスキンケアは、男性の患者さんにも必要です。いずれも副作用を軽減する治療の一環として考えると、抵抗が薄れるのではないでしょうか。
大切なのは、外見の変化に関する悩みを一人で抱え込まないこと。外見の変化をカバーする方法の普及・情報発信については、がん診療連携拠点病院やがん患者さんを支援するNPOなどが取り組んでいます。男性の相談にも応じているので、利用してみるといいでしょう。
外見の悩みに対応しているさまざまな機関
独立行政法人国立がん研究センター中央病院には、がんの治療に伴う外見の悩みに対処する「アピアランス支援センター」が開設されています。同センターでは、個別相談(要予約)に応じるだけでなく、毎週火曜日と木曜日には年齢・性別不問の講習会を開催しているほか、毎月第4水曜日には男性限定の外見相談も行っています。
また、兵庫医科大学病院は、毎月1回、美容に関する相談会と、かつらや補正下着、人工乳房などの試着会をメーカーと協力して開催しています。兵庫医科大学病院の美容相談に協力している特定非営利法人ヘアエピテーゼ協会は、医療用かつら(ヘアエピテーゼ)を使って、脱毛した髪を元の状態に復元する「再現美容」を行っています。全国各地で会員が営むサロンでは、髪以外に副作用で変形した爪などの外見の悩みに応じた再現美容にも取り組んでいるといいます。
このほかにも、女性のがん患者にウイッグを贈るプロジェクトを推進している特定非営利活動法人キャンサーリボンズは、治療中の悩みに答える美容ノウハウの動画を公開しています。なかでも乳がん経験者である美容ジャーナリスト、山崎多賀子さんのメイクアップ解説動画は、カバーメイクのコツを会得するのに役立つコンテンツといえるでしょう。
また、特定非営利活動法人メディカルメイクアップアソシエーションは、顔や身体の皮膚の変色に関する有料相談会を全国各地で開催しています。
大手化粧品メーカーの資生堂は「ライフクオリティー ビューティーセンター」を開設し、がん治療の副作用による外見上の悩みなどの問題に対し、カウンセリングやカバー方法のアドバイスを行っており、男性からの相談も少なくないようです。
このほかに患者会でも悩みを共有し、解決につなげることができます。女性も男性も、外見の変化について一人で悩まずに、各機関の窓口に相談してみましょう。
カテゴリーQOLを維持するために, 副作用対策・痛み・辛さの緩和
タグ2015年3月
※掲載している情報は、記事公開時点のものです。