【医療情勢】がんの臨床試験

公開日:2015年7月31日

 臨床試験という言葉をよく目にしたり、聞いたりします。担当医から臨床試験への参加を勧められることもあるかもしれません。納得のいく治療法を選択できるよう、臨床試験についてよく理解しておくことが大切です。

臨床試験の目的

 臨床試験とは、新しい治療法(新薬、手術、放射線など)について、その効果と安全性を確認するために行われる試験です。新しい治療法では、効果をある程度予測できても、予想できなかった副作用などが現れることもあります。治療の効果や安全性をきちんと確かめるために、臨床試験をルールに従って計画的に行うことで、科学的な裏づけのある結果が得られます。

「試験」という言葉から、「実験」を連想して不安を感じる人もいるでしょう。新しい治療法は行ってみないとわからないことがあるため、行き過ぎのないよう、参加した患者を守るための規制や基準が設けられています。1964年、世界医師会で「ヘルシンキ宣言(ヒトを対象とする医学研究の倫理的原則)」が採択され、臨床試験では「被験者の利益が科学と社会への寄与よりも優先されるべき」との原則が打ち出されました。日本でもヘルシンキ宣言の倫理規範を踏まえ、国の「臨床研究に関する倫理指針」では、被験者に書面で同意を得ることなどを必須としています。

臨床試験と治験

 臨床試験は、治験と医師・研究者主導臨床試験に分けられます。治験は、厚生労働省から新薬の薬事承認を取るために行われる試験で、製薬企業が依頼して実施する治験と、医師が自ら実施する治験があります。一方、医師・研究者主導臨床試験は、すでに承認されている薬を使って、より効果の高い治療法を確立するために行われます。

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厚生労働省HPより

がんの臨床試験

 がんの臨床試験では、3段階(第Ⅰ相、第Ⅱ相、第Ⅲ相)で安全性と有効性を確認します。対象となる患者数は、第Ⅰ相では15~30人、第Ⅱ相では30~100人、第Ⅲ相では数百~千人と段階ごとに増えていきます。

第Ⅰ相:がん種を特定せず、段階的に投与量を増やして薬の安全性を確認し、有効で安全な投与量や投与方法等を調べます。
第Ⅱ相:がん種や病態を特定し、第Ⅰ相で有効、安全と判断した投与量や投与方法で薬の有効性と安全性を確認します。
第Ⅲ相:新薬や治療法を標準治療と比較し、有効性や安全性を検証します。

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 がんが再発し、担当医から臨床試験への参加を勧められることがあります。再発による不安を感じている時に、臨床試験への参加を勧められても、受け入れられないこともあります。また、臨床試験の治療法について、「効果や安全性にまだわからないことがある」などと説明を受けると、一層不安に感じるでしょう。

臨床試験は現在の治療法より優れていることを期待して行われるもので、治療の選択肢の1つと考えることもできます。担当医に次のような質問をして、臨床試験の内容をよく理解し、参加するかどうかを決めることが大切です。

【臨床試験への参加を検討する時に担当医に確認しておきたいこと】
・この臨床試験の目的と、私に勧める理由を教えてください
・この臨床試験に参加するメリット(利益)とデメリット(不利益)を教えてください
・この臨床試験に参加中に発生した副作用について補償はどうなっていますか
・これまでに同じ臨床試験は行われていますか。その結果はどうでしたか
・臨床試験中、辞退したくなった時はどうすればいいですか。途中で止めると不利益がありますか
・臨床試験に参加する際の費用を教えてください
・臨床試験への参加を検討する時間はどれくらいありますか

臨床試験は、医師、薬剤師、臨床研究コーディネーターらがチームで行います。臨床研究コーディネーターは、臨床試験を円滑に進めるための専門スタッフで、患者さんが参加を検討する段階から治療を終えるまで、相談相手となってくれる心強い存在です。参加するかどうか迷う時や、参加後に心配なことがある時は遠慮なく相談してください。相談は無料です。

臨床試験の情報

 臨床試験の情報は、国立がん研究センターがん対策情報センター「がんの臨床試験を探す」で入手することができます。自分が参加できるかどうか、まずは担当医に相談しましょう。

また、がん診療連携拠点病院の相談支援センターでは臨床試験に関する情報を提供し、相談を受け付けています。別の病院で治療を受けていても相談することは可能です。最寄りの相談支援センターにお問い合わせください。

※掲載している情報は、記事公開時点(2015年7月31日)のものです。