【QOL(生活の質) II 】がん治療における痛みの上手な伝え方

公開日:2014年8月29日

痛みを我慢しないことが大切

 がんになると、さまざまな原因から痛みを感じます。“我慢”を美徳としてきた日本人の特性からか、「これくらいは大丈夫」と自己判断で痛みを我慢してしまう患者さんが多いのではないでしょうか。がんに伴う痛みの多くは、適切な治療によって、取り除いたり軽減したりすることができる場合があります。

痛みを和らげることは、自分らしく生活をしていく上でとても重要なことです。自分の痛みの状態にあった治療を受けるためにも、医師や家族に痛みを的確に伝えられるようにしましょう。

がんに伴う痛みの種類と治療

 がんに伴う痛みとは、どういったものがあるのでしょうか?厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課が作成した「がん疼痛治療における医療用麻薬の使用と管理のガイダンス」によると、がんの痛みは下記の4種類に分類されています。

1.がん自体が直接の原因となる痛み(腫瘍の浸潤や増大、転移など)
2.がん治療に伴って生じる痛み(術後痛や術後の慢性疼痛、化学療法による神経障害に伴う疼痛など)
3.がんに関連した痛み(長期臥床に伴う腰痛、リンパ浮腫、褥創など)
4.がん患者に併発したがんに関連しない疾患による痛み(変形性脊椎症、偏頭痛など)

 がん自体の浸潤や増大による直接的な痛みの他にも、手術や放射線、化学療法などの治療に伴う痛み、入院中におこる腰痛や褥瘡も含めて、がんに伴う痛みといえます。ガイドラインでは、これらの痛みに対する標準的治療法は、WHOがん疼痛治療法(WHO方式)に則って実施されることを基本としています。WHO方式とは、鎮痛薬の使用についての「5つの基本原則」と「3段階除痛ラダー」から成り立っています。

5つの基本原則では、1.経口投与(口から飲める使いやすい薬の使用)2.時刻を決めた規則正しい使用(鎮痛薬の効果が途切れないようにするため)3.いきなり強い薬を使用せず、段階的に様子を見る 4.患者さんごとに合った容量を使用する 5.その上で細かい配慮をする と提唱されています。

3段階除痛ラダー(図1)」は、患者さんの痛みの強さを三段階に分け、各段階に応じて使用する鎮痛薬を定めたものです。第一段階では、軽度の痛みに対する治療として、非オピオイド鎮痛薬と鎮痛補助薬。第二段階では、非オピオイド鎮痛薬と鎮痛補助薬に加えて、軽度〜中等度のオピオイド系の鎮痛薬、第三段階ではさらに中等度〜高度の鎮痛薬を加えるといったように、痛みの強さにあわせて鎮痛剤の種類や強さを調整していきます。

3段階除痛ラダー
(図1:3段階除痛ラダー)
厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課「がん疼痛治療における医療用麻薬の使用と管理のガイダンス」より

患者さんは、適切な鎮痛薬を医師に処方してもらうためにも、今の痛みの状態を正しく伝えることが大切です。痛みを具体的に正しく伝えるポイントをみていきましょう。

痛みを具体的に正しく伝えるポイント

 痛みは、明確に「ここが痛い」というときもあれば、ぼんやりとしていることもあります。下記の5つのポイントを意識して伝えてみましょう。

1.いつから痛むか?
痛み始めた日にちや時間、重いものを持ったときからなど、具体的に痛みが始まったタイミングなどを伝えます。

2.どこの場所が痛むか?
お腹、背中など身体の部位、絵に描いて伝えても分かりやすいです。

3.どんな時、痛みが強くなるか? またどんな時、楽になるか?
継続して痛いのか、寝返りをうつと痛いけど、じっとしていると楽になるなど具体的に伝えます。

4.どのように?
うずく、しびれる、ズキズキ、ジンジンなど。

5.どれくらい?
痛みの程度を伝えます。スケールを使うと分かりやすく伝えられます。

また、痛みの影響や痛み止めを飲んだ場合は、効き目があったかどうか、副作用があったかなども伝えましょう。

評価スケールを使って痛みの程度を伝える

 痛みは、人によって感じ方や程度も違います。医療スタッフと痛みの強さについて話し合うとき、お互いが共有できる「ものさし」をもつことが大切です。医療機関によって、いくつかの「評価スケール」を必要に応じて使いわけていることが多いです。

◆視覚的評価スケール:VAS(Visual Analogue Scale)
10cmの直線を引き、左端が「痛みなし」、右端が「想像できる最高の痛み」として、患者さんに現在の痛みの程度を直線上に印をつけてもらうことで、痛みの強さを表します。

◆表情評価スケール、フェイススケール:FRS(Face Rating Scale) フェイススケールとは、現在の痛みを「にっこり笑った顔」から「普通の顔」、「痛みで泣いている顔」など、顔の表情でどのくらい痛むかを示してもらうスケールです。

フェイススケール

フェイス0:痛みが全くない。
フェイス1:少し痛みがある。
フェイス2:軽度の痛みがあり、少し辛い。
フェイス3:中等度の痛みがあり、辛い。
フェイス4:かなりの痛みがあり、とても辛い。
フェイス5:耐えられないほどの強い痛みがある。

◆数値評価スケール:NRS(Numeric Rating Scale)
痛みを0から10の11段階にわけて、痛みの程度を数字で選択する方法です。

施設によって、使用している「評価スケール」が異なりますので、自分の痛みを表現しづらいと感じたら、使いやすいもので意思疎通がはかれるように、医師や看護師に相談してください。大切なのは治療後に痛みがどう変わったか、痛みの治療が効いているのかどうかを医師に理解してもらうことです。正しい治療のためにも自分の痛みをなるべく正確に伝えましょう。

また、いつごろどんな痛みがあったか、痛み止めの薬の効果や副作用など、すべてを正確に覚えることは難しいものです。日記などを利用して痛みの記録をつけるとよいでしょう。

がんの痛みがやわらぐことで、気持ちが前向きになり、がんそのものの治療にも良い影響を与えることができます。痛みを感じたら我慢せず、医療スタッフや家族に伝えて、早めに痛みを取り除くようにしましょう。

 

※掲載している情報は、記事公開時点(2014年8月29日)のものです。