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【医療情勢】がんの再発・転移を家族はどう支える?
目次
大切な人のがんで、うつ病になる男性は多い
医師の診断に落ち込んだり、検査結果にドキドキしたり、患者さんの家族もまた、がんによってつらい思いをする存在です。再発・転移の場合は、抗がん剤治療の打ち切りや、終末期に向かう覚悟など、厳しい局面が多々あります。「愛する人を失うかもしれない」「大切な人が痛い思いをしている」という不安や悲しみは家族に重くのしかかり、”第2の患者”といわれるほど、がんとの闘いを余儀なくされます。
特に、男性にとって最愛の家族のがんは受け入れ難いものだと言えるかもしれません。一般に、男性は人前で泣いたり、弱音を吐いたりしにくい面があるため、家族ががんであるつらさを一人で抱え込んでしまいがちです。本当は患者さんと一緒にいたくても、仕事をしなければならない重圧もあり、精神的に参ってしまうケースもあることでしょう。
デンマークで行われた大規模研究によると、妻や恋人が乳がんになった男性は、他の男性に比べて重症のうつ病などで入院する比率が約40%高いとされています。また、パートナーをがんで失った男性は、パートナーががんを克服して再発もなかった男性に比べて入院の比率が3.6倍も高いこともわかっています(米キャンサー誌2010年掲載)。
家族は、がんの患者さんを支えると同時に、自身のメンタルケアにも気を配る必要があるのです。
アドバイスではなく同調することの大切さ
再発や転移を告知されたとき、患者さんは大きく落ち込み、動揺します。そんなとき、家族としてどう受け止め、支えればよいのでしょうか。もっとも大切なことは、「患者さんの話への傾聴」だと言われています。つらい状態にある患者さんは、毎日のように言うことが変化したり、逆に何度も同じ話を繰り返したりすることがあります。時には自暴自棄ともとれる言葉をぶつけることもあるでしょう。そんなときは家族も非常につらいのですが、以下のポイントに気をつけながら聞くことで、患者さんの安心につながります。
(1)よほどでない限り、患者さんの言い分に同調する。
(2)「がんばってね」と励ますのではなく、「よくがんばっているね」「すごいね」と褒めたり、ねぎらいの言葉をかける。
(3)大きくうなずき、何度もあいづちを打つ(「ウンウン」「そうだね」「なるほど」など)
(4)ときどき患者さんと視線を合わせながら聞く
(5)笑顔には笑顔で、深刻な表情には同じく深刻な表情で接する。
(6)患者さんと家族の話す時間配分は8:2程度を心がける
(7)大事な話のときにはメモを取る
このうち、特に大切なのは(1)の同調と(2)のねぎらいです。患者さんが家族に求めるのは、助言やアドバイスといった情報提供ではなく、精神的な支えであり、愛情をもった包容です。多少、つじつまが合わなかったり、極論ともとれることを患者さんがいったとしても、「そう感じることもあるよね」と共感を示すようにしましょう。仕事中心の生活をしてきた男性は、ともすると話の白黒をハッキリさせたくなるかもしれませんが、意識を切替える必要があります。
また、(3)~(7)は患者さんに「ちゃんと聞いているよ」ということを態度で伝えるための方法です。「よくがんばっているね」というねぎらいの言葉をかけるにも、しっかりと患者さんの目を見ていうのとそうでないのとでは大きな違いがあるものです。
患者家族のメンタルケアは「孤独感」が大敵
では、家族自身のメンタルケアは、どのような点に注意したらよいでしょうか。まず気をつけなくてはならないのは「孤独」に陥らないことです。冒頭で、パートナーが乳がんになった男性はうつ病などで入院する割合が高いといいましたが、「自分だけが辛い」「誰にも気持ちを分かってもらえない」という孤独感は、うつ病の原因につながりやすいといえます。
孤独感を避けるために大切なことは、「ストレスの認識」です。毎日のように看病をしたり、がんのことを考えていると、ストレスを感じていることが自分でもわからなくなってしまうことがあります。しかし、ストレスがたまると外出したり、人と話すことさえ億劫になり、悪循環にはまってしまう危険性があります。まずは、がん患者のケアにはストレスがかかるものだという前提にたち、自分自身がリラックスできる方法を探りましょう。
患者会は家族自身が「気持ちの共感」を得られる場
家族ががんであることは、職場の人はもちろん、よほど親しい間柄でもなかなか口にしにくいものです。誰かに愚痴をいうことさえためらわれる話をどうしたらよいか、1つの答えが患者会です。患者会というと、患者本人の集いのように感じるかもしれませんが、大規模なところでは家族だけで話をする機会が設けられています。
たとえば「がんサポートコミュニティー(旧ジャパン・ウェルネス)」(東京都)や、「支えあう会『α』」(千葉県)は、がんの部位を問わない患者会で、定期的に家族が語り合える会を開催しています。また、「NPO法人愛媛がんサポートおれんじの会」は「家族必携―あなたの大切な人を支えるために」という小冊子を作製し、地域の医療機関で配付するなど患者家族の心身のケアに力を入れています。
ほかにも、がんの部位別の患者会はたくさんあります。どこの会がいいかは、主治医や病院のソーシャルワーカーに尋ねてみてもよいでしょう。
なお、患者家族のメンタルケアに孤独感は大敵ですが、誰とも話したくないときに無理をするのも禁物です。音楽や読書、山歩き、旅行など、あえてがんから離れたほうが、家族の気持ちが安らぐこともあります。そうして心をリフレッシュすることも、患者に優しく向き合う気力の源泉となります。
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タグ2012年9月
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